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ショートショート 「優等生」

「ルールに縛られるな」

美術教師はたしかにそう言った。
この発言は慎重過ぎるがゆえに創造性を発揮することが出来ないでいる頭の固い生徒たちを刺激する目的で為されたのだった。
しかしクラスを牛耳る鈴木少年は意図的に教師の言葉を曲解した。
そしてこの発言を利用してクラスメイトに授業のボイコットを呼び掛けた。
その結果、次の授業には誰も出席しなかった。
ただ一人佐藤少年を除いては…。
翌日、鈴木少年は佐藤少年に詰め寄った。

「おい佐藤。テメエ授業に出たらしいな」
「うん」
「なんでだよ? ちゃんと先生の言うこと聞いてたのか?」
「もちろん」
「じゃあルールに縛られてちゃダメだろ。破れよ、ルールをよぉ!」

とその時、佐藤少年の眼が森永エンゼルパイと同じぐらい分厚いレンズの奥でキラリと光った。
思わず怯む鈴木少年。
しかし気を取り直して佐藤少年に訊ねた。

「ど、どーした…?」
「ボクはちゃんと破ったよ」
「何を?」
「キミが決めたルールを」

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