NEWづくし
「新年を迎えるにあたって小旅行をした。新幹線に乗って新横浜で下車した後、在来線に乗り換え、横浜港を見渡す『ホテルニューグランド』に到着した。
乗車中はボサ・ノヴァを聴きながら去年の海外旅行を思い出していたのだが、ドイツではノイシュヴァンシュタイン城を見学し、パリでは現存する最古の橋であるポン・ヌフからセーヌ川の遊覧船に乗ったり、ヌーヴェル・ヴァーグの映画が撮影された場所に行ってみたりした。
バルセロナではアール・ヌーヴォー建築の1つ、サグラダ・ファミリアを訪れた。
ナポリ滞在中だっただろうか、ニュースをチェックしようと新聞を開いたらオリヴィア・ニュートン=ジョンの訃報が目に入ってきたのは。
去年はヨーロッパだったので今年は新大陸を旅しようか。
モントリオールのジル・ヴィルヌーヴ・サーキットで開かれるF1カナダ・グランプリを見た後、ノヴァ・スコシア州ハリファクスを観光する。
そこからアメリカはニュー・ジャージー州のニューアーク空港を経由してニュー・ヨーク市で観劇を。有名な造船所の見学ができるものならヴァージニア州ニューポート・ニューズにも足を延ばすところだが。」
この文章はフィクションですが、お気づきのように「new」がたくさん盛り込まれています。
①《新》年
②《新》幹線
③《新》横浜
この辺りは言うまでもありません。
④ホテル《ニュー》グランド
その他にも「ニューオータニ」など、ホテルは名前に「ニュー」が付くところが多いですね。
⑤ボサ・《ノヴァ》
「bossa novaボッサ・ノーヴァ」はブラジルの公用語であるポルトガル語で「新しい傾向」です。
⑥《ノイ》シュヴァンシュタイン城
ドイツ語では「Schloss Neuschwansteinシュロス・ノイシュヴァンシュタイン」で、「Neuschwanstein」を分析すると「neu新+Schwan白鳥+Stein石」となります。つまり「新・白鳥石」というわけです。この城より以前に「白鳥石」という名の城があり、それにちなんでの命名だそうです。
⑦ポン・《ヌフ》
フランス語で「Pont Neuf」=「新しい橋」の意味です。
⑧《ヌーヴェル》・ヴァーグ
「nouvelle vagueヌヴェル・ヴァーグ」はフランス語で「新しい波」ですが、同じ意味の英語「new wave」と言えば普通「new wave music」のことで、西暦1970年代後半から80年代前半に流行ったロックの1ジャンルです。
⑨アール・《ヌーヴォー》
「Art nouveauアール・ヌヴォー」は「新しい芸術」の意です。
⑩《ナ》ポリ
イタリア語で「Napoliナーポリ」、英語では「Naplesネイプルズ」であり、どちらもラテン語のNeāpolisが変化したものです。分解すると「neā」の部分が「新しい」、「polis」が「都市」を意味します。(元々は古代ギリシャ語で、世界史で「ポリス」というのを習ったことのある方もいらっしゃるでしょう)
⑪《ニュース》
これについてはのちほど。
⑫《新》聞
明治時代に造られた言葉だそうです。
⑬オリヴィア・《ニュー》トン=ジョン
人名でお目にかかることの多いNewtonは「new+town」の意味です。
⑭《新》大陸
ヨーロッパ人にとっての「新」ですね。
⑮ジル・ヴィル《ヌーヴ》・サーキット
自動車競技の伝説的選手であるGilles Villeneuveの名前を持つサーキット。このVilleneuveも「ville[town]+neuve[new]」であり、Newtonと同じです。
⑯《ノヴァ》・スコシア州
「Nova Scotia」は英語の発音としては「ノウヴァ・スコウシャ」ですが、ラテン語です。意味としては「New Scotland」となります。
⑰《ニュー》・ジャージー州
「New Jerseyニュ・ジャージー」からnewを取ったオリジナルの「ジャージー」はイギリス海峡にある島の名前です。
⑱《ニュー》アーク
「Newarkヌーアク」は元々イングランドの町の名前で、「新しいとりで」の意味だと考えられています。
⑲《ニュー》・ヨーク市
ただの「ヨーク」はイングランドの都市です。
⑳《ニュー》ポート・《ニューズ》
「Newport News」とはnewが多くてクドイ感じですが…
「ニューポートニューズという変わった地名の語源は、長らく謎であり、様々な説がある。1609年 - 1610年のジェームズタウンの飢饉の後にクリストファー・ニューポート船長の船で英国に戻ろうとした移民が、途中で補給船に出会って(すなわちよいニュースに出会って)植民地に戻ったという故事に因むという説がもっとも有名である」(ウィキペディア)
newで「新」よりも適切な訳がある用法
前置詞fromと組み合わせて「▲▲から出てきたばかりで」と訳すのが妥当な「new from ▲▲」という用法があります。
「a car new from the factory 工場から出てきたばかりの車.
He's new from the country. 彼はいなかから出て来たばかりだ.」
(研究社新英和中辞典)
また、「◆◆ be new to ●●」とすると「●●さんにとって◆◆は耳新しい/目新しい⇒初めてだ」ということになります。
「That information is new to me. その情報は初耳だ.
The work is new to me. その仕事は初めてだ.」(同)
反対に人間を主語にして、その人が◆◆という事柄について「よく知らない」「慣れていない」ことを言うのが「●● be new to/at/in ◆◆」です。
「I'm new to [in] this district. この土地は初めてだ.
I'm new to [at] this job. この仕事は初めてだ.」(同)
「新しいブランド」ではありません
「brand-newブランニュー」という形容詞をお聞きになることも多いと思います。「真新しい」とか「手に入れたばかりの」という意味ですが、ここでのbrandはカタカナ語としての「ブランド」、つまり「商標」とか「銘柄」ではありません。
brandは元々「燃え木」のことで、そこから、家畜や罪人に入れる「焼き印」⇒「商標」「銘柄」と意味が展開していきました。焼き印までは熱に関係する意味合いとなっています。
brand-newのbrandには「鍛冶場の炉から出したばかりの真っ赤な金属のように」というイメージが持たされているのです。
new関係の副詞
newには「新しく」「最近」の意味で副詞用法がありますが、他の語(過去分詞)と組み合わされて複合語として登場するのが主です。
「a newborn baby 新生児.
a newfound mine 新しく見つけた鉱山.」(同)
固有名詞にもなっていて、カナダには「Newfoundland」という島があります。
一方、副詞らしい形をしたnewlyは、過去分詞や形容詞を修飾する独立した単語です。
「1近ごろ,最近.
a newly discovered vitamin 最近発見されたビタミン.
2新たに,再び.
a newly painted door (新しく)塗り替えたドア.
3新しいやり方で.
newly arranged books (新しく)並べかえた本.」(同)
もう1個、anewという副詞は「新たに」「改めて」を意味する書き言葉です。
「start [begin] life anew 新たに人生をやり直す.」
(研究社ルミナス英和辞典)
この「a+new」の「a」はofの変化したものなのですが、同じ構成の表現がフランス語にもあります。ofに当たる単語deと、先程⑨で登場したnouveauを並べたもので、「再び」の意です。
「《On se verrra》 【de nouveau】 <lundi prochain>.
<来週の月曜日に>【また】《会おう》。」
(小学館プログレッシブ仏和辞典)
⑧「nouvelle vague」のnouvelleはこのnouveauの女性形です。vagueが女性名詞なので形容詞もそれに合わせます。
同じくnewに当たるフランス語が⑦Pont Neufのneufであり、その女性形が⑬Villeneuveに入っているneuveです。
newsの語源
newが名詞として用いられた、その複数形が⑪newsの語源です。フランス語のnouvellesに準じて作られました。
時々、newsの語源は「North, East, West, South」の頭文字だと言う人がいますが、それは俗説です。
お読みいただき、ありがとうございました。ではまた。
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