
バレンタイン直前!弁護士が教えるプレゼントの約束〜法律のキホン解説室Vol.1〜
来たる2/14は、バレンタインデー!日本ではチョコをプレゼントする日になっていますね。
プレゼントの約束は、愛情だったり友情だったり…そういったあったかい気持ちで行われるものですが、残念ながら、意外とトラブルの元になりがちです。
おばあちゃん 「私が死んだら、この指輪をあなたに形見にあげるからね」
16歳の私「ありがとう!絶対大切にするね」
~10年後~
26歳の私 「あの時おばあちゃんが約束してくれた指輪、私に渡してよ!」
ママ 「そんな約束知らないわ。契約書も何もないでしょ。それに今私が使ってるし。」
プレゼントの約束って、意外とこういうトラブルになりがちですよね。特に親族間でのトラブルだと、相続と絡んで大きな問題に発展することも...。
ということで今回は、そんなプレゼントにまつわるトラブルに焦点をあててみました。
バレンタインのチョコから高価な贈り物まで、プレゼントの約束について、法律の観点から考えていきましょう🍫
プレゼントと法律の関係ー贈与契約の基本ー
プレゼントとは、あえて説明すると、虎さんが翼さんにタダで物をあげる行為のことですよね。
法律の世界では、このようにタダで物をあげる約束のことを贈与契約と言います。
虎さん「チョコを君にあげるよ!」翼さん「やったー!もらうよ!」
このように両者の意思が揃うと、贈与契約が締結=プレゼントが約束されたこととなり、虎さんにはチョコをあげる義務が発生します。
なお、贈与契約の締結は、口約束でも可能です👄
「甲は乙にチョコを引き渡す」なんて書面を作らずとも、「チョコあげるー!」「もらうー!」で契約は成立します。
この点も良く覚えておきましょう。
トラブル①:ほんとはあげるつもりじゃなかったの…ー書面vs口約束ー
事例
虎さん「この間月野源のライブチケット当たったんだよねー!」
翼さん「ほんとに⁉いいな~ほしい!」
虎さん「しょうがないな~♡大好きな翼さんにはあげちゃう~♡(内心:レアチケットなんだけど…とりあえずあげるって言っとこ…)」
翼さん「やったー!もらう~!!(本気)」
解説室
その場の話の流れで、「あげる」って言ってしまうこと、ありますよね。プレゼントトラブルのよくあるパターンです。このような場合、虎さんは、翼さんからのライブチケットの引渡請求を断れるでしょうか?
さきほど見た通り、口約束でもプレゼントの約束は成立します。約束が成立してしまった以上、虎さんには翼さんにチケットをあげる義務が発生します。
しかし、実は、口約束でのプレゼントの約束は、解除をする=なかったことにすることができるのです!
翼さん「約束通り、月野源のチケットちょうだい!」
虎さん「…申し訳ないんだけど、口約束だったから、あれはなかったことにさせてもらう!」
一方で、書面で約束してしまった場合、解除は基本的にはできません。虎さんの意思がしっかり現れた状態で契約をした以上、それは守らなければならない、ということですね📝
ですので、あげてもいいという確信がない時は、プレゼントの約束を書面ですることは絶対に避けましょう。
LINEやメールも書面と扱われる可能性が高いので、とにかく、見える形でプレゼントの意思を残さないことが重要です。
また逆に、どうしても欲しい時は、口ではなく書面で、相手から約束を取り付けておくといいですね。
(ただし、口約束でしたプレゼントの約束でも、既に物を渡した後に「やっぱり解除!物返せ!」とは言えないので注意してください)
トラブル②:お返しの約束を破られた!ー契約解除の可能性ー
事例
虎さん「2/14にチョコをプレゼントしてあげる。だからね、3/14はケーキのお返しがほしいな♡」
翼さん「うん!わかった!ありがとう♡」
~数日経って~
翼さん「ごめん、ちょっと金欠だからお返し無理かも。。」
虎さん「えー!翼さんがケーキ買ってくれるって言ったから、チョコあげるって言ったのに!」
解説室
ちょっぴりお返しに期待しつつプレゼントの約束をすることって、ありますよね。でも、お返しの約束を破られた!こんなとき、虎さんはお返し無しでもチョコをあげないといけないのでしょうか。
実は、このようにお返しを条件としたプレゼントの約束(負担付贈与と言います)は、もらう側がお返しをくれないときは、あげる側は契約を解除=なかったことにできるのです!
お返しをすることを条件にあげる、という契約をしたわけですから、お返しが無いならあげない、となるのは頷けますよね。
ですから虎さんは「翼さんがケーキくれないなら、チョコあげない!」と一方的に言うことが可能です🍰
ただし、ここでちょっぴり注意点。
お返しを期待してプレゼントの約束をする場合は、お返しが条件になっていることもしっかり記録に残しておく必要があります。お返しの約束が明確になっていないと、通常どおりタダで物をあげるプレゼント契約と見られてしまいます。ですので、「私がこれをあげるのは○○のお返しがあるからです!」とはっきり書きましょう!
トラブル③:お返しの金額が高すぎるー過大な負担の問題ー
事例(続)
さて、お返しの約束、実はもう一つ気になるポイントがあります。
それは、お返しの金額です!
例えば、チョコが3000円なのに、ケーキが5000円...。
こんなとき、翼さんは、お返しが高すぎることを理由に何か主張できるでしょうか?
解説室
さきほど見た通り、この契約は負担付贈与ですね。
ただ、負担付とはいっても、贈与は贈与。その基本は、相手にタダで物をあげる、というもののはずです🎁
そこで翼さんは、お返しをプレゼントと同額にしろ!だとか、高すぎるお返しは嫌だから契約解除だ!と言うことができます。
「ケーキは、チョコと同じ3000円までのものしかあげない!」
「5000円なんて高すぎる!そんな条件ならチョコももういらない!」
ですので、お返しを契約内容に盛り込む場合は、プレゼントとのバランスを考えましょう。
「高いものをあげるからお返しはもっと高いものね!」という気持ちは抑えて、お返しは相手に過度な負担を要求しないことがポイントです。
海外比較:日本ではプレゼントの約束は慎重に!ー契約形式の違いー
さて、これまで見てきたように、日本では、プレゼントの約束は口約束でも有効であり、その場合は一方的な解除もできるというルールになっています。
実は、日本のこういったプレゼントの約束の性質は、珍しいものなのです🌎
たとえばヨーロッパの多くの国では、プレゼントの約束を口約束でするだけではダメなんです。公証人が関わり、契約自体も書面で作る必要があります。
翼さん「あの時約束したチョコちょうだい!」
虎さん「ただ言ってみただけで、何の約束もしていないよ~。書面作ってないもん」
また、イギリスやアメリカでは、プレゼントを「はいどうぞ」と渡すまで、プレゼントの約束が成立しません。実際にプレゼントをあげるまでは、あげる側になんの義務も発生しないということですね。
翼さん「あの時約束したチョコちょうだい!」
虎さん「いや、約束って…別に私にチョコあげる義務ないでしょ」
こういった国々と比べると、日本のプレゼントの約束はかなり簡単に成立してしまうという特徴があります。
ですので海外から日本に来たみなさんは、プレゼントの約束には慎重になってください!
最後に
これまで見てきたとおり、意外とプレゼントはトラブルの元になります。
カップルのチョコとケーキくらいなら大した問題にはなりませんが、車や家、土地など、高額になればなるほど問題が肥大化します。
さらに、高額なプレゼントの約束は親族間でされることが多いため、ひとたび問題になってしまうと親戚関係がドロドロに…👨👩👧👦
ですので、これまで見てきたプレゼントの約束=贈与契約の何たるかをよく理解し、トラブルに巻き込まれないようにしましょう!
ということで、今回のプレゼントに関するトラブルの解説は終わりにします。
それでは、さよーなら!
【今日のことのは写真】
長年はまっているお気に入りのバレンタインチョコレート。コーヒー豆にチョコがコーティング!おすすめです♡
※個別の法律相談はできません。 ただし、みなさんの経験談や「こういうケースはどうなの?」という 一般的な質問は大歓迎です!一緒に考えていけたら嬉しいです。