CO2ナルコーシスとは


はじめに

CO2ナルコーシスは、体内の二酸化炭素(CO2)が過剰に蓄積された結果、中枢神経系に抑制作用を及ぼし、意識障害を引き起こす病態です。特に、肺の器質的疾患を持つ患者や神経筋疾患の患者に見られ、不用意な酸素投与によって引き起こされることが多いです。

病態

CO2ナルコーシスは、体内のCO2の蓄積とそれによる中枢神経系の抑制によって発生します。人間の呼吸は通常、体内のCO2によるpHの変化によって調節されます。しかし、病的状態で慢性的にCO2が貯留している場合、体はこのCO2貯留に慣れてしまい、呼吸刺激は低下します。この状態で不用意に酸素を投与すると、呼吸刺激がなくなり、よりCO2が蓄積し、この蓄積したCO2が中枢神経系に作用して意識障害を引き起こします。

診断

CO2ナルコーシスは、中枢神経症状、自発呼吸の減弱、そして血液ガス分析で重症呼吸性アシドーシスを認めることによって診断されます。これら、すなわち「重症呼吸性アシドーシス、意識障害、自発呼吸の減弱」は「CO2ナルコーシスの3徴」と呼ばれます。

検査

CO2ナルコーシスの診断には、血液ガス分析が必須です。この検査によって、患者の体内の酸素と二酸化炭素のレベルを正確に測定できます。また、血液ガス分析は、患者の酸-塩基バランスも示します。これにより、患者が呼吸性アシドーシス(体内の二酸化炭素レベルが高い状態)にあるかどうかも判断できます。

治療

CO2ナルコーシスの治療は、主に酸素療法と換気補助、および基礎疾患への対応からなります。まず、慢性的にCO2が貯留している患者に対しては、低濃度、低流量の酸素投与から始めることが重要です。しかし、治療によるCO2の迅速な低下は血圧低下や不整脈などを引き起こす可能性があるため、注意深く行わなければなりません。

一方、意識障害や呼吸抑制が見られる場合、気管挿管を行い、人工呼吸器による呼吸補助が必要となることもあります。この際、急激なCO2の低下を防ぐために、呼吸補助は緩やかに行うことが推奨されます。

さらに、CO2ナルコーシスを引き起こす可能性がある基礎疾患(COPDや筋萎縮性側索硬化症など)への対応も重要です。これらの疾患に対する治療を強化し、体内のCO2貯留を抑制することが求められます。

その他、肺炎などの呼吸器感染症やうっ血性心不全、気胸などの誘因が加わる場合、それらに対する適切な治療を行うことも重要です。