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幼児の吃音の話⑤DCMとリッカムプログラムって何?(後編)

幼児向け吃音ガイドラインが発表されたことを受けて、吃音の幼児向けプログラムであるDCMとリッカムプログラムについて解説してきました。今回はこれらの長所・短所について私なりの見解を述べていきいます。

DCMとリッカムプログラムの長所

①優れた治療効果

海外生まれの2つのプログラム。世界中で広がっている理由は「治療効果が実証されているから」というのが大きいでしょう。吃音の治療法というのは効果を証明するのが難しく、そのため大きく取り沙汰されることがありませんでした。ところがDCMとリッカムプログラムは、実際に子どもたちに訓練を実施した結果、効果が高かったことを医学的に証明できています。私たち専門家が自信を持って実施できるプログラムになっています。

②楽しいおうちトレーニング

この治療は、私たち専門家が子どもたちに指導するのでなく、おうちでお父さん・お母さんとお子さんが毎日トレーニングすることになっています。子どもにとっては大好きなお父さん・お母さんと毎日遊べるという感覚でトレーニングできます。このおうちトレーニング、海外では「スペシャルタイム」と名づけられています。まさしく親子にとってスペシャルな時間を毎日送りながら、楽しく吃音トレーニングができるのです。

DCMとリッカムプログラムの問題点

ともにとてもいいプログラムではありますが、残念ながら問題点もあります。

①約1年の長丁場なトレーニング

リッカムプログラムを例にあげると、治療期間は1年近くに及びます。そしてその間、毎日15分のおうちトレーニングが義務づけられています。さらに言語聴覚士との面談は週に1回です(*吃音の重症度によりどちらも徐々に減っていきます)。1年間、毎週病院に通い続ける負担はかなり大きいものと思います。

②毎日のおうちトレーニング時間の確保

おうちトレーニングには長所も短所もあります。親子で楽しい時間を過ごす、というのはとても素晴らしいことですが、この15分を捻出するのが大変、というご家庭もあるでしょう。しかもこのおうちトレーニングは1対1が原則。仮にほかの兄弟がいる場合、その兄弟たちにトレーニングの邪魔をされないよう環境を工夫する必要があります。その上で週1回の言語聴覚士との面談もあるわけですから、ご家庭の負担は決して軽いとは言えません。

③指導者不足の現状

せっかくの優れたプログラムではありますが、現状、これらに対応できる言語聴覚士はとても少ないです。リッカムプログラムは専門のセミナーを受けた言語聴覚士が指導に当たることが推奨されています。2013年から毎年1回セミナーが開かれていましたが、新型コロナウイルス感染が蔓延しているここ数年は開かれていません。優れた治療法があっても、それを実施できる言語聴覚士が少ないのが現状です。

オンライン指導の展開

DCMやリッカムプログラムを受けられる場所は、なにも病院だけではありません。自費(有料)にはなりますが、オンラインでこれらの指導をしている言語聴覚士もいます。私のところでも何人か親子でトライしてもらっています。病院が見つからない場合、有料にはなってしまいますが、オンライン指導を受けてみるのもお勧めです。


DCMとリッカムプログラムについて紹介してみました。この2つのプログラムは幼児向けで6歳(年長さん)までしか受けられません。今しか受けられないという方は機会を逃さず、専門機関につながっていただきたいと思います。

そして専門家の皆様へ、この情報を知って、ひとりでも多くの方に広げていただけるようご協力をお願いします。私のところにも「なんでもっと早く教えてもらえなかったのか」と嘆きつつ相談にみえる方がたくさんおいでです。「治療ができる・できない」はあるにせよ、せめて情報だけは広く知られていくべきですし、その役目が私たちにはあると思っています。それもまた大事な支援のひとつと思っています。


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