29.16 微分の初歩(n次不等式とn次関数のグラフ)
(2024.2.5 例題1解説後の注③を加筆)
n次関数に関する発展的な話を5回予定しています。
1次不等式、2次不等式の解き方を思い出しましょう。1次不等式は不等式の性質を使って代数的にも解けましたが、1次、2次のどちらの不等式も関数のグラフを用いて解くことができました。同様に、n次不等式もn次関数のグラフを用いて解くことができます。だからといって微分してグラフを描けば済むというものではありません。$${x}$$切片が必要だからです。
例題1(基本形)
不等式$${x^3-x^2-2x+2<0}$$を解け。
解答解説 関数$${y=x^3-x^2-2x+2}$$のグラフが描きたいのですが、微分は用いません。$${x}$$切片を用いた描き方を紹介します。
$${y=x^3-x^2-2x+2}$$の右辺の因数分解を試みます。次に進む前に因数分解してみてください。
因数定理を用いて解くのが基本だと思いますが、ここでは別の方法で因数分解してみます。
$${y=x^3-x^2-2x+2}$$
$${=x^2(x-1)-2(x-1)}$$
$${=(x-1)(x^2-2)}$$
$${=(x-1)(x-\sqrt{2})(x+\sqrt{2}).}$$
したがって、$${x}$$切片は$${1, \: \sqrt{2}, \: -\sqrt{2}}$$です。
※ $${x^2-2=x^2-\sqrt{2}^2}$$に気づかなくても$${x^2-2=0}$$を解けば$${x}$$切片は求められます。
これを使えばグラフを描くのはかんたんです。横軸を引いて、3点
$${1, \: \sqrt{2}, \: -\sqrt{2}}$$
を取ります。次に最高次$${x^3}$$の係数の符号はプラスです。ということは十分大きい$${x}$$の値を考えると$${y}$$の値もプラスになります(注③)。
つまり、最後は$${y}$$の値が増加する (右上がり) ということです。
よって次のように描けます:
※ 不等式を解くだけなので縦軸はなくても構いません。
与えられた不等式が$${x^3-x^2-2x+2<0}$$なので、横軸よりも下側となってる部分を見ると、$${-\sqrt{2}}$$の左側、$${1}$$と$${\sqrt{2}}$$の間と分かります。
よって
$${x<-\sqrt{2}, \: 1< x<\sqrt{2}.}$$ ▮
注:①因数分解していますが、目的は$${x}$$切片を求めることです。
②最高次の係数がマイナスの場合は、最後は減少する (右下がり)。
③$${y=x^3-x^2-2x+2}$$が十分大きい$${x}$$の値を考えるとプラスになる理由:
$${y=x^3-x^2-2x+2=x^2(x-1-\frac{2}{\:x\:})+2}$$
と変形したとき、十分大きい正の$${x}$$の値を考えると$${\frac{2}{\:x\:}}$$は1よりも小さくなります。この場合は$${x=3}$$を考えれば十分で、$${\frac{2}{\:3\:}<1}$$です。したがって、$${x-1-\frac{2}{\:x\:}}$$の値は$${x}$$が3以上であればプラスになります。よって$${y}$$の値もプラスになります。もちろん、$${x}$$の値を大きくすればするほど$${y}$$の値も大きくなります。
3次関数、4次関数の基本形は山や谷の連なりです。
3次関数は山と谷が1つずつ、4次関数は最高次の係数がプラスかマイナスかで異なり、プラスの場合最後には増加するので山1つ、谷2つです。マイナスの場合は最後には減少するので山2つ、谷1つとなります。実際に描けば分かるので暗記は要りません。このことを踏まえてグラフを描きます。
練習問題1
次の不等式を解け。
(1) $${x(x-1)(x+1)(x+2)>0}$$
(2) $${x^3-2x+1\geqq 0}$$
(3) $${-x^4-x^2+2\geqq 0}$$
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