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ぬいぐるみをもらってみたい
タリーズで抹茶フラペチーノみたいな飲み物を飲みながらぼんやりしていると、店内で売られているティディベアが目に留まった。
もふもふしていて可愛い。ティディベアをもらってみたい。ふとそんなことを思った。
彼氏にティディベアをもらったこととがある人は、この世に一体何人いるのだろう。
大体、ティディベアをあげる、なんて破廉恥な行為、はっきり言ってめちゃくちゃイケメンにしか許されない気がするじゃないか。
イギリス王室でも王位継承上位の男性しか許されそうもない甘すぎるプレゼントだと思った。
というか「不細工がやってはならない10の事」に選ばれそうなくらい地雷的な行為な気がしなくもない。電光石火で恋に落ちるor軽蔑の眼差しで殺されるの二択な気がしてくる。
『人にテディベアを贈る』という行為は、それくらい危ない行為だ。
そう気がつくと、なおさらされてみたいという欲が出てくる。ハイリスクハイリターンとも言えるリスキーなプレイである。
しかし、だからこそ私はティディベアを贈られてみたい。私の妄想はタリーズの店内を駆け巡った。
正直なところ、好きな人から贈られたらテディベアが例え小さくても大きくてもブスでも巻き毛でも薄毛でも多分私は嬉しい。
しかし、「テディベアを贈る」という行為で人を恋に落とせるか、という話になると論点はズレてくる。
例えば、会社の取引先のお兄さんが「先日のイギリス出張のお土産です。目が合って、◯◯さんに似てるな、って思って、思わず買っちゃいました。」なんて言おうものなら、多少ブスでもトロくて日頃ムカついていても「え〜めちゃくちゃ可愛いじゃん、なんやこいつ…」となり、恋にこそ落ちなくても、全力で優しくする事が出来る。エレベーターが閉まるその最期の1秒まで45度までキッチリ頭を下げて「感謝」をする。肩についてるホコリくらいならさりげなく払ってやってもいい。テディベアはデスクの上に見せびらかすかのように座らせておくだろう。
つまり『テディベアは日頃のミスをチャラにする。』
例えば、この店の店員さんが
「あの…いつもご来店ありがとうございます。これ、よかったら…プレゼントです!」と言ったとする。
え、と戸惑う私をよそに、テイクアウトの袋の中に投げ込まれるテディベア。恥ずかしそうに袋を押し付ける店員。
例えばその店員がデブでもブスでもハゲでも、これは客の全員にしているサービスなのか?それともひょっとしてまさかまさかこれは好意なのか…?!という、謎のドキドキを提供された私は
「あ の 店、や ば み 」
の一言をダイイングメッセージのごとくハッキリとした意思表示を持って社内の女性全員に伝える。なにがやばいの?と聞かれても「ちょっといいから行ってきて、まじで」とだけ伝える。これは興奮ではなく単に語彙力のなさが巻き起こす悲劇でもあるんだけど、大抵女性は「まじでヤバかったらやばみとか言わない」と知ってるので、面白半分で店に行くことになるだろう。そしてテディベアをもらってももらえなくても、必ず一杯のコーヒーを買う。
つまり『テディベアは商売に繁盛をもたらす。』
例えば、めっちゃごっついひとが居たとする。
設定が雑になったなオイ、とか言わないで欲しい。全てが例えば、の話だからね、いいの。考えてみて、そう、めっちゃごっつい人。ゴリゴリのゴリラみたいな。毛深くて筋肉隆々で、漢字一文字で表してって言ったら「雄」とか「漢」とかが似合うような、古き良き日本男児みたいな、男からはモテるけど女からはイマイチモテなくって、寡黙で柔道着似合いそうな、刃牙で言うところの喧嘩師・花山薫みたいなゴリゴリのゴリラよ、知らない人はググって頂戴。そういうゴリラが、私の誕生日に紙袋を渡してくるの。
「なぁにこれ?」と尋ねると、数秒の沈黙の後、バツの悪そうに彼は呟く。
「何がいいか…わからなかったから。」
「あっえっ、誕生日の?!あっありがとう!開けていい?…すごい!テディベアだ!やだっ可愛い…ふぁ〜!」
挙動不審にも近いさかなクンばりの早口で感想を羅列する私に、彼に対する特別な好意は今までまるで無かった。だがしかしどうだ。不器用な男の差し出すテディベア。これは王道中の王道、雨の日に濡れた子犬を拾う不良と同じギャップ萌えである。これはずるい。可愛い。ゴリゴリのゴリラだと思っていた男が、もふもふのくまさんに思えてくる。
「そのさ…首元、見てみて。」
もふもふのテディベアの毛をかき分け、愛らしい熊のアゴをクイッとする。
やばい、ティファニーだ…。
ティディベアがティファニーつけとるがな…。
プレゼント一本勝負はここで完全にキマる。KO負けだ。恋に落ちるかどうかは定かではないが夢は見させてもらった。ここでアクセサリーのセレクトがティファニーである事がまた意味を持っていると思う。この一本勝負にグッチを出す男は大抵田舎出身丸出しの童貞感が強みだし、ヴァンクリのアルハンブラでも付けてくる男は、この手のプレゼントをおそらく何百回かやってるスケコマシでデート商法か何かだと思われるし、そのあとマンション買わされるから危機感を感じる。ティディベアも後ろにファスナー付いてて何か中にやばいものが入っているに違いない。受け取ってはいけないプレゼントの匂いがプンプンしてしまう。
グッチでもシャネルでもヴァンクリでもない、ここではティファニーであることが最重要項目である。
この技を使われた日には、好感度がブチ上がってゴリラの事をゴリラとは思わなくなる。すげー純粋でいいヤツだな、と普通に信じるし、人にもそう言う。ゴリラが黒人だからとか尼崎の出身だからとかカレー食べる時全部混ぜてから食べるから許せないとか、そういう類の曲がりくねった偏見があったとしても、一回は確実に消える。私は、そのゴリラをゴリラとは2度と呼ばないだろう。
つまり『ティディベアは偏見さえも取り除く。』
つまりティディベアを贈ったらきっと世界が平和になるね!って話で、特にオチはないんだけど、タリーズのティディベア、可愛いよね、人生で一度は贈られてみたいプレゼントだなぁと薄ぼんやり思いました。現場からは以上です。
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