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ふれることがかなうなら

 これは異物である。兎角、つばさを継承する
 枕元から くしゃくしゃに織り込まれたゼロを咀嚼する
 紗幕を通してみた、夢遊病者のノンフィクションでは
 ぎんのはさみで/オーバーコートを/腰のあたりまで、

たなびかせるは 『虹のいうこと。』

 切断された、記憶が 繋ぎ逢わされなくても この手で掴めるだけ
 屈託のないえがおが、たぶん、つくられたものであっても

 「キミのことを、わたしは、真実と喚ぼうと思うのです」

 みなそりゃあ、さよならするってしってる、いまでは。きれいなもんなんてなにもねえ、いきているうちもしんだあとも、ぶよぶよでしわしわでいろいろくっついてる。

 欠陥にも程がある。思い出すら、うまく説明できないから脳が勝手気ままに、
 凍てつくばかりの箱庭に灯した、虚言癖の陽と月夜、昏昏と謡え躍れ、噺の種から緑児が、芽が花が輪廻を作り上げる、偶像が頭上で糸を引く、
 気持ちわりいな。
 そう処理するんだろうなともわかってる。
 腐り散らした遺体、事切れた肢体、用無しのからだ、心だけが置き去りに、空中浮遊してる、明日は明日もきっと飽き飽きの秋がきっと狂ったような紅葉が、美しく散るのなら、騙されてしまえたら、

シアワセ――

掴もうとすればするほど遠ざかる何か分からないから
実際には
元から
虚無の光や空虚な闇のようなもので輪郭も形もない
ただ
言葉だけが並ばれていく これからもそう、一生そう、

おもうようにはなせたことがない
常磐の心理とバラして信ぜよう

 砂塵に灯された熱波は凍てついて離れいかない。この瞳でどんなに世界を知ろうともたぶん私の中のなにかが、すべてをまっさらに変えるだけ。パラフィンは溶かされ水に弾かれている、だからなにも混ざらないし描かれない、きれいな、とてもきれいなものになれるのだ。

 あらわれれただけの屍骸、輪廻のはじまりとおわりを手放す日々にある。みな、ゆきずりのひと。私もまたそう耄碌した双葉といだき年月を数えながらまたどこかへ行くことでしょう。

 彼の、トルマリンの化粧はほのかに熱を帯び、すこしの駆動を促しました。機械仕掛けの神が言う、〈討ちゐ出す騙しのマニュアル〉を読み解きながら横抱きの嘘を味わい咀嚼する猥談を憶えては、マクラメのほつれどきを足先で馴染ませている。

揺り籠の上で。

 私から見た空には微量の鱗粉が綻びのように咲き乱れて瞬くばかりのありさまで、或いは朽縄を背骨から頸椎に模造してはぴんとるし挙げるばかりだったな。

 逸時いつじの本棚に終われた隠し部屋の愛花がそれはいつかにれ葉吹きに老いる。こうして窓際の彼方に松明は湿っていて、かろうじて煙が出ている状態で、酔いが一時的に光を落としてしまうのでした。

 夢のパーティはまだまだ続いていて、ガラスの靴をを吸い込んだ、空々漠々で埋め尽くされるであろう肺の黒さに目について、胃袋をムチャクチャに満たしてよろける底なし沼では、掘り起こされた名誉ある問題をつまみ食いしているだけ、この高揚は一瞬だけ、ゆめを魅せるだけの至福を齎すといえ。

 ――殺されたのはぼくだよ、
 死んだ目をした魚が
鱗をきらめかせていう。――

 他人には簡単な愛に、溺れてみたいのです。
 きみの 楽さを救って盗む 悔いのない航海をする この天頂で輝く
 見たこともない船を操縦するための舵を探しています
 (さ あ さ あ / あめ あられ、きらめいて ゆらめきたつ)
 『蜉蝣』の命は無慈悲に簡単に、生まれては消えていく運命に、逆らえない
 嘘で突かれたい。安っぽい幸せに啄かれたい。的になっても、

 つがいにありたい

 煮立てられた混乱、吹きこぼれたトランペット、南の。燈台に見せかけの歌碑を 底上げする螺鈿  大事なものだけを仕舞い込んで貯金箱と手帖とを持って。
 地貝に侵入して 絶えず嵐の隅に打ちつけられた。くすみひしゃげたセルロイドの裁縫箱に眠る、瞳がなくても手探りで見つけ出せる安っぽい心、それは。
 未完成の花札と賽が熱さで跳ね上がった、博打にもならない、出た目の役立たずのこと。空は透明で、花は一色のインクで それぞれのかおりで 組み換えされている。すばらしく、理不尽な青臭さだ。
 たとえ潰れていても、石と菓子と乳房と、ちいさな情でふれるだけ手をつなぎ、やわらかな地にいたむ足をつけて、

 愚直に だきあおうが、

 澄んだ心で、今の身をたもって 歩けるだろうか、
 信じてはいけない、猛烈にわらいながら死んでいく。

 守り慣れた恣意的な世界を捻じ曲げることで 自分に課せられた憂鬱の深さがわからずに目を閉じるがしかし、ちいさなエゴイズムの螺鈿を辿る道はいつか断ち切られる、この生命は燈火の一部。それは遠くへは行かず、わたしたちの思考を流れていくだけ。
 もうやさしい時分は死んだんだよ。うん、冷たいようだけど。まだ温いばかりの心が、未だこの足りないカラダを継接ぎして、息をしているような心地だけを齎している。




(お題 虹のいうこと)


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