「遠く離れても、同じ空の下で」
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夏の終わり、駅のホームに立つ陽菜（ひな）は、少し重たい空気を感じていた。夕焼けが空を朱色に染め、電車が到着する音が響く。
翔太（しょうた）が新しい学校に通うために引っ越してから、二人が顔を合わせたのは今日が久しぶりだった。部活の大会を観に行った帰り道、偶然同じ電車に乗り合わせて少し話した。それだけのことなのに、陽菜の胸には不思議な高揚感と切なさが混じっていた。
「またいつか会えるよね。」
彼の言葉が耳に残っている。けれど、陽菜の心の中では「いつか」が永遠に続いてしまうような不安が渦巻いていた。
家に戻った陽菜は、スマホの画面を見つめていた。翔太から送られてきたメッセージはシンプルなものだった。
「今日はありがとう。楽しかったよ。」
返信を打とうとして、指が止まる。何を言えばいいのかわからなかった。伝えたい気持ちはたくさんあるのに、どれも言葉にならない。
「私たちの距離は、これからどうなっていくんだろう。」
その問いが陽菜の心を締め付けた。
次の朝、陽菜は部屋のカーテンを開け、澄み切った青空を見上げた。遠くの街にいる翔太も、この空の下で同じ朝を迎えているのだろうか。そう思うと、少しだけ心が軽くなる気がした。
「自分から何かを始めなきゃ、この関係は続かないかもしれない。」
そんな考えがふと頭をよぎった。
週末、陽菜は翔太にLINEを送ることを決めた。
「今度の休みに、どこかで会えないかな？」
送信ボタンを押した瞬間、胸が高鳴った。彼からの返信はすぐには来なかったけれど、待っている間に感じた不安は少しずつ期待に変わっていった。
「いいよ！久しぶりに会おう。」
彼の返信が画面に表示されたとき、陽菜は思わず笑顔になった。その笑顔には、自分でも気づかなかった小さな自信が宿っていた。
会える時間は限られているけれど、それでもいい。今この瞬間、二人の心が繋がっているなら、距離なんてきっと越えられる。
陽菜は胸の中にある翔太への想いを、そっと抱きしめるように感じた。夕暮れの中、二人がまた会える日を思い描きながら、彼女は歩き出した。
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