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『学園戦記ムリョウ』 非日常のお隣さんとしての主人公・村田始について

『学園戦記ムリョウ』については以前ブログの方で紹介したことがある。
僕にとっては小学生の頃視聴して以来、思い出深い作品である。

今でも気が向いた時に dアニメストアで見ているのだが、ダブル主人公の一人である村田始(むらた はじめ)について語りたい。

ネタバレを含みますので未視聴の方は dアニメストア、もしくは Video MarketへGO!






視聴された方ならご存知の通り、作品内では宇宙人や超能力者が当たり前のように登場する。そういった非日常が中学生の日常、主に学校生活と見事に融合しており、宇宙規模の事件が思春期の葛藤の延長線上に、人間的に描かれていることが本作の魅力であるわけだが、この非日常を象徴するのが主人公・統原無量(すばる むりょう)であるとするならば、もうひとりの主人公である村田始は日常を象徴すると言うことができるだろうか。

村田始というキャラクターは何の力も持たない一般人として設定されており、実際、作中での彼の描かれ方がその域を超えることはない。
第四の壁をしばしば破壊し、第四話では「おまじない」によって宇宙の真実を知ることになるが、これらの超越性が彼を非日常の世界に引きずり込むことはなかった。
無論、彼も主人公として数々の重要な局面に居合わせるわけだが、統原無量や、第三の主人公とも言えるであろう守山那由多(もりやま なゆた)といった非日常の住人たちに見られるような明確な必然性がそこには存在しない。
村田始は一貫して、その時その時の状況に居合わせただけの非日常の世界に対するお隣さんであり続ける。

結局の所、彼には統原無量や守山那由多たちと同じ意味で一連の事件の当事者たる力が与えられることはなかった。
複数主人公の差別化という作劇的都合と片付けることもできるだろうが、当事者たり得なかった村田始が、ストーリーのクライマックスにおいて文字通り宇宙の命運を左右するまでの役割を果たすに至ることが、本作が他の何ものでもなく、『学園戦記』である理由なのだろう。

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