20190929 文章読解 (雑談の認識の違い)

【文章編】
 我々の日常生活において、陰ながら役立っているものの一つとして雑談というものがある。雑談はプライベートな人間関係でも、はたまた重要な業務を遂行する上でも、円滑に物事を進める上で欠かせないものとなっている。ところが、世の中には雑談が得意な人と苦手な人とがおり、コミュニケーションに課題を抱えている人や組織は少なくない。①(果たして、雑談の得手、不得手はどこから生じるのであろうか。)
 私には雑談が苦手であるとか、うまくいかないと言っている人には共通点があると感じている。その最大の要素は、常に意味のある会話を求めていることである。このような言い方をすると、意味のない会話などしていないという反論があるかもしれない。親しい誰かと会話を楽しむ時間を過ごすことにどうして何の意味もないのかと。しかし、ここで指摘したいのは会話という行為の目的ではなく、その会話の内容である。
 改めて、②(楽しい会話内容)というものを定義するとどういうことになろうか。おそらく大多数の人にとっては、難解な知識や語彙を必要としない日常会話が前提条件となっているだろう。ところが、これらの会話は雑談がうまくいかないタイプの人間にとっては無意味な会話に映り、雑談という行為の楽しみを全く理解できないことが多い。彼らにとっての会話の意味とは、会話によって得られた知識が他の場面においても適用あるいは応用可能であることだからである。そのためには高度に体系化された知識や、それを理解、説明するためのハイレベルな語彙が欠かせない。③(その結果として大多数の人が求めている雑談の形式とは大きくかけ離れてしまう。)
 そこで雑談が苦手なタイプの人は、④(意味がないことの中にこそ、意味がある)ということに気付くことが肝要である。細かく言えば、学術的な体系や他の場面での応用可能性がなくても、ただ自分以外の誰かと言葉を交わすという行為に楽しみがあるという視点に目を向けることである。そこに唯一の論理解というものは不要で、会話の流れに乗るという一種のサーフィンのような技術が必要になる。巷にあふれている会話術というのはこのような視点の違いについて触れることはあまりなく、相槌の方法など表面的な技術に留まってしまっている。これではいくら表面的技術を磨いたとしても、相手が乗りやすい会話の波を作り出すことはできない。雑談が苦手というのは、こうした本来の自分が好む波とは異なるものに乗れないか、作り出すことができないと言い換えることもできる。雑談において、アカデミックな会話を望む者とそうでない者、それぞれに合わせた会話の波を創出できる力こそ、真のトーク力と言えるのではないだろうか。

【問題】
 1. カッコ①において、雑談の得手、不得手はなぜ生じているのか。「雑談の苦手な人は、~から。」の~に当てはまる部分を文章中から15文字で抜き出せ。

 2. カッコ②において、雑談が苦手な人にとっての楽しい会話内容とはどのようなものか。次の選択肢のうちから最も適切なものを選べ。
 ア) 学術的に完成されたハイレベルな内容
 イ) 難解な知識や語彙を必要としない日常会話
 ウ) 自分の状況が変わっても使える知識を含んでいること
 エ) 自分の発言が会話相手とうまくかみ合うような内容

 3. カッコ③において、大多数の人が求めている雑談の形式とはどのようなものか。それを表している言葉を本文中から20文字以内で抜き出せ。

4. カッコ④について、次の問に答えよ。
 (i)カッコ④の具体例として、本文中の趣旨に合うものを選べ。
  ア) 天気の話をし始めた相手に対して、今日の温度は35度であるというように具体的な事実を見つけ相手に伝えること。
  イ) 先週見た映画の感想を話し始めた相手に対して、その映画の背景知識を語ること
  ウ) 好きな歌手の話を始めた相手に対して、歌手の話に対して質問で返すなどし、相手がその話題を継続しやすいように働きかけること
  エ) 日常で起こった何気ない出来事を話した相手に対して、これはこうすればいいよと具体的な解決策を示すこと
  オ) 数人で話しているときに自分の知っている話題を出した相手に対して、相手が話しやすいようにと好きな者であれば知っている内容で返すこと

(ii)カッコ④に気づくために不要なことと必要なことは何か。それぞれ、6文字と25文字で抜き出せ。

5. 次の選択肢のうち、本文の趣旨に最も合うものを選べ。
ア) 万人との雑談をするには、難解な語彙や知識を持ち出さなければよい。
イ) 相手とただ話をするという事実に楽しみがあると気づくことが大切である。
ウ) 相槌の技術を磨くことは、雑談が上手くなることには全く貢献しない。
エ) ハイレベルな語彙や知識を含まないと、会話に面白みを感じない人もいる。
オ) 相手が好む話題の方向性に合わせた会話のリズムを作ることが大切である。

答えと解説は次の記事で発表します。

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