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子なしの愚痴、聞いてくれませんか。

この記事は「子供、妊娠」についての内容です。意図せず誰かを傷つけてしまう可能性もありますので、妊活中の方などは閲覧されないことをお勧めいたします。


前回の記事を書いた翌日。母方の祖母の誕生日だったので、メッセージを送った。
御年90歳になった祖母だが、iPhoneの使用は3台目に突入しており、LINEも使いこなす。
結構な頻度でLINEゲームの招待コードが届く。ポイントがもらえるのだとかなんとか。

ということで、お祝いのLINEを送ったところ、ちょうど誕生日祝いで外食にでているとのこと。自分で歩き、外食に行き、普通に物を食べられる。あっぱれ90歳である。
夕方、母からLINEが届く。
「おばあちゃんにLINEありがとう、喜んでたわ」
両親は祖母と同居している。
父方の祖母も健在だが、本人の希望で、祖父が亡くなったあとは高齢者マンションに入居したため、長男である父が同居するという選択はなくなった。
同居している母方の祖母は、いつも父方の祖母に申し訳ないと言うが、父方の祖母は遠慮ではなく、本心で1人気楽に暮らしたいのだと言う。人それぞれ幸せは違うのだ。


母は、祖母が90歳まで健康でいてくれることや、私たち兄妹から順々にお祝いのメッセージが届いたことに「親は元気だし、我が子がいい子に育ってくれてよかった」と喜んでいた。

そして、その流れで届いたLINEに私はため息をつくしかなかった。

「私の子供たちは本当にいい子に育ってくれて、みんな可愛くてかっこよくて愛おしいわ。それぞれ私に似ていたり、お父さんに似ていたり色々だけど、みんな少しずつ似てて可愛くて。自分に似た子を持つって本当に愛おしい経験よ。あなたはあなたに似た子供を見たくない?こんなにも愛おしい存在よ。」


母からすれば、娘への愛を伝える言葉なのだろう。

子供のいない私たちに対して、結婚してすぐの頃は、まだ若いし結婚式とか旅行とか楽しみたいだろうから子供は急がなくてもいいわね。と言っていたが、4年目あたりから「子供作らないの?」を遠回しに聞いてくるようになった。

私は、聞かれるたびに不機嫌になり聞こえたか聞こえないかの声量で「わからない」と返事をし、逃げて誤魔化し続けて5年が経過した。


もちろん考えていないわけではない。
毎日頭が煮え立つほど考えて、考えて、考えた。
その結果、今私たちには子供がいない。

両親や義両親に子供の事を聞かれることが嫌で、実家に帰らず距離をとっていたが、親戚にも職場の先輩にも、職場で出会う患者さんにも何千回と同じ事を言われた。
「お子さんは?」「寂しいわね」「早くできるといいわね」「若いうちに産んだ方が楽よ」「二人はいた方がいいと思うわ」「欲しいと思った時にできるとも限らないからね」

私の職場は、私以外全員が子持ちという令和の時代には珍しい職場だったので休憩時間には常に子供の話でもちきりだった。
患者さんは長期的に関わる高齢の方が多く、ご高齢の方は子供の話をすると喜ぶ。先輩や同期はいつもこっそり、「これうちの子なんです」とスマホの画面を見せては患者さんと楽しそうに話していた。

私はどの患者さんにも「お子さんいないの?そう、早くできるといいわね」を繰り返されるだけだった。

「早くできるといいわね」

そうなのだろうか。

私たち夫婦はとても愛し合っている。
2人で十分で、涙が出るほど幸せな生活を送っている。

こんな完璧な、完成した幸せを手に入れているのに、周囲の人は皆、私たちを不足しているかのように話す。
お子さんは?
早くできるといいわね。
なぜだろうか。

私たちは愛し合って、生涯を共に生きていきたいと思い結婚をした。
子供が欲しくて結婚したわけでない。
2人で完成しているのに。


だからと言って「私たちは子供欲しくありません!作りません!」と周囲に向かって言い放てる話でもない。
だって、この5年はそう思っているけど来月どう思っているかなんて分からない。3年後は今を後悔しているかもしれない。
そんなことは分からないし、分からないから考え続けているのだ。
しかも、不妊治療をしている夫婦も周囲に複数おり、そんな人たちを傷つける可能性がある言葉を自らが発するなんてできない。


全てが本当に本当に嫌になり、毎日悩みすぎて禿げそうになった。だから、仕事を辞め、大金を払ってお気に入りの家を退去し、北海道から九州へ逃げた。

誰も近くにいなくていい。私たち夫婦は、2人で暮らし、2人で考えたかった。SNSで知り合いの出産報告や、第二子妊娠報告も見たくなくてSNSからも離れた。


誰に催促されるわけでもなく、私たち2人が欲しいと思う時が来たら妊活をするかもしれない。
しないかもしれない。


私たちは結婚した時から、色々な可能性を考えていた。「分からない」と言えるように、結婚と同時に2人ともブライダルチェックを受けた。
婦人科にも定期検診に行っている。異常はない。

妊娠を急がなければいけない状況でも、不妊の可能性がある状況でもない事を確認し続けながら「わからない」を選択しているのだ。

これが私たち夫婦ができる最善の「子供を考える」ということだから。


私たち夫婦が結婚した2ヶ月後、親戚が結婚した。
授かり婚だった。30歳で実家暮らし、借金もあり定職にもついていない親戚。その妻となった方も2回ほどお会いしたが、ろくに挨拶もできないような方だった。2人はアムウェイで知り合ったらしい。

私たち夫婦は、計画的に自分たちの幸せをよく考えながら進んできた。


それでも今、その親戚夫婦は両家にとって初孫を産み育てた親孝行な夫婦となっているのだ。4歳児は親戚の癒しとなっているらしい。借金は結婚の際に親が肩代わりしたとかしないとか。


それぞれの幸せがある。


親孝行したくないわけじゃない。
でも私たちの幸せは私たちが決めたいんだ。





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