鑑賞実践講座②|ファシリテーション基礎2
鑑賞実践講座 第2回|ファシリテーション基礎2
日時|2024年7月28日(日)10:00〜17:00
会場|川崎市役所本庁舎301、302、303会議室
講師|三ツ木紀英(NPO法人芸術資源開発機構(ARDA))、ARDAコーチ2名
内容|
・作品研究
・ファシリテーションのコーチング(実践練習と振り返りの方法)
先週に引き続き、鑑賞実践講座の2回目です。
前回の盛りだくさんの内容が身体に残っているうちに、次のステップへ進んでいきます。
今日は作品研究から始めます。
作品研究とは、ファシリテーションする作品を、まずはファシリテータ自身がじっくりしっかり隅々までよく見て、その作品がどんな作品なのかを理解しておく準備です。
鑑賞者から出てくる言葉、その言葉の裏に込められている感情やニュアンスをよく聞きとり、安心して語り合える場を作るのには、事前の準備がとても大切です。
前回、三ツ木さんのファシリテーションで鑑賞した岡本太郎《森の掟》(川崎市岡本太郎美術館所蔵)を題材とし、
①自分自身に「この作品の中で何が起きている?」「それはどこからそう思った?」「他に発見は?」の問いを投げかけ、思いつくことを付箋にどんどん書き出していく
②付箋の意見を、主観的解釈と客観的事実に整理する
③付箋を整理しながら小見出しをつけたり、意見の関係性を書き出したりする
という手順で進めていきます。
作品研究の流れは大まかに上記のとおりですが、主観と客観の整理が難しいポイント。三ツ木さん、そしてこの日から講座に加わってくださった桑原さんにアドバイスをもらいながら、作品とそれに対する意見を分析していきます。
この主観と客観の整理は、鑑賞者それぞれの解釈に対し、作品の中から根拠を求める問いである「どこからそう思ったの?」を効果的に挟み、鑑賞の時間と内容を深めていくことにつながります。なんとなく感覚的に発した意見をよくよく考えてみると、作品の本質的なところにつながっていくことは度々起こります。そうして、様々な視点を織り混ぜながら作品を多角的に捉えていけることがVTSの面白さでもあり、お互いをよく知り理解し合おうとする関係づくりにも役立つのだと思います。
作品研究したシートをお互いに見せ合い、自分とは異なる視点で整理された意見に気づいたり、自分では出てこなかった観点を見つけたり、作品の捉え方がひとつではないことをここでも実感していきます。
人によって見方が異なるのはもちろんですが、少し時間を空けてもう一度作品研究に取り組むと、自分自身の中でも違った見方が出てきます。そうやって、自分の作品研究を育てていくことで、ことラー1人ひとりの「モノをみる目」が鍛えられていきます。
鑑賞は自転車に例えられることがあるのですが、一度自転車の乗り方を習得すると、乗らない期間があったとしても、自転車の乗り方を忘れることはなく、遠くまで漕いで行くことができます。鑑賞も、一度楽しみ方を体得すれば、どんな作品でもよくみることができるようになっていきます。
ことラーの活動は、川崎市内のあらゆるところに潜んでいる可能性を見出していくことでもあると思っているので、鑑賞講座で学んだことを他でも活かしていけるといいなと思います。
午後は、グループに分かれてファシリテーション実践です。
最初はARDAコーチのファシリテーションで2作品を鑑賞します。ファシリテータってこんな感じだった、と思い出してきたところで、ことラーの順番です。
作品研究したことを頭の片隅におきつつ、まっさらな気持ちで前に立ちます。前回のファシリテーション体験とは違い、今回は本格的な挑戦です。1人ひとりの発言を丁寧にききながら、作品の箇所を指し示したり、意見を繋いだり、整理したり...と、ここまで学んできたことを実際にやってみることで理解を深めていきます。
ことラー1人ひとりの個性がファシリテーションにも現れます。対話型鑑賞は鑑賞者同士がお互いのことを知り合う時間にもなるのですが、ファシリテータの人柄も垣間見えるひとときなのが、アートコミュニケーションらしいところだなと感じています。
鑑賞の時間の後は、ファシリテーションの中で良かったところや、モヤモヤしたところを全員で振り返ります。その場でどんなことが起きていて、そこからどう感じていたのか、ファシリテータ、観察者、鑑賞者それぞれの立場から振り返り話し合います。お互いに知っている間柄だからこそ少し厳しいことも指摘し合え、皆で学びを積み上げていく時間になります。
鑑賞実践講座ではVTSのファシリテーションを体得するプロセスを通じて、さまざまな価値観を持った人々がアートを介して対話するときに役立つ技術を学ぼうとしています。ファシリテータとして前に立つことは、びっくりするくらいに緊張もするし、焦ったり、わからなくなったりもするのですが、実際にファシリテーションをやってみることで三ツ木さんのレクチャーの理解が深まることを期待しています。いいファシリテータはいいアートコミュニケーションを生み出す!はず...。VTSの考え方や技術をことラーの活動にうまく使っていってほしいと思います。
鑑賞実践講座は、最初の2日間が大きな山でした。がんばって乗り越えて、目の前に広がる景色が少し見えてきたことラーもいそうです。
(こと!こと?かわさきプロジェクトマネージャー 近藤乃梨子)