校閲記者の仕事道具 筆記具編
中日新聞の校閲部に存在する筆記具の流派。
入社して16年、私は3派を渡り歩いてきました。
赤鉛筆
入社時はこれぞTHE校閲、昔懐かしの赤鉛筆派。
極限まで使い切る。人知れず、短さの限界に挑戦していたこともありました。
赤ボールペン
北陸本社(金沢市)への異動とともに赤ボールペン派に。
北陸本社では主流派だったので、「郷に入っては郷に従え」で使い始めましたが、やはり最初は違和感が。
でもだんだん、時にザラザラ、時に滑らか、調子がいいときに乗ってくるそのスピード感に魅力を感じ始めました。
紙に印刷された黒い文字の上を赤インクで何度も何度もなぞる校閲作業。繰り返していると、ふとした瞬間にその黒と赤が混ざり合った小さなダマが紙にちょこんとへばりつき、触るとべちょーっと汚れてしまう。そんな愛嬌もありました。
芯ホルダー
さて再び名古屋本社に戻りしばらくはボールペン派を続けていましたが、名古屋で知らぬ間に結成されていた新流派、シャープペンシル・芯ホルダー派にそそられて、今ではどっぷり漬かっています。
赤鉛筆は割と頻繁に削らないといけませんが、これならその手間を省けます。インクべちょーの心配もありません。何よりホルダーは長く使用できますから愛着も湧き、なくてはならない相棒になってくれます。
鉛筆、ボールペンは会社の備品を使う人がほとんど。ですがシャーペン・芯ホルダーは違います。芯は備品の「三菱ユニホルダー替芯」(太さ2㎜)を使う人が多いですが、ホルダー部分はバラエティー豊か。
私は替え芯と同じ三菱の「ユニホルダー」=上の写真=を使っています。これを選んだ強い理由はありません。何となく使い始めて心地がよいので長く大切に使っています。
相棒はバロメーター
大抵の校閲記者はこれらの流派で、毎日せっせと赤線を引きながら確認作業をしています。
一つの流派にこだわらず作業工程ごとに筆記具を使い分ける人、基本は一流派に足場を置いている人、いろいろですが個人的には今日は鉛筆、明日はボールペンとはいきません。
やっぱり使い慣れた物じゃないと、大げさですが仕事のパフォーマンスに響きます。同じ書き味、持った感触。これが変わると調子が狂ってしまいます。
同じ物を毎日使う。すると線の乱れ、無意識的な力の入れ具合の感覚でちょっと今日は調子がいつもと違うな、頭が働いてない日だなと自覚することがあります。
私の場合、引く線が無意識的に濃くなってくることで心の乱れを察知します。芯がポキッと折れようもんなら「あぁ焦ってるなー」と自戒します。
編集局中がどんなにお祭り騒ぎでも、どんなに時間に追われていても校閲は冷静さが大切です。精神状態は仕事に影響します。心が乱れていいことは何もありません。
現実はそう簡単ではありませんが。
いっぱい芯、折りますし。
でも、自分で気づけない自分の状態を、愛用の道具はいつも教えてくれています。