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【仕事編・楽器屋さん バラバラなまま共に働ける】 0ポイントと出会う旅

近くに台風だろうか。
朝起きられない&頭がパラパラする。
まとまらないことはなはだしい。
だけどケーキがおいしい。
コーヒーもおいしい。


楽器屋さんでバイト。
わたしは楽器ができるのか。
できない。
でも音楽が、インディーズの音楽が好きだった。
当時はちょうどニルバーナが流行してきた頃だ。
わたしが好きだったのはイギリスのレコードレーベル「4AD」。
The Breedersが特に好きだった。
なにか、わたしの中に埋まっている「枠」が外されていく。
こんな風にもあんな風にも、思いもよらない方角に飛んでいける可能性をひらいてくれるようだった。
最近、ふと流れてきた音楽が「わ」という感じですごく好きで、今調べてわかったけど4ADレーベルからアルバムが出ていた。

そう、つながっていく感じ。
知らずに惹かれてそれがつながっている時のうれしい感じ。
自分の感覚は孤立しているものじゃなくて、会えなくてもどこかで共通する感覚の人が存在していること、このことに勇気づけられていた。

「音楽」というくくりじゃ大きすぎて雑だけど、少しでも、自分の感覚が届くところに行こうと思った。

「感覚」は、見えない。
個体の内側に発生するものだから。
わざわざ芸術作品になっていなくても、誰しもがその内側でその個体ならではな感じられ方をしている。
そういうものの近くにわたしは居たかった。
「感覚」みたいなものをないがしろにしないですむような環境に居たかった。

楽器屋といっても、全国展開をしているグループ企業の職場である。
守るべきルールや規律やマナーがある。
だが、そこに集まる人たちが「音楽」が好きなことが、「集団の輪っか」の形成に影響している。
「唯一絶対な集団の輪っか」に、まとまりにくいのだ。
音楽の趣味一つをとってもひとりひとりが違っている。
ある人はハードロックを、
ある人はビジュアル系を、
ある人はわたしと同じくインディーズを、
店長はメタルが好きだった。

バラバラって、いいよね。
ギュッとならなくて済む。
「好きなもの」は好きで仕方ない。
「好きじゃないもの」は好きじゃなくて仕方ない。
それで構わない。
スカスカしていて気持ちがいい。

好きな音楽が違っても、わたしたちアルバイトスタッフは仲が良かった。
勤務中にレジカウンターでよく話しているから店長にたびたび注意された。
でも笑って応答できていた。
遠目からそんなわたしたちを冷ややかに見つつ、ご飯に誘ってくれたりする先輩社員もいた。
よく飲みに出かけたりご飯を食べにいったりした。
「違うけどそれで構わない」みたいなことが叶っていた。

社員割引でエレキギターを買った。
他のバイトたちと即席のバンドを組んで、練習して、お披露目会をした。
ニルバーナの曲だった。
好きなジャンルじゃなくても、一緒にやるにはなにがいいか考えてみんなで決めた。
ペコペコな音しか鳴らなかったわたしのギター。
ビジュアル系を好きな彼女はベース。
わたしと同じくインディーズが好きな彼はドラム。
ボーカルは、誰だったっけ。
もしかして、ヘビメタ好きの店長だったかな。
自分の手元のギターと、スタジオの絨毯とベースとドラムしか覚えていない。

なにか、やる、って、いいよね。
なんか、いい、よね。
やるって、いいよね。
ペコペコな音しか鳴らないギターでも、みんなが「せいの、」で演奏し始めた感覚とか
出だしが失敗してもう一回「せいの、」ってやり直した瞬間とか
お披露目会まで各自が練習したこととか、ドラムの彼はスティックをバイト中も持ち歩いてリズムを刻む練習をしていた。

そういうひとりひとりが、やっぱ、うれしいよね。


そういえば、地方の楽器屋のこのお店に、イッセー尾形さんが来店されたことがあった。
その町で一人芝居の公演をしていたのだ。
公演の合間に楽器を見にきてくれた。
その時はブルースハープだったかな、小さな楽器を買っていった。
すごくナイーブな方で、話しかけたけど、ええ、はい、え、はい、みたいな、言葉数の少ない方でした。
それでイッセー尾形さんの人柄がどどどどど〜っと流れ込んできて、わたしは胸がいっぱいになって、ああ、この人はこの人のまま、この人の人生をやっているんだなあ、って、感動した。
とってもステキな方でした。


※ここまでに出てきた言葉はまとめています。
ひとりよがりな主観の言葉です。

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