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こどもとあそぶ。ことばであそぶ。〜⑳同じ絵本ばかり読んでいいの?〜

絵本は繰り返し読むのが正解

前回投稿はこちら。

今回は絵本が大好き!という子のためのお話。絵本が嫌いな子向けの記事はこちらでどうぞ。

寝かしつけのときに絵本の読み聞かせをしているというおうちも多いのではないでしょうか。そのための本を図書館に借りに行き、「好きな絵本選んでいいよ」と伝えると、子どもが持ってきたのは以前にも借りたことがある絵本。

前と同じものを繰り返し読んで意味があるの?という疑問が湧いてきます。

答えはもちろんOK! 何度でも繰り返し飽きるまで読んで大丈夫ですし、それこそが絵本の有効活用法とも言えます。

絵本から学ぶことばの世界

夕焼けとお母さんの口紅の色

私の友人の子どもの話です。友人は子どもが1歳になる前から熱心に絵本の読み聞かせをしていました。

子どもが3歳くらいのとき、ベビーカーに乗せてお散歩に行くと、目の前にそれはそれは綺麗な夕焼けの光景が広がりました。

「見て、○○ちゃん、すごく綺麗な夕焼けだね」

そう友人が声をかけると、3歳のその子はこう答えました。

「お母さんの口紅の色だね」と。

聞いたことばが自分のことばになっていく

3歳の子どもが発したにしては叙情的な台詞だと思われたことでしょう。これはその子が自分で思いついたことばではなく、普段繰り返し読んで聞かせていた絵本の一説です。その絵本の中では、夕焼けをお母さんの口紅の色に例えていました。それを何度も聞いていた子どもは、お母さんの声かけにその一説を使って答えたのです。

これこそが絵本の大切な役割のひとつ。絵本がことばを育てるということです。絵本の中には知らないことばが溢れています。よく知らないことばが出てきても、子どもは特に気にも留めず、聞き流しているように見えます。ですが何度も繰り返し聞く中で、知らないことばの意味を自分で少しずつ咀嚼していきます。やがてそれが使えるシーンが巡ってきたときに口にするようになるのです。

この咀嚼をするのに、かなりの時間を要します。1年2年かかってしまう場合もあります。だからこそ同じ絵本を繰り返し読んでほしいのです。

ことばは、絵カードや図鑑だけを繰り返し見ているだけでは育ちません。そこでおぼえたことばを使ってこそ、自分のものになっていきます。

そしてことばは、その意味をよく知らなくても使うことができます。友人の3歳の子はもしかしたら「口紅」を知らなかったかもしれません。それでも、夕焼けということばから、普段読んでいた絵本の情景が蘇り、知らないことばであっても使うことができました。正解かどうかわからなくても使うことを躊躇わずどんどん挑戦するのが子どものいいところ。多少誤用しても大目に見てあげることも大切です。

絵本はコミュニケーションの道具

せっかく絵本の読み聞かせを習慣化しているなら、パパやママが呼んであげる一方通行でなく、コミュニケーションの時間に変えてみてください。絵本を読みながら、子どもたちに質問してみるのです。

大人「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。」

大人「誰が出てくる話かな?」

子ども「おじいさんとおばあさん!」

大人「そうだね。○○くんのじいじとばあばはどこに住んでいたかおぼえてる?」

子ども「長野」

大人「そうそう。夏休みに遊びにいったもんね」

こんな感じです。「絵本の内容が頭に入ってこなくなるんじゃない?」と思われるかもしれませんが、ことばを育てる観点からいえば、絵本のことばもパパやママとの会話のことばも、同じくらい意味があるもの。絵本は繰り返し何度も読む前提ですから、多少会話で脱線したっていいのです。それにいつ質問が飛んでくるかと、子どもは熱心に絵本に耳を傾けます。集中して聞く練習にもなりますね。

パパやママは絵本ナレーターになる必要はありません。私は言語聴覚士のほかにアナウンサーの仕事もしており、絵本の読み聞かせをしたこともありますが、それぞれの立場に求められる役割は別物と断言できます。絵本の美しい世界観を味わうことも子どもの情緒の発達にはいいものですが、コミュニケーションの道具として利用する方法もアリですし、ことばを育むという意味でもお勧めします。

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