和歌・孤独な春の日
「うらうらに照れる春日(はるひ)に雲雀(ひばり)あがり
心悲しもひとりし思へば」
万葉集巻19・4292 大伴家持
(うららかに照る春の日に雲雀が空を舞い上がっていく。まことに心悲しい、ひとり物思いに沈んでいると)
春の陽気に誘われて、
花は咲き誇り鳥は歌い出す。
心躍る楽しい季節のはすが、
わたしの心は浮かない…。
気持ちよさそうに春の空を飛ぶ雲雀は、
わたしの憂鬱など知るはずもない。
わたしはいつだって孤独だ。
こんなにものどかな景色を目の前に、
ひとり物思いに沈んでいるよ。
こんなにもうららかな春の日を、
ひとり悲しみに暮れて過ごしているよ。
この歌のように、
わたしの心は塞ぎ込んでいます。
せっかくの春なのに…。
大和言葉で、
春に憂鬱な気持ちになることを「春愁(しゅんしゅう)」といいます。
こんな言葉があるくらい
昔の人もそうだったんだなと思うと、
少しだけ安心します。