AGIは3年後に訪れる? G7のレポートが観AIの超進化シナリオ
世界をリードする先進国の専門家パネルが、わずか数年のうちにかつてないAIが現れるかもしれないと警告している。いわゆる「汎用人工知能(AGI)」に近い存在が実用化すれば、社会はどう変わるのか。従来の自動化とは桁違いのスピードで、人間の仕事や金融システム、政府の役割までもが変革を迫られる——そんな大胆な仮説が、公的な場で本気で検討され始めた。
もしこの“加速シナリオ”が的中した場合、3〜5年後には知的労働の大半がAIで代替される可能性があるという。それはブルーカラーや事務作業だけでなく、法律・医療・デザイン・コンサルなど、知的領域全般へ一気に浸透することを意味する。今までの産業革命では、単調作業が機械化されても、新たな雇用が創出される流れが続いてきた。しかし、AGIレベルに達するAIは「新しい仕事」さえ自ら習得し、人間の得意領域も奪いかねない。この点で、“過去の技術革新とはまるで別物”だと指摘されている。
さらに懸念されるのが、金融市場と資本の一極集中だ。目にも止まらぬ速度で損益を計算するAIが多数の企業や投資機関に広がると、市場リスクが急激に連鎖し、大暴落や資産バブルが一気に発生する可能性がある。また、データを独占する少数のプラットフォーマーが、富を寡占状態にする展開も容易に想像できる。そうなれば中央銀行や政府が悠長に規制を敷く間もなく、新たな産業構造が勝手に塗り替えられてしまうかもしれない。
雇用の側面では、AGIの高速進化と同時に大規模な再編成が進む。職を失った人が自発的にスキルを磨こうとしても、その学び先をAIにリプレイスされる可能性すらある。こうした前例のないスピード感は、社会保障や教育制度を根本から作り直さない限り、今の仕組みではとても対応できない。政府レベルで早急にベーシックインカム(最低所得保障)の導入や、データやアルゴリズムを共有する新たなルールづくりが必要になるのではないか、と多くの専門家が声を上げる。
もちろん、「AIが何でもこなすなら働かなくていい社会になるのでは」という楽観論もある。実際、革新的な技術は生活を豊かにする力も秘めている。だが、誰かがAIを制御する権限を独占すれば、多くの人々の所得源が失われ、一部の巨大企業が膨大な利益を掻っさらう不平等社会になるリスクが高い。そのためにも、国際的な協調のもと、AI開発を単なるビジネスの延長として放置せず、“人間全体の利益”をどう守るかが焦点になりつつある。
では、個人はどう備えればいいのか。一つは今からAIツールに慣れ、自分の仕事を部分的に自動化してみることだ。AIを味方につけることで、生き残る道が開けるかもしれない。もう一つは、「人間にしか生み出せない価値とは何か」を問い直すこと。芸術やコミュニティ形成、身体性を活かしたサービスなど、AIにとって代わりづらいジャンルは存在する。ただ、AGIがその領域も習得していくシナリオがゼロではない以上、現行の社会制度を放置したままでは激しい格差を生むだけだ。
いま必要なのは、妙な楽観や過度な恐怖に走ることではなく、複数の未来を同時に見据える柔軟さだ。わずか数年先に全自動化が到来する可能性を真剣に議論しつつ、もしAIの進化がそこまで速くなかった場合にも対応できる道を残す。政府も企業も個人も、それぞれのレベルで先回りして準備を始めておくことに損はない。歴史を振り返っても、大きな技術変革を前に何もしなかった社会は軒並み停滞してきた。
いずれにせよ、G7レベルの場で「3〜5年先にAIが社会をひっくり返すかもしれない」という声が上がった意味は重い。いまから突飛な仮説をバカにしている余裕はない。次の革命が本当にやって来るなら、それは想像もつかない規模の経済変動と雇用崩壊を伴うかもしれない。むろん、それが人類にとって最悪のシナリオになるか、逆に豊かな未来への入り口となるかは、僕らの選択と行動次第だ。