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『ひだまりが聴こえる』ドラマと原作の違い

『ひだまりが聴こえる』をテレビ東京ドラマ→原作漫画の順で観た私が、両者を比較してみました。
ネタバレを含むので内容を知りたくない方は読まないようお願いします。
・原作は『ひだまりが聴こえる─幸福論─』までの比較とします。
・大雑把な比較です。漏れがあることをご了承ください。


はじめに

ドラマと原作の対応は次の通り。

・ドラマ第1~5話【大学1年春~夏】
=原作『ひだまりが聴こえる』(以下『ひだまり』)第1~最終話(5話)。

・ドラマ第6話【大学1年夏~大学2年春】
=原作『ひだまり』収録「今はまだ道の途中」、
『ひだまりが聴こえる─幸福論─』(以下『幸福論』)第2話、
『幸福論』収録「その予感」のエピソードを再構成。
また、【大学1年秋~冬】の期間は原作がないためドラマオリジナルエピソード。

・ドラマ第7~12話【大学2年春~夏】
=原作『幸福論』第1~6話。但し原作の期間は【大学2年春~冬】に設定されている。

■ドラマ第1~5話と原作『ひだまり』の違い

あまり違いはなく、ほぼ原作通り。

第1話「聴こえないのは、お前のせいじゃないだろ」

冒頭の雨のシーンの差し込みは、原作にはない。


第2話「向こう側に、もう俺の居場所はない」

原作では航平が過去に女性ノートテイカーとのトラブルで周囲に誤解され、孤立を深めた描写があるが、ドラマではカットされている。
その代わり、体育授業(バスケットボール)のシーンが追加。


第3話「大事な人にだけ、わかってもらえれば」

中学生の太一が両親の会話を聴いてしまう描写は原作にはない(じいちゃんが声をかける描写はある)。

映研サークルの映画撮影シーンは、原作では草野球。

航平の作ったハンバーグを食べながら太一がじいちゃんとの思い出を話し、聴こえなかった航平が太一に聴き返すが「たいした話じゃない」と言われてしまうシーン。
ドラマでは航平が「太一が『何度でも聴き返せ』って言ったんだよ」と訴え、太一はもう一度話をする。
原作では航平は黙ってしまう。


第4話「あの声が聴こえなくなるのは、嫌だな」

大きな違いなし。


第5話「聴こえなくなるより、怖いこと」

太一は航平が離れた理由をカフェ店長のアドバイスで気付くが、原作では自分で気付く(カフェ店長は原作ではほとんど出てこない)。

非常階段での告白の翌日(?)、原作では航平が髪を切っているが、ドラマでは変化なし。

■ドラマ第6話と原作

ドラマ第6話は原作のあちこちからエピソードを拾って再構成している。

第6話「また、キスとかされちゃうよ」

キャンプエピソードは、『幸福論』収録「その予感」から。
原作ではsig-nの社員旅行キャンプだが、ドラマでは学生キャンプに置き換えられている(太一が航平を誘う設定、釣りのシーンなどは原作と同じ)。

美穂ちゃんとの仲直りは原作にはない。

航平が太一に手話を教える描写は、『ひだまり』収録「今はまだ道の途中」から。

航平の「そんなに無防備だと」発言は、『幸福論』第2話から。

航平「もうあんな事はしないよ」、太一「嫌じゃなかったらどうすんだよ」発言は、「今はまだ道の途中」から。

===ここまでキャンプエピソード===

2人でノートテイクの講義を受けるシーンは原作にはない。

大学1年秋~冬は原作にない期間のためドラマオリジナルと思われる。

◆原作「今はまだ道の途中」について

太一の高校時代の回想と、太一と航平が2人で映画を観に行くエピソードが描かれる。

≪太一、高校時代の回想≫
担任「佐川ー 進路の件 家の人と話したかー」
太一「あー…いや、やっぱ無理っすよ ウチ金無いし」
担任「だから 奨学金制度があるって…」
太一「でも俺 特にやりたい事とかないし、そんなんで大学行っても…」
担任「だからこそ 行くべきなんじゃないか? やりたい事を見つけるために そのヒントになるものに 出逢える機会があるかもしれない」

『ひだまりが聴こえる』「今はまだ道の途中」

航平の誘いで2人は映画を観に行く。以前美穂ちゃんが話していた小説の映画化で、字幕も出る。
映画が始まると、スクリーンの右端に出る字幕を読むためにずっとそちらに顔を向けている航平の姿に、太一は気付く。

■ドラマ第7~12話と原作『幸福論』の違い

第1~5話に比べて違いが多い。主だったところを。

第7話「もう、俺がいなくても」

原作では太一とマヤが初めて会う時に犀さんもおじさんとして登場する。

飲み会で無理して張り切って疲れてしまった航平。ドラマでは「太一のよさにいつ誰が気付くか気が気じゃない」とマヤに話すが、原作では太一の名前は出していない。


第8話「太一以外の人じゃ、いやだから」

ノートテイクで負担をかけたくない航平と、航平が大事なことを何も言ってくれないと感じる太一のわだかまり。
原作ではわだかまりの原因が次のように大きく異なる。
≪春休み、バイト仲間と飲んで酔っ払った太一を偶然通りがかった航平が連れて帰ることになり、太一が眠ってしまったために航平の家へ。そこで、「そんなに無防備だと~」→「やじゃねーもん」→狼狽える航平→航平を突き飛ばして帰る太一、という展開があり、2人はわだかまる≫

航平が佐川家を訪ねるシーン。
ドラマでは航平が思い切って太一にノートテイクを頼み、太一が快諾。安堵で気が抜けた航平は畳に寝転がる。
原作では太一が春休みの件を謝罪。安堵した航平は畳に伏せると、佐川家の大体の住所しか知らず、近所の人に尋ねながら不安な気持ちでたどり着いたことを太一に明かす。

じいちゃんが帰って来て、太一と航平が線香花火をするシーンは原作にはない。


第9話「同じことで同じように笑えたら」

原作ではマヤが杉原料理教室に参加。航平がサポートに駆り出される(そこでのやり取りは大学内での出来事としてドラマに反映されている)。

原作ではsig-nの社員として天童さんが登場する。


第10話「俺が学校やめるって言ったら、どうする?」

ドラマではsig-nでアルバイトをする太一が「このままでは中途半端」と悩む姿が描かれるが、原作では初めから社員として誘われるので、この部分はない。

太一に「俺が大学辞めたらどうする?」と言われた航平は、手話サークルでぼーっとしてしまう。原作ではこの後、マスク姿の先輩に話しかけられてイライラしてしまった航平が、実は花粉症が酷くてマスクをしていた先輩に「花粉症の人じゃなきゃわからないから仕方ない」と言われ、同じ状況でなくとも相手に寄り添える太一のすごさを改めて感じる。

マヤが航平に太一のことが好きなのか尋ねるシーンで、原作では「先輩は元々男の人が好きなんですか?」「いや…違うけど…」のやり取りがある。

航平がマヤに太一への想いを話した後、原作では「もしやり直せるって言われてもまたこの人生を選んだと思う。太一と会えて幸せだったから」との台詞がある(ドラマのラストに反映されている)。


第11話「今までノートテイクしてくれてありがとう」

太一がヨコとヤスに大学を辞めると告げ、理由を話すシーン。原作から補足。

「…初めてだったんだよ
今までは…思った通りに言ったりしたら大抵喧嘩になって追い出されるパターンでさ
(『うちで働いてみない?』)
あんなこと言われたことなかった
なんか一緒に働いてみてーなって思ったんだよ」

『ひだまりが聴こえる─幸福論─』第5話

太一がマヤの友達を間違えて怒ってしまい、マヤに責められ、太一が反論するシーン。原作から補足。

「お前 周りが思ってるよりずっと聴こえてないんじゃねーの?
ヨコん時もそーだったじゃん 聴こえてるフリして合わせてんだろ
でもそれ相手はどーすんだよ お前に伝わってると思って向こうは喋ってんのに本当は一方通行なんてさ
それじゃ話も噛み合わねーまんまだろ そんなんでいーのかよ!
(略)
お前はもう充分頑張ってるじゃねーか
聴こえねーから口の動き読んで相手の言うこと想像すんだろ? それってすげー神経使うんじゃねーの?
んな事ずっとしてたら疲れるに決まってるし、だったら最初から聴こえないって言う方がラクじゃねーか?
お前ばっかり頑張る必要ねーだろ」

『ひだまりが聴こえる─幸福論─』第5話

夕暮れの石段で航平と太一が話すシーン。
航平の台詞を原作から補足。

「…病気をした事がない人には病人の気持ちは分からないって言うでしょ?
大抵はそう、同じ状況になった事がないと同情はできても想像したり理解したりすることはできないんだ
それが相手との大きな溝になったりする
(略)
だけど太一は最初からそんなものなかったみたいに簡単に溝を飛び越えちゃう」

『ひだまりが聴こえる─幸福論─』第5話


原作では航平が太一に「やりたい事って何?」と尋ね、太一が「それは…パス!」と答えるシーンがある。

ハグの後、ドラマでは冗談を言い合いながら2人で帰るが、原作では冗談に怒った太一が先に歩き出し、振り返った太一に航平が手話で「た・い・ち・好き」と伝える。

太一の最後のノートテイク、
航平の回想、
最後に2人で食べるお弁当(航平が泣きながら作ったハンバーグ)、
2人並んで下校→別れ、
以上のシーンはドラマオリジナル。
ドラマでは別れた後に太一が振り返り、航平の手話(「た・い・ち・好き」)のシーンとなる。


第12話「何度でも、全部お前に届くまで」

最終回は原作とかなり違う。

ドラマは太一が大学を辞めて数ヶ月後の夏。
原作は太一が大学を辞めて半年後の冬。

ドラマでは久しぶりのヨコからの電話に喜ぶ太一だが、電話を代わったヤスから「杉原は新しいノートテイカーと上手くやってる」と聴かされる。
原作ではヨコからの電話で「杉原に彼女ができた」と聴かされる。

ドラマでは夏祭りで偶然再会した太一と航平。
原作では出版社のエレベーターで偶然再会した太一と航平。

ドラマ:「新しいノートテイカーと上手くやってるんだって?」「うん 仲良くやってるよ」。
原作:「彼女できたの?」「うん できたよ」。

ドラマでは「帰るわ」とその場を去った太一。小走りしてつまずいて転び、ようやく自分の気持ちに気付く。
原作では航平が「食事に行こう」と誘い2人で歩き出すが、お祭りの人混みに合い、はぐれないように航平は太一の手を取って歩く。辛くなった太一は手を離して走り出し、雪が降り積もる中、道端で転ぶ。

いつもどこにいても 笑っててほしかった
でも笑ってるあいつの隣に しらない誰かがいるなんて想像してなくて
チョッと前まで そこは俺の居場所だったのに

いつからだったんだろう

「…せっかく おんなじ だったのに…っ」

『ひだまりが聴こえる─幸福論─』第6話

ドラマでは1人で花火を見ていた太一のもとに航平が駆けて来て、「我慢しようと思ったけどやっぱりダメだ」と告白し、太一も自分の気持ちを伝えて航平をハグ。
原作では転んだままでトラックに引かれそうになっていた太一を航平が走って来て助け、彼女のことは嘘で「我慢しようと思ったけどやっぱりダメだ」と告白。太一も自分の気持ちを伝え、航平が太一をハグ。

ドラマのラストは2人が初めて出会った場所、大学の屋上で並んでお弁当を食べる太一と航平。
原作のラストは航平の回想シーン。ヨコが彼女と勘違いしたのは航平の母親で、酔っ払った母親を見ながら太一を思い出した航平が「春になったら会いに行こう」と決意し、太一と出会えた幸せを噛みしめる。

◆原作「その予感」について

sig-nの社員旅行キャンプのエピソードで、ドラマ第6話に(学生キャンプに置き換えて)反映されている。

ドラマに反映されていないのは2人のキスシーンと、この先のストーリーに繋がりそうな描写(航平の聴力、千葉さんの存在など)。