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なぜ銀河は静寂を保つのか?“星間移動を放棄するVR文明”という新視点

銀河には数え切れないほどの恒星が存在する。人類が「地球外生命は必ずいるはず」と信じる根拠もそこにある。ところが、これまでのところ目撃情報や確証は出てこない。電波や探査機を使っても“空振り”ばかり。いったい何が起きているのか。

ある大胆な仮説によると、先進的な知的生命はわざわざ星間航行などしないという。技術的にも資源的にもハードルが高く、下手をすれば航行中に壊滅的ダメージを負う。仮にほかの種族と接触できたとしても、一方的な衝突やウイルス被害のリスクも拭えない。そんなコストと危険を冒すより、彼らは自分たちの母星で“安全かつ快適な”道を選んでいるのではないか。

その道とは、肉体を捨てたバーチャル世界への移行。もしも脳や意識を完全にデジタル化してしまえば、最低限のエネルギー源さえあれば疑似的な理想郷がいくらでも構築できる。極端な話、重力も放射線も、食糧難も気候問題もすべて仮想空間で制御可能。いちいちロケットを飛ばして新天地へ行かなくても、内なる“仮想天国”を味わえるのだ。

実際、地球でも近年はVR技術やネットワークの発展が著しい。自宅に引きこもって仕事や娯楽を賄える環境が次第に整ってきているのを見れば、宇宙規模で同じ現象が起きていても不思議はない。いわゆる「チャレンジングな星間旅行」に挑むより、手間のかからない仮想世界へ移住するほうが合理的だと考える知的種族は多いかもしれない。

そうなると当然、ほかの惑星から姿を現す異星人など滅多にいない。彼らは遠い銀河で仮想空間を満喫し、わざわざ外へ出るメリットなど見いださないのだろう。しかも、かりに「行こう」と思っても、そこに費やすリソースが膨大すぎる。結果として宇宙には知的生命がいるはずなのに、互いに閉じこもってしまい遭遇率がほぼゼロに近い──というわけだ。

もし、この仮説がある程度正しいなら、人類がどれだけ懸命に電波を送ろうが、あるいは深宇宙を探査しようが、会えないのは当然かもしれない。彼らの“意識”はすでにシステムの内部にある。外部へ向けた派手な信号など放つ必要もなく、そもそも通信を行う意義さえ薄れている。

一方で、「そんなに引きこもってばかりで楽しいのか?」という視点もある。冒険や探検そのものに意義を感じる種族なら、あえて星間航行に挑戦することもあるだろう。だが、それは非常に稀な“珍プレイ”でしかないのかもしれない。ほとんどの文明は外の世界を覗かないし、侵略に走る動機もない。だからこそ、気づかれぬまま星にこもり、静かに繁栄し続けている……。

このシナリオが果たして真実かどうかは不明だ。ただ、いまだ見つからない宇宙人の謎を考える上で、「そもそも皆が外出をやめている」という発想は新鮮な切り口だろう。
宇宙のどこかにいるかもしれない「VR化した隣人たち」は、今もデータの海で思う存分好きなシミュレーションを楽しんでいるのかもしれない。それを思うと、我々が未来に目指す姿も、もしかすると“星の海”より“電脳の海”のほうが近いのでは? そんな問いが、深い余韻を残す。

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