コピーライター3年目、公募コンペとの向き合い方。
若手クリエイターはコンペから
3年目のコピーライターです。
子供の頃、ハタチを大人だと思っていたように、入社したての私は3年目ともなればコピーが書けるようになるものだと思っていました。
もちろん入社したての頃よりも、いろいろなことを周りから教えてもらい、自分で試行錯誤もして、新しい景色が見えてきたと思う部分もある。その一方で、「え、まだ全然想像していた大人なんかじゃないんだけど!」とハタチの自分が思ったように、「3年目なのに全然コピー書けないんだけど!」と思う今日この頃です。
この2年間と少しの期間、本業の傍ら、公募コンペと呼ばれる広告賞にチャレンジしてきました。
資格などがない広告クリエイティブ界隈では、実際に世の中に出た制作物の実績か、有名クリエイターが評価する広告賞の受賞が、その人の実力を測るために使われます。
若手で世の中に出る制作物の中心を担えることは稀なので、実務で経験を積みながら、アイデアだけでチャレンジできる公募賞で実力を鍛える・示すのが、若手あるある。
審査員にあてにいく、以外の勝ち方
1年目はとりあえず賞に出すということを経験しながら、広告の基礎「企画とは何か」「新聞広告とOOHとラジオ広告はどう違うのか」などを学ぶ。コンペに限ると、各コンペはどんな基準で優劣がつけられ、どんな力が試されるのかを学ぶ、という感じだった気がします。
2年目からは各コンペの「ルール」のようなものがわかっているので、「応募する」ことよりも「結果を出す」ことを目標に臨む。
...私にとってはここが、今ぶつかっている壁になりました。
コンペで手っ取り早く結果を出す方法は、審査員の好みと傾向を把握し、それに合わせたものを提出すること。
そう考えた私は、各コンペごとに審査員が作ってきたものや過去の受賞作を分析し、評価される点や評価されるものを作るための方程式を作る方法でコンペに臨みました。
結果、協賛企業賞やファイナリストなど一定の結果は出せたものの、いま一歩足りない。だからこそ心にもなんとも言えないモヤモヤが残る2年目でした。
上記は完全に間違っている姿勢ではないし、その方法で結果が出る人もいると思います。一方で私にとっては、結果を出し切るには何かが足りていませんでした。
私が作りたいもの、本当に感じたこと
考えた結果、この方法だと「誰になんと言われようと、私は確かにこう感じたんだ」という強い気持ちが欠けてしまうという結論に至りました。
きっかけは、ファイナリスト止まりだった販促コンペという公募賞でグランプリを取った作品が「授乳できる場所が少ない」という企画者が育児をしていた際の悩みを基にした「ブラジャー屋の試着室を授乳室にする」というアイデアだったこと。
それ以外の受賞作も、企画者の経験や悩み、「偏愛」を元に考えられた企画であり、それに比べて自分が考えたアイデアはコアとなるものがない。こういう悩みがあるだろうから、こうしたらいいんじゃない?と、どこか他人事な企画だったと感じました。
そう思い始めると、今までのやり方ではどうしても「クラスで流行っていることに合わせて、面白いとも思っていないことを『面白いよね〜』と言ってみることで、なんとか中心の輪に入ろうとしている」みたいな息苦しさを感じるようになったのです。
とはいえかつて、「そんなの別に面白くないよね!こっちの方が面白いよね」とクラスの端っこで主張するようなものを作っては、共感されず失敗していたこともあるので、それに比べて進化しているような、横に逸れただけのような。
広告である以上、クラスの大半に共感してもらうことは最低条件。なんとか自分の気持ちに嘘をつかずに、クラスの真ん中に行く方法はないものか。そんなことを考え始めました。
最近見ているNo No Girlsというオーディション番組で、審査員のちゃんみなさんが「自分というものと、それを表現する、支えるためのスキルを同じスピードでバランスよく育てていかなければいけない」というようなことを話していました。
言いたいことを言っていた昔よりも、審査員に合わせて一定評価される、少なくとも選択肢に残るような作品を作れるようになった今、スキルが少し育ったと考えて、また「自分」に立ち返るフェーズなのかなと思います。
作りたいものと、みんなに伝わるの重なるとこ探し
「言いたいことを言う」というよりも、「嘘はつかない」くらいのことかもしれません。
つまらないと思っていることを、みんなが面白いと言っているから「面白いよね」と言うのではなく、私が面白いと思うものの中から、みんなが面白いと言ってくれそうなものを探す。
その道のりがどのくらい長くなるかは今のところ見えていませんが、ひとりでノートと向き合ったり、一緒に作ってくれるデザイナーの力を借りたりして、私とみんなの重なるところ探しをしていこうと思います。