14.1 三角比(三角比の定義の下準備)
三角比の定義を理解するのに必要な知識は、割合・比および三角形の相似です。これらは数学雑談とこの数学事始めで説明してきました(※1)。なので定義から話すことも出来るのですが、きちんと理解されないのが実情なので初回は復習を兼ねた下準備をします。
このシリーズ14は三角形を利用しての測量が主題です。シリーズ12で学んだ三角形の相似やピタゴラス定理を利用すれば同じようなことが出来ますが、それをスマートにしたのがこのシリーズで学ぶ三角比です。
三角形の相似定理の1つに2角相等があります。だから直角三角形を考えれば1鋭角だけで相似か否かを判断することが出来ます。そこに着目して得たのが三角比で、この「比」は割合のことです。英語ではどちらも ratio です。
2つの三角形が相似ならば対応する辺の比がすべて等しいのですが、同時にその三角形に固有の3辺の比が1つに決まります。具体例を挙げれば特別な三角形の比をみなさんは知っていると思います。30度、60度、90度の直角三角形の3辺の比は1 : √3 : 2 でしたね。これを使って長さを求めることもしてきました。このことを説明しておきます。
2つの三角形△ABCと△DEFが相似ならば対応する3辺の比はすべて等しいので、AB:DE=BC:EF=CA:FE が成り立ちます。そしてこの式は次のように同値変形できます(※2)。
AB:DE=BC:EF=CA:FD ①
⇔ AB:DE=BC:EF かつ BC:EF=CA:FD ②
⇔ AB:BC=DE:EF かつ BC:CA=EF:FD ③
⇔ AB:BC:CA=DE:EF:FD ④
これにより相似な三角形なら3辺の比は一組の固有の値をとることが確認できました。ということは1度刻みに89度までの直角三角形をすべて調べておけば便利そうですよね。実際、それを調べたのが三角比表として存在します(※3)。もっと詳しい0.5度刻みや、さらに詳しい0.1度刻みのもあります。でも現在はアプリなどでもっと詳しく簡単に知ることができます。
いまは1鋭角から3辺の比を考えましたが、3辺の比(実際には2辺の比で十分 (※4))から1鋭角も判ります。
先ほども例として挙げましたが
1鋭角が60度の直角三角形 ↔ 3辺の比は1 : √3 : 2
1鋭角が45度の直角三角形 ↔ 3辺の比は1 : 1 : √2
これはみなさんもよく知っている事実です。 これを体系化したのが次回から本格的に扱う三角比です。▢
※1 割合、比、三角形の相似に下線がありますが、これは該当する数学雑談や数学事始めとリンクされていることを意味しています。
※2~※4はこれより下にあります。
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