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2024年の、早稲田で過ごした夏

2024年の夏、みんなはどんなふうに過ごした?
花火見た?スイカ食べた?旅行に行った?受験勉強?
それぞれの夏があって、それぞれの思い出があって。
私は何をしてたかというと、演劇をしていました。

それもちょっと変わった環境で。

自分の大学を抜け出して、早稲田大学の演劇研究会というところで、
"新人訓練"というものを受けてきました。

それがどういうものだったのか。そこで何を学んだか。
私の過去の話から、綴っていきたい。

あの子が一番、あの人が上手、自分はここまで。

いつしかそう考えるようになっていった。
中学生のあの頃。何かで一番になりたいと思った。誰にも負けたくなくて、何かに必死にしがみついて、負けたら悔しくて、次は絶対勝つって決めて、悔しさをバネにまた努力して。

高校2年生の時に、負ける悔しさが嫌になって、努力するのが辛くなって、「頑張る」という言葉に、責任を感じてしまった。努力が報われないことを知った。元彼に「俺、負けず嫌いの人嫌いなんだよね」って言われた。流されてしまった。誰かと競争することがストレスだと知った。自分で勝手にラインを決めて、そこまでがんばって妥協する生き方に楽を感じてしまった。負けず嫌いをやめた。だからもう、自分にはあの中学の時の煮えたぎるような闘志がもうないと思った。点滅する青信号も、次でいいやと諦めて、渡らなくなっていた。

大学生になった。メンターにもなって、いろんな世界を知った。一番だけが取り柄じゃなくて、みんな得意なことがそれぞれあって、好きなことに打ち込んでいた。私には”好き”が足りないと知った。エンジニアになるために理学部に入ったけど、それよりもやりたいことを学びたくて、編入して大学を変えた。2年生からの入学。友達関係とかもうなんとなくグループができていて、サークルも年下の子が多くて、なんとなく馴染めなかったから、その分外部の活動を頑張った。声優を志して、自分で養成所に応募して通い始めた。自分なりになんとかやってはみた。メンターや養成所は、挫折することはあったけど、なんとかここまでやってきた。だけど、何かが足りない。なんとなくの充足感。どうしてやりたいことをやっているのに、まだまだ私は足りないんだろう。

お芝居の世界では、誰かの記憶に残るために相当の実力がなければいけないことを知った。周りの人よりも私を見てもらえるように、自分なりの努力をしたけれど、うまくはいかなかった。私には、何かが足りないんだと、そう思った。

この足りない私がもっと私の好きな私でいるためには、どうすればいいんでしょうか。

「学生のうちに、声優になりたい」と、将来のことに焦って活動して、大学生のうちにできることを忘れてはいないだろうか。サークルも友達も、大学の内でしか作れないものを、私は蔑ろにしてはいないだろうか。そう考えた。

クリスマスのメンターのお仕事が終わった大学2年の冬に、何か新しいことをしたいと思った。始めるなら、本当にひたむきに頑張れる、将来につながる、"おもしろいこと"がしたいと。

そうして私は、大学三年の春に早稲田の劇研アトリエの門を叩いた。最初のお試し稽古で血が騒いだ。なんだこれは。感情解放のメニュー、パフォーマンスを意識した身体、負けたら死ぬくらい戦慄の走るシアターゲーム、エチュード、どれもこれもが目新しかった。自分もしかしたら変われるんじゃないかって。ここにもしかしたら、私の足りないものがきっとあるはずと思った。

稽古では常に、面白いことを求められた。先輩たちも周りの新人のみんなも面白い人たちばかりで、私も面白いことをしたかった。最初は難しかった。こうあるべきという自分の思考を何度もぶち壊して、ぶっ飛んだ面白さを生み出さなければいけない。どうすればいいんだろうって悩んで行き詰まって、たまに他の人からも意見をもらって。だんだん稽古を重ねるごとに、一番になりたいと思うようになった。私が面白い人間だということをもっと発信したいと思うようになった。ここは負けたくない、今日はこれをやる、絶対譲れない。と思う気持ちが強くなった。そう、中学生のあの頃の気持ち。"もう誰にも負けたくない"とか、"絶対勝ちたい"とか、自分の中の野心がまた、芽生えていた。次でいいやと諦めていた点滅する青信号も、なんとか追いつきたくて、渡ろうとしていた。

誰にも負けたくなかった。自分の口から「悔しい」っていうのがなんとなく気持ちよかった。ストイックに一番を追い求めることへの辛さが向上心へと変わっていた。今まで養成所で聴くたびに凹んでいたフィードバック。劇研の稽古を通して、次に活かすことへの楽しみになった。

精神的にも辛いと思うことはたくさんあった。昨日までできていたことができなくなったり、周りができているのに私だけできなかったり。

私は本当は負けず嫌いなんだと知った。3位まで決めるというところで残り4人になったとき、気持ちが弱くなって負けやすいことを知った。養成所で周りよりも演技ができていると過信していた分、演技がまだまだなのを知った。食べた方がよかった食事も抜いて、倒れることを知った。高校生の時、たくさん元気だったのに、大学3年になって出来なくなったのを思い知った。全部ひっくるめて私なんだと、この夏の3ヶ月間の新人訓練を経て、そう認識することができた。

個人戦から団体戦へ。9/8の"試演会"という舞台に向けて、今度は全員で面白いを創ることに注力するフェードへ。エチュードを介して、話し合いを介して、周りの人たちのことを知った。私と同じ考えの子もいれば、その観点はなかった!という子もいたり、かつての自分だなぁと思う子もいれば、同じ悩みを抱える子もいた。自分ができないことは、相手の子が得意としていることだったりする。そこからも学び。同じ目標の子から享受されるものはたくさん。大事にしていきたいと思う。

この夏は、舞台上でたくさん生きて、たくさんしんで、たくさんのものを見つけることができました。毎日が冒険みたいだったけど、辞めずに今を生活できているのは支えてくださった先輩、友人、周りの方々のおかげです。本当に感謝申し上げます。

就活以外何か新しいことを始める機会があまりない大学3年生だと思うけど、だからこそ経験して価値のある、忘れることのない、またとない大学3年生の夏休みでした。酸いも甘いも経験しての大学生だからね。この経験値、これからも強みにして前に進んでいこうと思います。いつ始めてもいい、始めたもん勝ち。

あと、たくさんギャグを言ったり考えたりするのがさらに好きになりました。(テックでもたくさん生産してるけどね)目が合った君、勝負しようぜ。

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