見出し画像

ハイボールを片手に、深い話を7時間もした話

私は人づき合いがあまり得意ではないので、「好きな人とのみ関係性を築く」ということを自然にやっている。

集団が嫌いだから、基本的に自分から近寄らない。キライな人にいい顔をすることもできない。苦手な人には近づかない。第一印象でダメだと思った人には絶対に話しかけない。

子供のころからそうやって生きているので、孤独に慣れていることもあり、ぼっちが気にならないのもある。しかし、こんなだから、人脈作りは本当に苦労する。

友だちと、恒例になっている飲み会をした。呑兵衛が集う街にある居酒屋で、おいしいゴマサバの刺身や焼き餃子を食べながら、7時間もしゃべりまくった。

友との出会いは10年前。一緒に長期間学んだ仲間の一人だ。研修中、お互いにフィードバックすることが多かったせいか、率直に言いたいことを言い合える。相手がどう思うかを気にせず話せる貴重な一人だ。

この日は、お互いの近況報告がメイン。今の状況を説明しながら、味わったいろんな気持ちをお互いに話した。

今年、私は家族のことでたくさん悩んだ。相手に対して正論をぶつけてしまい、失敗することも繰り返した。

その経緯を話したら、友はこう言った。

「あなたの言うことは、非常にまともで正当。でも、相手はそうではなかったんやろ? びっくりしたやろなぁ。自分がそれを当たり前だとわかっていないって、ようやく知ったんだから。きつかったと思うわ」

びっくりした。そんな風に相手(この場合は家族)の気持ちを慮ったことがない。言われてみれば、その通り。きっとショックだっただろう。そんな表情をしていたような気もする。

この友は、とても人を大切にする。驚くほど交友範囲が広く、いろんなジャンルの人と長く深くつきあっている。

数年前、友はお世話になった先輩に乞われて、その先輩の会社に転職をした。が、大きなことが起こり、というか、バレて会社は解散。その先輩が悪いのに、なぜか友が裏切り者扱いをされ、ひどい言葉を投げつけられた。

退職して、その先輩との縁も切ったと言っていたのに、なんと今年、自分から連絡をして、再会を果たしたらしい。

信じられない、と私は思った。あれだけ酷い裏切り行為を受けたのに、なぜ? 聞く私に、友は穏やかに言った。

「若い頃、受けた恩がある。嫌なこともあったけど、それ以上によい思い出もある。縁を断ち切って相手を恨むのではなく、自分のためにもケジメをつけ、新たな関係を築きたいと思った。距離感をまちがえなければいいとわかったから、自分から連絡をした」

すごいね、と私は何度もつぶやいた。この友は、こうやって自ら機会をつくり、大切に縁をつなぎ続けている。その人に会いたいと思ったら、臆せずに連絡をして、約束を取り付ける。何年も会っていなくても、顔が思い浮かんだら「久しぶり!」って連絡をするらしい。

会いたいと思う自分の気持ちを大切にし、その機会を自分にプレゼントする。それを繰り返してきただけ、と友は笑った。

私は楽をしている、と友に会うたび思う。私の人間関係の築き方は「苦手だから」を理由にラクをしていたり、ただ逃げているだけという側面が多々あるように思えるのだ。

人を大切にするって何だろう。これは、ずっと抱いてきた疑問だが、その答えを一つ見つけた。その人に会いたいと思う自分の気持ちに素直になり、行動すること。そして、会ってくれる相手に感謝の気持ちを伝えることだ。

友は毎回、私に会うたび必ず言う。

「こうやってつながってくれることが、本当にありがたい」

こちらこそだよ、いつも本当にありがとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?