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自分の管理もままならないのに、管理職。1

会社を辞めたいと思った回数は、もう数えていない。

本気で辞めようとした回数は覚えている。2回だ。

一度目は入社4年目。支店長が変わり、毎日毎日数字を詰められ、長時間会議に閉じ込められ、精神がまいっていた。
自分ひとりの休日出勤で、タウンワークなどの転職雑誌を片っ端から机に広げて「もう、辞めよう」と決意した。
何社か転職試験を受けに行ったものの、なかなか良い成果が出ないうちに熱が冷め、自然消滅。そのまま働き続けた。

二度目は入社5年目。結婚直後のことだ。
長時間会議の支店長がようやく転勤し、結婚式には新しい支店長が出席してくれた。
後日、結婚お祝いにね、と2人で会社近くの焼肉屋へ連れて行ってもらった。
気持ちよく飲んで食べていたのだが、不意に支店長から言われた言葉で思考は停止。
「結婚したら営業職は無理だよね」
私の脳裏には、新入社員時代にお世話になった先輩の姿が浮かんだ。ものすごく綺麗で仕事ができて面倒見が良い憧れの先輩だった。入社半年ほど経った頃、先輩が結婚すると聞いて喜んだのも束の間、当時の支店長(長時間会議の人ではない)が放ったのは「で、いつ辞めるの?」だった。
当時はお茶汲みだの、男性社員の灰皿掃除だのが当然のように残っていた最後の時代。結婚した女性は当然辞めるよね、の思考が根付いていた。先輩は働く意思があったのに、その一言で退職を決めてしまった。
結婚しようが子供ができようが、今まで通り働く気満々だった私は「結婚したら、結局そういうことを言われるのか」と酷く落胆したのだった。
よし。もう転職しよう。こんな会社はやっていられない。
そう決めて、外回りをサボって転職活動に勤しんだ。しかし、結婚したての女性に対して世間の風向きは予想の20倍はきつかった。やんわりと断られることが続き、そうこうしているうちに私は別の支店へ転勤が決定。有耶無耶になったまま、結局働き続けた。

あんなにも辞めようとしていたし、今だって何度も何度も思う。
会社辞めたい。
一ヶ月に3回くらいは確実にそう考える。もういいやん。十分頑張ったやん。退職金、そんなに高くないだろうけど、一旦それもらって。失業手当で少しゆっくり休んで。今より給料下がるだろうけど、別のもう少し時間にゆとりのある働き方を考えて。自分のやりたいことが優先できる毎日を過ごそう。そうしよう。今度こそそうしよう。

そんなことを日々考えているのに。
私は管理職をやっている。

一体どうしてこうなった。
仕事は定時できっかりあがって、家族に温かい食事を作って。家事が終わったら読書したり、文章を書いたり、手帳を書いたり、子供たちと今日の出来事を話したり、夫とお茶など飲みながらまったりしたり。休みの日は買い物に行ったり、映画を観たり、たまに家族みんなで外食したり。
そんな日々が理想なのに。
現実の自分は休日の曜日ばらばら、働く時間もばらばら。慣れない管理職業務で残業も積み重なっている。この前は息子から「あまりに帰りが遅いけど、だいじょうぶ?」と本気で心配するLINEが届いて会社で泣きそうになった。

自分の生活がままならない。
自分のことすら管理できていないのに、今日も私は管理職をやっている。
内心辞めたい辞めたいと念仏のように繰り返しながら、部下の評価査定なんかやっている。

一体私はどこに向かって行こうとしているんだろう。
自分の中の矛盾がわからない。
わからないから、もういっそ文章にすることにした。

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