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【仕事編・レンタルビデオ屋② わたしが熱かった】 0ポイントと出会う旅

急に気温が下がるって、困る。
でも急に気圧が変わる、っていうのよりずっとマシだ。
気圧より自分で調整できる範囲が広いから。
服を着たり脱いだり、戸外に出たり入ったり、できるから。


前回はレンタルビデオ屋さんで働き始めたことを書いた。
メジャーじゃないレンタルビデオ屋だった。
VHSからDVDに移行していく時期だった。
メジャー以外の、コアな作品も仕入れて特色のある店が、まだポロポロ存在している時代だった。
それは豊かなことだった。

けれども、タイタニックとか、製作費のかかっている話題の作品はやっぱり需要が多くて、店が生き残るには、そういうメジャーな作品をレンタル開始時に、一度に、仕入れられるかにかかっていた。

わたしは、できる範囲で、メジャーじゃないけどファンのいる作品も仕入れたかった。
ずっとそうかもしれない。
メジャーの影で存在が薄いものに、わたしは肩入れするところがある。
オタクのように詳しくも熱心でもないし、メジャーも好きだしミーハーだし、なんだけど。
いいなと自分が感じるものの存在が知られていないことは、なんだか嫌だった。

時系列はもう忘れてしまったけど、ある時、レンタルビデオ屋の雇われ店長になった時があった。時給がアルバイトより契約社員で高かったからだ。
アルバイトを指導したりするよう指示があったけどそれはわたしは苦手だった。やるよ。やるけど、一人一人の個人の事情がわたしの役割を超えてくるから、役割でしかないわたしの言い分など、どうしてゴリ押しできるだろうか。
それでも役割をやろうとしたし、それで嫌われて憎まれるから、店長って立場は嫌なもんだった。

ただ、担当店舗の仕入れに関われるのはうれしかった。
全店舗で仕入れ数を検討する会議は嬉々としていた。
シラっとしている他店舗の店長の顔色なんか、知らない。
これ知ってます? いいですよきっと!
仕入れ前だから作品を見ているわけじゃないものもある。
だけど、監督とか出演者とか過去作品とかで想像できたし、そうでない新しい作品はスチール写真で見当がついた。これは本当だけど、おもしろい作品はスチール写真もいい。

わたし程度ではあるけれど、その程度にはいろんな映画作品を見ていない人だって店長であったりするわけだけど、それは構わない。ただ、わたしの意見にも耳を貸してほしい。
耳を貸してくれないなら、わたしの店舗で仕入れることは、了承してほしい。
そんなふうに果敢に提案していたけれど、とにかく、毎回、浮きまくっていた。わたしという存在が。

思い出しているだけで胸が熱くなる。
わたしはあの時、熱くなれるものがあったのだな。
そういうわたしが居たんだな。


※ここまでに出てきた言葉はまとめています。
ひとりよがりな主観の言葉です。

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