負けて得取った戦、勝ったけどむしろ損な戦
今日は珍しくタイトルが先にありました。
(駄文だけどこれでもタイトル決めは毎回迷う)
日曜恒例、いよいよ最終回間近な今日の大河ドラマを観ての感想です。
先日投稿した重野安繹が戦後交渉した薩英戦争は、一応「薩摩藩が敗者」となりましたが、したたかな交渉の結果、賠償金の支払いは幕府にうまくなすりつけるわ、ドンパチやった英国からは戦艦購入する話が進むわで、失いつつも先々の得を取った形でした。
が、1904年の日露戦争の場合は「初めて有色人種の国が白人に勝利した」事で欧米の白人国家による植民地支配が当然だった時代に風穴を開けた、のは良かったのかもしれません。
ですが、結果としては日本の国庫を使い果たしての勝利、しかもロシア側の賠償金はないよ、という「戦いには勝ったが経済的にはむしろマイナス」の状況を作り出してしまいました。
この時、とある奄美の出身者である首長はこの影響をモロに喰らって大変な目に遭っていました。
西郷菊次郎京都市長です。
日露戦争開戦の少し前、初代京都市長だった内貴甚三郎は、台湾の宜蘭県庁長として当地の治安を安定させ殖産を発展させた菊次郎の手腕と、薩摩出身者がまだまだ多い政府中枢とのネットワークを買い、菊次郎を「どうにか京都市の整備事業を実現させて欲しい」と、次の第2代京都市長に請いました。
(※この頃の市長はまだまだ普通選挙ではなく官選)
菊次郎は日清戦争の直後、戦後日本に反感を持った人々がまだまだ多く絶賛治安悪化中の台湾総督府で働き始めました。
その後、児玉源太郎と後藤新平による宥和政策により抵抗勢力が減るまでだいぶ時間がかかっていました。
そして日本に戻ってきてのんびり…と思ってたら今度は「鳥羽・伏見の戦いで都を焼き、挙句の果てに都を東京へ移転させた」とまだまだ薩長を快く思ってない人も多かったであろう京都を近代化させて欲しいと。
ただでさえ京都のイケズ文化は一見さんには厳しいというのに、その中でも弁の立つ議員ばっかりな市議会をうまくまとめて、水道・電気・道路拡張などうまくやってくれと。
よりによって西郷の息子である菊次郎に頼む内貴氏も凄いよなと思うのですが、これを受ける菊次郎も菊次郎です。
そりゃ後々、喀血するくらい体壊すわ。
なんとか予算案を立て議会承認を受け、実現のために東京は大蔵省へ向かった菊次郎。
が、日露戦争で軍費を使い過ぎ、国庫が危ういくらいまでになった大蔵省はよても大規模な都市整備に予算を回せるような余裕はありません。
そこで菊次郎は「外債」を集めることにしました。
外債というのは、海外の資本家から投資してもらい、お金を集める手法です。
今年度の大河でも後半よく出てきましたが、三井の銀行がパリ支店を出していたのでそこを経由して出資者を募ることが出来ました。
日露戦争において「白人に喧嘩を売った」という政治的な反感と「この都市整備は電車設備や発電も行うから儲けの見込みがありそう」という欧米の投資家の判断は別物、というのがここからも伺えます。
結果、市電の電車賃をうまく活用して早々と外債の償還を行った京都市は、菊次郎の三大事業以降、現在に至るまで古来の観光名所だけでなく軽工業の栄える都市として繁栄することとなります(任天堂も京都だったりします)