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「差別主義者」でも黒人を褒められる‐「ゲットアウト」を観て‐※ネタバレ注意


「ゲットアウト」
監督・脚本をジョーダン・ピールが務めた作品。
コメディアンである彼が初監督した作品としても有名になったと思います。

前から観たかった「ゲットアウト」がアマプラ復活した、とのことで
今日はそれを観ることにしました。
そしたら、なんとまあ、引き込まれてしまった笑
思いが出てきすぎてこれはnoteに書こう!となり書きます。
(観た方に向けて書きますので、観たことがない方は何を言っているのかよくわからないかもしれません。ご了承ください。)


「差別主義者じゃない」とは?


私が一番印象に残ったセリフはローズ(主人公クリスの彼女)が言ったセリフ
「父は差別主義者じゃないわ。」というもの。
これ、最初聞いたときは「そんなことないでしょ笑」とただの皮肉だとしか思いませんでした。
しかし、観ているうち、その言葉の本当の意味を思い知らされました。

「差別主義者」とはどのような人のことを言うのでしょうか。
私は、黒人排除等のデモに参加したり、SNSで特定の人種を直接非難する等の、差別的な発言や行動を積極的に行っている人だと思っていました。
ですが、この作品を観て私は差別主義者の定義を
「特定の理由でその人を人として尊重しない人」
だと考えを改めました。

ローズ一家は差別主義者か?

ローズの家族は一見すると確かに差別主義者ではありません。
私の持ってた定義である、デモや直接的な差別発言をしていないからです。
さらには、オバマ大統領を支持し、クリスにも優しく接していました。
これらの行為は一般的な黒人への差別主義者だったら考えられない行動です。

しかし、後半で明らかになってくるのは、ローズ一家は
”素晴らしい”白人の頭脳と、”素晴らしい”、黒人の肉体を掛け合わせることで究極の人間を生み出していました。
その”素晴らしい”肉体(目とセンス)を持っていたので
カメラマンのクリスは選ばれたようでした。

この時、ローズたちは脳のほとんどを除去される黒人たちのことをどう思っているのでしょうか?
深い所で自我は残るから大丈夫、と言っていましたが
彼らを一方的に攫って同意も得ずに処置を勝手に行っているので
彼らのことを何も考えていないですよね?
ローズたちの行動はとてもじゃないけれど、
黒人たちを人間として扱っていません。
彼らを「素晴らしい肉体の入れ物」としか思っていないと思います。
口に出さないだけで。
これらの行動を見ると、この家族は差別主義者ではない、と言えなくなります。

「差別」の意味

ではローズ一家の差別行為とは何でしょうか?
私は、黒人を一方的に入れ物として扱ったことだと考えています。

黒人差別の発言やデモ等の行動をしている人たちは、
黒人のことを同じ人間だと思ってはなく、
肌の色等の本人の自我に関係ないことだけで一方的に排除している、と私は考えます。
ローズ一家も、黒人たちのことを自分たちの都合のいい材料としか思っておらず、
彼らがどんな恐ろしい思いをしても何も思いません。
黒人を人として尊重せず、一方的に傷つける点では、一般的な差別主義者と何も変わりません。
変わるのは、排除しているか、利用しているか、どうか。

ローズ一家は、外に向かって、黒人を排除すべきとは言っていません。
むしろ、黒人の存在を認めている。
しかし、本音では”素晴らしい”肉体を持ってるモノとしか思っておらず、
本人たちの意思を尊重せず、人としても尊重しない。
そんな彼らは立派な「差別主義者」だと私は思います。

自覚の無い「差別主義者」は多くいる

この映画は、自覚の無い「差別主義者」達への警告の映画なのではないか、と私は思いました。
世の中から黒人差別が無くならない理由は
黒人を人として扱っていないことに気付いていない人が多すぎるからだ。
そのようなメッセージがこの映画にあるのではないでしょうか?



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