後ろにいけばいくほど面白くなる病
表題の「後ろにいけばいくほど面白い!」は『解体屋ゲン』に私がさっき付けたキャッチコピーで、同時に課された十字架でもあります。長期連載の作品はややもするとワンパターンに、あるいは徐々にパワーダウンしたり、引き伸ばしに入ったりするものですが、絶対にそうはならないぞ、むしろ尻上がりに面白くしてみせる、という決意表明でもあります。
本日5/1に『解体屋ゲン』80巻が電子書籍で発売となりました。
「異世界のゲン」はnoteでも公開中ですね。
Twitterでも79巻から「ヒグマとカバ」を公開中
しかし本誌での連載はすでに900話を突破し1000話に向けて爆進中です。これまでの総決算として、ここからはより大きなテーマに向かって突き進んでゆくことになると思います。
でもこういう志向は要注意です。風呂敷を広げ過ぎて収集がつかなくなったり、思想的に極端に走り過ぎて、危ないところに踏み込んで終わった作品も数多くあります。
常に今より面白くという十字架も危険です。それは回数を重ねるほど重いプレッシャーとなってのしかかります。当然、足取りは遅くなりますが〆切は待ってくれる筈もなく、なのにこちらは歳取って徐々に無理が利かなくなってきます。このままではいつか潰れてしまうかも知れない…。
でも
ジャンルレス、ボーダーレスで常に新しいことに挑戦し続けていると、そこから見えてくるものがあります。最近は自分たちがどこへ向かうべきか、何を書くべきかが時間が経つにつれ鮮明に見えてきました。
デビューして20数年、一度として楽に上がった原稿なんてありません。休みがあるのかないのかもはっきりせず、毎回〆切ギリギリのアップで言ってみれば毎日が苦行です。でも世の中のみんなだって苦しんでいます。理不尽な目に遭い、金にはならず、コロナで仕事が途絶え…。
いったい、給料はいつから上がらなくなり、企業はいつから労働者から搾取をするようになり、入管はいつから横暴になり、政府はいつからみんなの声を聞かなくなり、日本はいつから経済成長が止まったんでしょうか。それは『解体屋ゲン』の中に見ることができます。
『解体屋ゲン』はバブル崩壊後から始まっています。そのバブルの遺構を爆破解体し、リーマンショックを納豆メザシ定食で耐え忍び、民主党政権下で公共事業を減らされ仕事が無くなり、中古のエアコンは壊れ、事務所はプレハブ、横柄な元請けに搾取され、ピラミッドの底辺で苦しんできました。
でも苦しいことばかりではありません。貧乏な中でも徐々に仲間を増やし、外国人の同僚が増え、自分たちの技術を磨き、最新のテクノロジーを導入してゆきます。世界を股にかけて爆破解体をし、現実とリンクし、ジャンルを超え、異世界に進出し…常に読者のみんなと一緒に歩んできました。
圧倒的に理不尽な目に遭っていると自分が感じた時、人は何ができるでしょうか。黙って耐え忍ぶのか、泣き寝入りするのか、それとも…。世界はもの凄い速度で変わってゆきます。昨日の常識は今日は通用しないけど、裏を返せば新しい何かを作り出せる可能性があるということです。
ここから先、ゲンたちはどうするのか?なにをしたらみんなを助けられるのか?それこそが『解体屋ゲン』が進むべき道です。私ももう一度、よく考えなければなりません。風呂敷を広げすぎていないか、極端に走り過ぎていないか…。
『解体屋ゲン』は常にみんなの声に耳を傾けたいと思っています。SNSから、取材先から、周囲の仲間から、みんながフィードバックしてくれます。それがある限り大丈夫、道を踏み誤ることはないと思います。
ここから先は宣伝です。1〜25巻まで無料のセールは5/19まで!
新型コロナ禍に負けずに、強く生きましょう。
ここでいただいたサポートは、海外向けの漫画を作る制作費に充てさせていただきます。早くみなさんにご報告できるようにがんばります!