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うちの猫は手がかかる〜遺伝病と嘔吐体質〜
ペット——その家庭で、家族の一員のようにかわいがる(小)動物。〔お気に入りの年少者や年下の恋人の意にも用いられる〕【新明解国語辞典より】
我が家の猫は11年前、生後2ヶ月のときにペットショップで購入した。
今ではペットステップを躊躇なく使いこなす立派なおばあちゃんになったが、当時は片手に乗る小さいからだで一生懸命ニーニー鳴く、それはもう目に入れても痛くないほどかわいいかわいい子猫だった。
手乗りの子猫はどんどん成長し、甘えん坊なお姫様に育った。
お姫様は最近、要求の際に片手でトントンしてくる。
私がスマホを触っている時。
パソコンを触っている時。
人をダメにするソファでゴロゴロしている時。
布団で一緒に寝たい時。
外を見たくて窓を開けてほしい時。
トントンと私の注意をひき、透き通ったきれいな声で「ミャ〜」と鳴いて、要求が通ると満足げに目を細め、微笑むような表情になる。
言葉は話せなくても、アイコンタクトとボディランゲージで愛を伝える猫との生活は、日々、大きな幸福感で満たされている。
——しかしその幸福は、飼い主が無知であればあるほど、簡単に失ってしまう危険性と隣り合わせなのだ。
今回は、私がなぜ我が家の猫の食事を手作りに変えたのか、そこに至った経緯と、現在主に与えているレシピをご紹介する。
ペットショップで低価格の子
スコティッシュ・フォールドは、その愛らしい見た目からテレビCMや動物番組でも多く取り上げられ、後に長く続く猫ブームの火付け役となった。
頭にぺたんとくっついた小さな折れ耳が特徴的で、まん丸な顔に大きなお目々、もふっと柔らかそうな体にまるい手足——画面越しに見るその姿は、まさに生きたぬいぐるみそのもの。
スコティッシュ・フォールドの人気は留まるところを知らず、何社ものテレビCMに起用され、見ない日はないほどになった。
世間的に猫ブームが起こる以前、ペットショップのショーケースはほとんどが子犬で占められ、たまに見る子猫の価格は比較的低価格だったと記憶している。
しかし折れ耳のスコティッシュ・フォールドのニーズは高く、当時の子犬販売と同等の価格が相場だった。
その頃我が家では、10年以上一緒に暮らしていた愛猫を進行性の乳がんで亡くし、悲しみに暮れていた。
しこりの発覚からおよそ二か月で花が咲き、そこから4カ月に及ぶ介護生活の中である程度お別れの覚悟を決めていたつもりだったが、喪失のショックが大きく、その子の生前の写真を見ることができなくなった。
しかし失ったぬくもりが忘れられず、いつかはまた猫と暮らしたいと思いながら、私はペットショップの子猫の画像をよく見ていた。
そして、偶然見つけたある子猫の写真に、目が釘付けになった。
今すぐにでもペットモデルとして活躍できそうな整った顔立ちのスコティッシュ・フォールド(生後2ヶ月)は、それはもう視覚の暴力といっても過言ではないほど衝撃的な愛くるしさだった。
次の休みの日、いてもたってもいられず、早速私はその子を迎えるために車で片道一時間半の距離を走った。
スコティッシュ・フォールドは、購入代金+マイクロチップ装填費用、店舗で与えていたものと同じ種類の餌代など諸経費込みで、手出しの相場は20万から30万円にのぼる。
そんな人気の猫種で、しかもペットモデル級に可愛い子が、その店舗ではなんと諸費用込みで136,000円。
勿論、現金一括払いで即座にお迎えした。
そのとんでもない低価格設定の裏側にある問題など、当時の私は知る由もなかった。
問題発覚
手乗りサイズの小さな子猫はたった一ヶ月で、家の中のレイアウトを完全に把握していた。
家の端から端までをドタバタ足音を立て、騒がしく走り回る毎日。
静かになったと思ったら、電池が切れたようにパタンと眠りに落ちる。
深夜の運動会は彼女の日課になっていた。
興奮にまかせてカーテンをよじ登り、タンスの上まで辿り着いて、深夜に「助けて〜」とか細く鳴く声に、何度も起こされた。
賑やかで寝不足続きの、充実した子育て期間。
そんなお転婆だった子が、生後5ヶ月を過ぎたある日、突然走らなくなった。
見た目に分かるような怪我はないが、痛くて走れない様子だった。
うしろからよく観察していると、左後ろ足に体重がかからないように、慎重に歩くようになっていた。
レントゲンを撮ると、関節の凹凸の形が噛み合っていないと言われた。
それから痛み止めの処方のために通院したが、病院にいくら通っても元通り走り回れるほどの回復は望めなかった。
そうなって初めて、私はスコティッシュ・フォールドの悲劇的な遺伝病を知った。
スコティッシュ・フォールドの可愛らしい折れ耳が、先天性の骨軟骨異形成症——つまり、奇形であること。
耳の変形だけではなく、全身の関節に骨瘤というコブを作り、痛みを伴って腫れ上がらせる症状や、心臓肥大などの異常、猫伝染性腹膜炎(FIP)など、重い病気を発生しやすい猫種であること。
恥ずかしながら私は、この子が走れない日が来るまで、何一つ知らないままだった。
スコティッシュ・フォールドの歴史は浅い。
1961年、スコットランドの農場に折れ耳の白猫『スージー』が誕生し、彼女の産んだ子猫たちにもその特徴が遺伝したことから、繁殖が始まったとされている。
しかしその「折り畳まれた小さな耳」は骨の形成不全による病的なもので、一度発症した全身の関節の変形は、止めることも、自然に回復することもできない。
対処療法的に、常に激しく痛み続ける骨を削る手術を繰り返すか、痛み止めを与え続けるか。
あるいは、あまりに残酷すぎる苦痛を永久に止める唯一の方法——安楽死という選択を勧められるほど重症になるケースもある。
そんな遺伝性疾患の歴史を繰り返すスコティッシュ・フォールドは、「スージー」誕生からわずか10年後にGCCF(イギリスの血統猫の登録機関:Governing Council of the Cat Fancy)での登録を禁止され、さらに現在では動物愛護の観点から、スコットランド・ベルギー・オーストリア・アラブ首長国連邦などで繁殖自体を禁止している。
また、2017年7月24日朝日新聞Web「Sippo」の記事に、スコティッシュ・フォールドの繁殖は動物愛護法違反だと掲載されたが、現在もまだ繁殖の禁止には至っていない。
ちなみにスコティッシュ・フォールドは繁殖の際、折れ耳と立ち耳の両親から折れ耳の子猫が生まれる確率は30%程度とされるが、折れ耳の両親から折れ耳の子が生まれる確率は75%に増加するという。
ただし、日本国内においても倫理的観点から、折れ耳同士の掛け合わせは禁忌とされている。
環境省・動物取扱業者が順守すべき動物の管理方法等の細目
第五章・三-イ
動物を繁殖させる場合には、
遺伝性疾患等の問題を生じさせるおそれのある動物、
幼齢の動物、高齢の動物等を繁殖の用に供し、
又は遺伝性疾患等の問題を生じさせるおそれのある
組合せによって繁殖をさせないこと
リンク:https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/nt_h180120_20.html
しかし近年の悪質なブリーディングに関する記事などを見ていると、実質、当時は折れ耳の根強い人気に市場価格は高騰していたため、高額で売れる子猫を一匹でも多く生ませるために、一部のブリーダーは禁忌を犯していたのではないか…。
つい、そんな怖い想像をしてしまうのは、私だけじゃないはずだ。
日本で発行される血統書には、ブリーダーの名前や、両親の生年月日、毛色ぐらいしか記載がなく、血縁関係に発生した遺伝病を知ることはできない。
ペットショップで売りに出された子猫が、確実に安全な繁殖方法で生まれたという根拠はどこにもないのだ。
生体購入の手続きの際も、営業的なペット保険への勧誘や生体保証の説明はあったものの、遺伝性疾患に関する説明はひとことも無かった。
※その後、遺伝性疾患については2019年の法改正により、第一種動物取扱業者へ対面説明が必要な18項目のひとつに義務付けられている。
そして、2014年当時。
うちの子は人気絶頂の折れ耳であったにも関わらず、異常値ともいえる低価格で販売されていた。
販売店側はきっと、どこか問題に気付きながら、価格を設定したのだろう。
——この子には、欠陥があると。
サプリメントとの出会い
「膝の痛み、関節の痛みに。」
テレビをつけているとよく、コラーゲンやグルコサミン・コンドロイチンといったサプリメントのCMが耳に入ってくる。
当時楽天市場でよく買い物をしていた私は、「猫 サプリメント 関節」で検索を繰り返し、ある商品に出会った。
・ドッグダイナー/無添加コラーゲン『骨げんき』
・帝塚山ハウンドカム/天然ビタミンC『clearC(クリアシー)』
無添加が良かったのか、単品ではなくコラーゲンとビタミンCを同時摂取させたのが効いたのかは分からない。
しかし、3ヶ月通院を続け痛み止めを飲んだところで全く走ろうとしなかった子が、驚くことにたった半月ほどサプリメント生活を続けただけで足の痛みを気にしなくなったのだ。
その頃にはもう生後8ヶ月を迎え、体も大きくなったのでカーテンをよじ登ることはなくなっていたが、我が家にはドタドタドタ!!と、猫が走ったとは思えない大きな足音が戻ってきた。
コラーゲン単体でなく、ビタミンCを同時摂取させたのには、理由がある。
美肌に興味を持ったことがある人なら、一度は「ビタミンCの摂取がコラーゲンの生成を助ける」と聞いたことがあるだろう。
猫は人間とは違って元々ビタミンCを体内合成できるが、ビタミンCを多く摂ることでコラーゲンの生成を助け、何かしらの効果を発揮しやすくなるのなら、試す価値はあると思ったのだ。
そもそも水溶性ビタミンを含む天然食材を多少摂取したところで、脂溶性ビタミンとは違い過剰な分は体外に排泄され、健康上のリスクはないはずである。
そして、コラーゲンとビタミンC両方の摂取は、予想以上に素晴らしい効果をもたらした。
痛みはなくなり、全力疾走する姿を取り戻したうちの子は、晴れて通院生活から卒業することができたのだ。
繰り返す嘔吐
猫といえば、よく吐く生き物というイメージがある。
うちの子は春と秋の換毛期になると毛玉をよく吐いてきた。
過去に飼った猫たちはここまで酷く吐くことはなかったが、初めて血統書付きの猫を飼ったことから、この子はそういう弱い体質なのだと思い込んでいた。
確かに、ブラッシングをいくらしても、驚くほどまだ抜ける。
ビロードのようになめらかに密集した柔らかい毛は、その季節になるとまるでマジックのように際限なく抜け続けるのだ。
深夜の運動会の頻度は減りはしたものの、以前のように関節を気にすることもなく元気に2歳の誕生日を迎えた彼女は、いつの頃からか、毛玉以外にも嘔吐を繰り返すようになっていた。
週に一回程度なら問題ないといわれるが、週に2.3回は出る。
換毛期に至っては、1日に2、3回吐く事もあった。
換毛期は毎回食欲も低下して体重も落ちるため、病院でエコー検査をして皮下点滴を打ち、ステロイドの吐き気どめを必ず打って貰っていた。
6歳になる頃、引っ越しに伴い、緊急時に近くに頼れる主治医が居た方が安心だと思い、通院先を近くの病院に変えた。
引っ越して間もなく始まった換毛期の嘔吐に、最寄りの病院に行ってみると、ナチュラル思考とでもいえばいいのか、アンチステロイド思考というべきか……
嘔吐を繰り返すという症状で、内臓の炎症と体重減少に対し、ダイエットフードと、自分が飲むとしても心の準備が必要なほどきつい漢方臭を漂わせる、猫の口には明らかに大きい頭痛薬サイズの錠剤を1日4回飲ませるように処方された。
体調不良から一刻も早く救ってほしい一心で病院を頼ったこちらの心情を無視し、ステロイドは使用を続けるとガンを誘発すると言われ、目の前の苦しんでいる子に緩やかな作用で体に害が少ないからと、激臭を放つ効果不明の漢方薬とダイエットフードで長期的に様子を見て下さいと言われた事がショックだった。
病院の考え方によってこんなにも対応が変わるのかと、予想だにしなかった展開に衝撃を受けた。
その後、医師がオススメしたダイエットフードを食べさせても嘔吐の頻度に改善はみられず、結局、うちの子は臭い漢方薬を持って追いかけ回す私に心を閉ざし、私が眠りに落ちたとき以外は常にベッドやソファの下に隠れるようになった。
体重はみるみるうちに減少していき、すぐに病院を変えることにした。
つぎの病院は患者第一をうたい、夜間休日でも急患に応じるとサイトに書いてあったため受診を決めたが、2度目の受診の際、何故か診察室に先生の子供の同席を求められた。
その後、次の予約日前の定休日に、朝から激しい嘔吐が続いた。
5回目の嘔吐のときにいてもたってもいられず、申し訳ないと思いながら連絡したが、繋がった先は無機質な留守電の音声だった。
なんども吐き戻し、体力も水分も失っていく中で、時間が経つほどぐったりしていく。
そんな緊急性が高い状況でいつ返事がくるかもわからない病院からの折り返し連絡を待つより、即座に頼れるのは最初に通っていた病院だけだった。
切羽詰まった状態で吹き込んだ留守電に対し、病院からは翌日の夕方になるまで一切の応答がなかった。
夜間や休診日も対応するとうたっていたのは、ただの誇大プロモーションだったのだ。
しかし元の病院に戻ったところで、対処療法のみの対応で一時的な回復はできても根本原因は置き去りにしたままで、当然のように嘔吐は続いていた。
ごはんジプシー
うちの子が嘔吐を繰り返してごはんジプシーを始めた頃、言葉を発することができない動物相手だからこそ、見えないところに規制の緩さがあるのではと思い、調べたことがある。
そして調べてみるとやはり、ペットフード産業の怪しい話はわんさか出てきた。
でも、何がよくて何が悪いのかはうちの子の消化能力と相談するしかない事なので、ドライフードの中で、プレミアムフードと呼ばれる有名どころを色々と試していった。
ロイヤルカナンは赤ちゃんの頃から与えていて、ニオイが良いらしく毎回美味しそうに食べてくれるが、どの種類を与えても全滅だった。
ニュートロ・ナチュラルチョイスは、結局チキンが一番好きそうだったが、吐き戻した。
ナチュラルバランスがグレインフリーだから良いと聞き試したが、だめだった。
ブルーのハイシニア向けの商品が最も吐き戻しの少ないごはんだったが、残念ながら日本から撤退し手に入らなくなった。
オリジンは低温調理で、AGESの発生が最も少ない製法でつくられる、ヒューマングレードをうたう商品の中でも高価格帯の品物だったが、うちの子には合わなかった。
そして、気が付いた。
もう、手作りしか無いんじゃないか?と。
手作り食の指南
当時、職場に大型犬を手作り食で育てた先輩が居たため、参考図書を尋ねたところ、快くその本を貸してくれた。
それは獣医師・本村伸子先生の著書、『シッポの「願い』だった。
当時、食事改善を目指すために本から得る知識だけでなく、直接関わる病院でも食事改善の指導が受けられないかと思い、新たな病院を探していた。
すると、比較的近くに食事指導をしている病院がみつかった。
うちの子は、やや人見知り・犬見知り・猫見知りの性質がある。
家に他人があがると、なぜか姿が見える範囲で目を光らせ、パーソナルスペース(半径3m以内)に入ると逃げずに怒る。
怖がりのくせになかなか逃げない、気位の高いお姫様である。
病院では診察台に乗るまでは大人しいが、手を伸ばして来る先生にシャーシャー威嚇するのが当たり前だった。
それがこの病院では、初対面のときから先生に対して一声もあげず、大人しくされるがままになっていた。
確かにこれまで通っていた病院では考えられないほど、先生が仏のように穏やかな物腰で出迎えてくれて、ピリついた気配を微塵も感じさせない。
過去を振り返ってみても、うちの子が威嚇しない先生はこの病院が初めてだった。
そして、念願の手作り食の指導を受けた。
現在、本村伸子先生の著書から得た知識をベースに、病院からの指導内容とミックスして、我が家では自己責任で生肉食を与えるようになっている。
はじめは、カリカリかパウチのウエットフードしか食べた事がないうちの子にとって、生肉というのは驚くほどハードルが高かった。
カリカリ99.99%、生肉1g。
その生肉1gを食べられない。
カリカリしか食べられなくて、結局少しだけ吐き戻したり、大丈夫だったりを繰り返す。
生肉がついたカリカリを食べることに慣れたら、2g、3gと徐々に増やし、食べ物の認識をアップデートしていく。
生の鶏ササミ肉を食べられるようになり、胸肉を食べられるようになった。
ネットでウズラミンチ、馬、ラムなど、色々試したが、馬は苦手な様子で、ラムはにおいが好きなのかよく食べてくれた。
しかし、ネット上のペット用生肉はどれも高額で、時折冷凍焼けを起こした粗悪品や、試供品が好印象で商品を頼むと、見るからに赤茶色に劣化した古い肉が届くこともあり、何度もガッカリすることになった。
そのうちカリカリ0%、生肉100%に移行したが、チキン全般がだめで、嘔吐を繰り返すようになった。
チキンアレルギーだった。
食物アレルギー発覚
市販のドライフードはチキンミールやミートミールといった原料がはじめの方に書いてあることが多く、ドライフードの多くはチキンを使っているということがわかった。
知らないうちに、知らなかったとはいえ、私はうちのお姫様を危険に晒していたのだ。
しかし、魚ベースのフードなら…と考え、低温調理でヒューマングレードと信頼性の高いオリジンの製品を購入してみた。
離乳食のようにお湯でふやかして食べさせたフードは、二時間もするとほとんど未消化のまま吐き戻された。
カリカリはもう身体が受け付けなくなったようで、市販品のフードを与えられない現実に改めて直面したことで、私の中でもようやく諦めがついた。
近年AGESという酸化した糖とタンパク質が結びつくことで、体内で炎症を引き起こし、老化を加速させるという物質が話題になっている。
それこそ、ドライフードの主原料トップ5と調理方法の組み合わせで、立派なAGESの完成である。
うちの子は、どうやら最先端の健康知識を持って接しておかないと、私の無知のせいで傷付き続けてしまうらしい。
カリカリが食べられなくたって、毎日300円の食費がかかったって、元気な足取りで私をストーカーしてくれればそれで良い。
出会ってからずっと、私の生活は彼女の存在に癒され、幸せにして貰っているのだから。
私の中でやっと、毎日ずっと手作り食を続けていく覚悟が決まった。
うちの子が食べられるレシピ
チキンが合わないと判明して病院で相談した結果、生のものを与えているなら人間が生食をして大丈夫な食品を選ぶようにとアドバイスを貰った。
鶏はカンピロバクターが危険で、豚はトキソプラズマが危険、ひとが生食可能な食品があるとすれば、馬か牛か、魚介のいずれかである。
しかし馬肉はネット販売で何度も嫌な思いをしていて、うちの子もチャレンジする度に、いつも「コレ、嫌なんだよね」と言いたげな残念そうな顔をしている。
馬肉は脂肪分が少なくダイエット向きといわれる反面、明らかな脂質不足で、ビロードの毛並みが恐ろしく短期間のうちにバサバサにひび割れを起こした。
体質に合う合わないと、本人の好みに合うかどうかは関係ないようだ。
その後も色々試した結果、現在は主に下記のレシピに落ち着いている。
【1日分の給餌量】
オーストラリア産牛モモ肉ブロック・ローストビーフ用/100g199円/100g
切干大根(もどしたもの)/2g
K9ナチュラル・ラム・グリーントライプorラム&キングサーモンフィースト/3g
オリーブポマスオイル/5g
バイタルプロテイン・コラーゲンペプチド/付属スプーン1/3
帝塚山ハウンドカム・クリアC/0.5g
ドッグダイナー・食べる歯磨き革命/0.5g
【下ごしらえ】
購入した牛モモブロック肉をパックから出して急速冷凍し、カチカチに凍ったら600wのレンジで表50秒、裏20秒あたため、表面が少し硬い半解凍にする
1cm×1cmほどの短冊切りにする
フリーザーパックの中に並べて敷き詰め、真空に近い状態で口を閉じる
再び冷凍し、凍り始めたら4,5切れの塊になるようパキパキ割って冷凍庫に保管する
【レシピ】
耐熱容器を準備し、【下ごしらえ】の状態で冷凍した牛肉を100g出して熱湯を注ぎ、半解凍まで溶かし、お湯を捨てる
キッチンバサミまたは包丁で0.5cm〜1cm角のサイコロ状に切る
K9ナチュラルのフリーズドライフードを小さく砕く
1〜3の材料と各種サプリメントをふりかけ、全体的にかき混ぜる
1日3回に分けて与える
ちなみにサプリメントの項目で紹介した「骨げんき」は、物価高騰の影響を受けて高価になり過ぎたため、継続を諦めた。
そして現在、ネスレがヒト用として輸入販売しているサプリメント、バイタルプロテイン・コラーゲンペプチドを試しに与え始めたところ、手足からミシミシパキパキ聞こえていた不穏な音が、ゼロになった訳ではないが少しだけ軽減した。
血液検査の結果も味も問題ないようなので、時折鮭を焼いて与えたりしながら、現在は主にこのレシピで安定している。
手作り食を始めて、うんちの臭いも、吐き戻す仕草もほとんど無くなったので、うちの子の体調にはとても合っていたようだ。
ドライフードは多くの臨床試験から導き出した、猫に必要な栄養をバランスよく配合していて、嗜好性の高い香り付けや酸化防止剤などの使用で常温保管もでき、飼い主にとっても簡単で便利なのは確かだろう。
しかし、冷静になって考えてみて欲しい。
体質に合わず吐き戻し続ける子に、猫用フードだけが正しい食事だといわんばかりに強制し続ける方が間違いじゃないか?と。
少なくともうちの子は、1日に何度も吐き戻すことは無くなり、炎症や肝臓、腎臓の数値に問題を抱えることもなく、先日無事に11歳の誕生日を迎えることができた。
毎日サプリメント漬けのスナックだけで生涯を過ごさせる事が、本当に最もペットを思いやる食事方法なのだろうか。
人工的な食品添加物やサプリメントがもたらす肝臓や腎臓への悪影響は普段の生活からは読み取れないもので、その上、ペットフードに含まれる添加物が人間が口に入れて大丈夫なのか、本当に危険はないのか、その確証もない。
そもそも、ヒトの食生活に食品添加物が登場し、悪影響が明確になったものから徐々に規制されるようになったのもまだここ100年以内の話で、長期的使用・複数同時使用が人体にどう影響するのかさえ、不明瞭な状態にある。
そんな中、ペットフードに含まれる食品添加物が今後、愛猫たちの体調にどう影響するのかなんて、現状でわかるはずもないのだ。
無知な飼い主は、せっかく出会えた大切な家族との貴重な時間を、無知であるがゆえに短縮してしまうこともあるだろう。
無知であることは、悪意のない罪を生み出す。
そして知識を得ることは、無知だった自分の罪を知り、過去への後悔を生み出すことでもある。
昔飼っていた猫に、安易に低価格な餌を選び続けた結果、10歳そこそこでがんを発症させ失ってしまったことを思い出すと、今更悔やんでも悔やみきれない。
ペットが可愛くて少しでも長く一緒に過ごしたいのであれば、学ぶことが重要なのだ。
それでも、何を選び行動してもきっと、今を一緒に生きているこの子と別れる時には後悔し、自分の至らなさを嘆くのだろう。
最後に
スコティッシュ・フォールドの性格は非常に穏やかで、運動量も少なく猫初心者にも飼いやすいといわれるが、ただ可愛くて飼い主に都合が良いだけではないということが、もう充分に伝わっただろう。
スコティッシュ・フォールドが遺伝性疾患を持って生まれる確率は非常に高く、平均寿命は10〜13年と、ほかの猫の平均寿命12〜15年と比べて明らかに短い。
運動量の少なさも、実は関節にトラブルを抱えていて痛みからかばっているか、動かしにくいせいだと話す獣医師もいる。
そして、骨の問題だけでなく猫伝染性腹膜炎(FIP)や心臓疾患も発症しやすいとされる。
残念ながらスコティッシュ・フォールドから遺伝子疾患をなくす技術もなければ、発症後は進行するスピードに個体差があるだけで、完治する見込みもない。
私たちに唯一できることは、この苦しみの連鎖を断ち切るために、スコティッシュ・フォールドを購入しないこと、繁殖を禁止するよう訴えかけ続けることだけだ。
可愛いからと安易に飼い始めても、病気に長く苦しむこともある。
うちの子も例外なく、いずれは介護も必要になるだろう。
それでも、猫を家族として迎えた方の中でも特に関節痛に苦しんでいる子には天然成分のサプリメントを、嘔吐に苦しんでいる猫ちゃんを飼っている方には、「手作り食」という選択肢があることを知って欲しい。
猫との愛おしい生活の日々は、飼い主の知識とごはん選びによって永く延ばすことも可能なのだと、私は思っている。
そして、知って欲しいことがもうひとつだけある。
動物病院選びはいくつ病院を変わってでも、そこの先生と生涯付き合うか否かを、飼い主側が決めていいということだ。
医師の治療方針に柔軟性がなく、中には「ここでお世話になってきて、今更変えるのは失礼だから…」と義理立てたところで、ペットにも飼い主にも合わない治療を押し付けられるケースもあるのだ。
屋内飼育が当然という風潮が強まった現代、ペットは、飼い主が判断し与える環境の中でしか生きられない。
住まいも、食事も、病院も。
だからこそ、飼い主にはペットの生涯を背負う責任と義務が生じ、お互いが幸せに暮らすためには、正しい知識を身に付ける必要がある。
可愛いわが子と、1日も永くともに過ごせるように。
読了、お疲れ様でした。
私情の多い内容になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
この記事が皆さまのお役に立てたなら幸いです。
現在、WEBライターを目指してポートフォリオ(仮想テーマ)作成中のため、今後もお役に立てるコンテンツ制作を心掛けていきます。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
またお会いできる日を楽しみにしています。