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難聴児、小学生から必要になる学習支援の必要性を探る

さて、今日は、難聴児に必要となる「学習支援」についてお話します。

これは、小学生から必要になるものですが、難聴児と言うと、”療育”が必要だと言われますよね。

「療育」と「学習支援」は違います。
ただ、僕は専門家ではないので、難聴児の家族の視点としてお話します。

療育とは、言葉の聞こえの練習です。
聞こえにくいので、補聴器や人工内耳をつけて、聴覚を使えるようにしたり、発音をある程度話せるようにしたりというのが基本で、あとは、相手とのコミュニケーションの取り方とかを学んでいくといったことを、未就学の間やってきました。

そして、これは、地域の小学校を目指す上で、聞こえる子と一緒にやっていける土台を作っていたなと思います。

聞こえないのに聞こえる子に合わせるとか、そういうことではなく、地域の小学校で、聞こえのフォローをしてもらった上で、友達とコミュニケーションができるように、話を聞いて勉強を理解できるようにという土台を作っていたイメージです。

そして、小学校に上った後は、勉強が理解できているか、このフォローが重要になってきます。
あとは、周りの人とのコミュニケーションですね。

このコミュニケーションについては、療育でもやっていましたし、これはある程度の年齢になるまで必要なことですね。


小学校の通級教室というところは、「療育」をする場です。
多分、地域ごとに違いはあるはずですが、福岡市では、通級教室では勉強は見ませんと明言されていました。
実際に見学したときも、未就学児の時にやっていた療育をずっとやっていたので、学習支援ではなく、療育をしているわけですね。

じゃあ、小学校に上った後、学習支援はどうやるのか?

まずできることは、環境を整えることなので、難聴学級という少人数クラスをつくるのがベターですね。
この環境を整えるだけでも、学習支援の一環になります。

ただ、本質的には、学習言語を理解していっているかを追っていき、フォローするのが学習支援です。

ここを専門的にやっているところって、全国でも少ないでしょうね。

でも、ここが非常に重要になります。

なぜか?

難聴児は聞こえにくいので、いろんな概念が抜けている場合があるんです。

聞こえないために、一部の概念が入ってない。
これは、その場面に出合うまで入っているかどうかがわかりません。

ちょうど、先月、言語聴覚士さんの「難聴児のための学習支援セミナー」を共催したところで、非常に興味深い事例を聞きました。

ある5年生の子。
数量の概念が入ってないというケースがあったそうです。

聞こえないから、人生の中でその事柄が出てきてなかったり、なじみがなかった事柄に関しては、深く触れてなかったりして、概念が抜けてしまうんですね。

でも、数量の概念が入ってないということは、この子は格別抜けの多かった子なのでは?と思うかもしれません。

ここが重要なポイントで、この子は、テストとかではいつも80点以上取ってくる子で、間違ったところも説明すれば理解できるような子だったようです。

なので、周りからは、できる子と見られていたようです。

でも、この言語聴覚士さんからすると、「抜けが多いな」と思っていたようです。

このあたり、プロではない親とかからすると、80点以上いつも取っていて、間違いも説明すればわかるのであれば、何も問題視することはないとなってしまうでしょうね。

でも、他の数量感覚もなかったり、接続詞があいまいだったり、知らない言葉が多かったりと、専門家から見ると、抜けが多かったようです。

ちなみに、放課後等デイサービスのような専門にやってる人でも見抜けないことはあるようで、子どもの難聴がわかる言語聴覚士自体少ないので、このあたりを見てくれるSTさんは本当に貴重です。

だから、親がそこまでチェックするのは、これは極めて困難だと言わざるを得ないでしょう。
ここは、専門家の力を借りてやるべきところだと思います。


じゃあ、塾はどうでしょう?
塾なら抜けに気づいて修正できるでしょうか?

これは、検証が必要でしょうね。
残念ながら検証できてないので、塾でもOKかどうかはわかりませんが、もし概念が入ってなかった場合、塾の先生がその概念を説明してわかってもらうのは困難でしょうね。

また、一つの概念を説明しだすと、その説明で使った言葉に対して、「それは何?」と重ねて質問が来たりすることもあるようで、「がい数」の説明をするのに2時間ぐらいかかったこともあったようです。

さすがにこうなると、塾では対応は難しいだろうなと思います。

ただ、うちの子の代以降は、あまり大きな抜けがある子には会ってないとも言われていて、早期療育や療育の質の向上、機器の性能の向上の成果もあるのか、この辺がまだ未知ですね。

小さい頃から塾に行っていれば、いろんな概念も入っていっているのか?
思わぬところで入ってないこともあるのか?

ちなみに、うちの子は小1から学習支援をやってもらっていて、今のところ大きな抜けはないようです。

学習支援の成果なのか?
難聴学級も使っているので、その成果もあるのか?
本がずっと好きなので、その効果が大きいのか?

このあたりも含めて、検証してみたいところではあります。

ただ、うちの娘もそうですが、コミュニケーションの取り方とか、考え方とか、そういった部分では、まだまだ「おかしいな」と思うところがあったりもします。

まあこれも、小学校4年生だとそんなものなのか、性格的なものなのか、聞こえないことの影響があるのか、その辺も不明ですが、だからこそ、学習支援をやる意義はあるなと思っています。

ちなみに、概念が入ってない場合、それを言葉だけで説明しようとすると限界があります。
一番いいのは、体験させることですが、これも簡単にできないこともあるし、時間がかかることもあります。
でも、体験させたことは忘れないですね。

言葉だけの説明だと忘れてしまいやすいだろうなと思います。

学校の勉強というのは、言葉を言葉で説明する学習です。
だから、言葉をわかっている必要がある。
概念をある程度わかっている必要がある。

言葉や概念をわかるには体験すること。
五感を使って理解することがいちばんです。

もちろん、学習言語には体験できないこともありますが、これはある程度の概念がわかっていれば、言葉での説明でも理解できるようになります。

だから、小学校に上るまでに、語彙をいくつわかるようになっておく必要があるとか、そういう目安があるんだなと今になってわかりました。

つまずいてから学習支援をしようではなく、
つまずく前に学習支援をして、学習言語を理解できる様になっておいた方が成長を後押しできます。

つまずいてからだと、リカバリーにかなり時間がかかることもあると経験談で聞いています。

テストの点も良ければ大丈夫だと思うかもしれませんが、
言葉をあまり知らないな?
言葉の使い方が違うな
説明を1回ではなかなか理解しないな
など、気になるところがあれば、学習支援をしておくに越したことはないですし、できれば、小1からは学習支援を利用しておいた方がいいでしょうね。

聴こえとことばの相談室 ことのは

こちら、現在は放課後等デイサービスではなく、聴こえとことばの相談室として子どもの難聴がわかる言語聴覚士が個別サポートをしています。
オンライン対応もしていますので、まずはこちらまでご相談ください。

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