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「未読の空白に揺れる心、夕焼けに染まる答え」

「届かない返信、消えない想い」

夜の空は、星ひとつ見えないまま曇っていた。陽菜(ひな)はベッドに横たわりながら、薄暗い部屋でスマホの画面をじっと見つめている。そこには、未読のままのメッセージが一つ。「お疲れさま!今日は楽しかったね」と送ったきり、何時間も返事がない。

翔太(しょうた)は、放課後一緒に過ごしたクラスメート。サッカー部で忙しい彼のことはわかっているつもりだ。それでも、返信が来ない時間が長引くほど、心の奥がじわじわと焦りに覆われていく。

「きっと何か忙しいんだよ。」
そう自分に言い聞かせるたびに、スマホを置こうとする手が止まる。通知音が鳴るたびに、翔太の名前であることを期待してしまう自分が情けなかった。


翌日、教室ではいつもと変わらない笑顔で翔太が手を振ってきた。
「おはよう!」
その明るい声に少し救われながらも、陽菜の中では言葉にできないモヤモヤが残っていた。

「昨日、返事なかったね。」
思わず口にしたその一言は、陽菜にとって勇気のいるものだった。でも、翔太は気まずそうに頭をかきながら答えた。
「ごめん、昨日疲れて寝ちゃってさ。」

その言葉を聞いて、陽菜の胸の中で張り詰めていたものが少しだけ緩んだ。翔太が続けて言う。
「陽菜って、ほんとに優しいよな。俺、いつも甘えすぎてる気がする。」

その言葉に、陽菜の心はじんわりと温かくなった。翔太の素直な言葉に触れ、LINEの既読や未読がすべてではないと気づかされた気がした。


放課後、校庭の脇を歩く二人。夕焼けが校舎をオレンジ色に染め、優しい風が吹いていた。翔太がふと立ち止まり、陽菜に向かって言う。
「LINEだけじゃなくて、こうやって直接話せるのが一番だよな。」

その言葉に、陽菜は小さく頷いた。スマホの画面だけを見つめていたときには気づけなかった大切なこと。それは、翔太の声や仕草、ふとした笑顔に宿る想いだった。

夕暮れの中、二人の影が並んで伸びていく。その影の先に広がる明日が、きっと少しだけ明るく見えた気がした。陽菜はそっと微笑んだ。

スマホの通知が鳴るのを待つよりも、こうして彼の隣にいられることが、何よりも幸せなのだと。

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