住んでみたら面白いこといっぱい
事の起こりは裁判所からの呼び出し。亡母が相続しなかった先祖の遺産の相続手続きを調停で完結したいと叔母からの申し立て。
なんやかや問題があって、母は相続手続きしなかった。その理由は聞いてはいたが、なるべく知らん顔して、自由の身にある私が一人で相続人になった。
祖父の葬式のとき私は15歳、街に育って幼児のときの僅かな記憶しかない。この土地を引き受けたのが65歳。50年間他人が支配した田舎の田畑山林と焼け残りの家屋敷。そこはゴミ屋敷であり耕作放棄地。それに登記してない道路など。
とにかく片付けてみることにした。
まず畑にリーフレタスの種をまいたり、タケノコを掘ったり、うっそうとした竹やぶや雑木林を伐ったり、、、
空気の良いここは体が喜ぶ。
秋には銀杏の実が落ちてくるので洗って食べてみる。
ちょっとしたご縁で収穫物を買い取ってくれる人が現れた。
お隣のご婦人は食べ物や飲み水など差し入れてくださって畑仕事も教えてくださる。
リフォームしてユニットバスとトイレと炊事場のあるあばら家にしてもらって何とか住み着いてセカンドハウス。街とは電車でも車でも2~3時間。
雪が降るからいやだと言ってた母だが、あまり積もらない。せいぜい10cmで3日目には溶けてる。だから畑で冬作ができる。雪の残ってる時は林の雑木を伐る。
雪を知らない私は珍しくて雪だるまを作って遊んだ。
瀬戸内と違ってここは冬の水やりが要らない。毎日のように雲海が発生するような高湿度。農作は絶対裏日本がいい。
夏も水中ポンプで小川から水を吸い上げて畑作に使うと水代が要らない。
昔はこの小川で水車を回して油や粉を挽いていたらしい。今は水量が足りない。
やがて、夏も水やりしなくなった。開墾が進んで広くなっていくにつれ畑の水やりも草取りも追いつかない。草取りしないほうが雑草が生きるついでに作物も枯れない。
結果、作物は小さいし収穫量は少ない。肥料は鶏糞と牛糞たい肥ぐらいで大してかかってないから売り上げが少なくても気にならない。
除草剤は使わない、草に花が咲きそうになったら踏んづけておく。
虫取りも嫌いだからしないし消毒もしない。作物は発芽と同時に虫の餌。実ものの枝も虫だらけ。でも、食べる分ぐらいは草の中から収穫してくる。
コンパニオンプランツというのがあって、相性の良い作物を混植することでよいことがある。
たとえばレタスとキャベツを混ぜて蒔くとキャベツにつく虫が見落とすのかレタスの匂いが嫌いなのか、キャベツはレタスと一緒に育つ。
肥料をやりたくないので 根粒バクテリアを根に生じる豆類とほかのものオクラとか胡麻とかサツマイモとか同じ畝で栽培する。肥料をやらないほうが豆は付きやすいし虫も少ないという。
虫よけになるかとハーブ類を一緒に植えてるとそれも少しは収穫できて販売に供する。
こうして作物が畝にぎっしり育つとその分雑草取りは少し、畔を踏みつけてるだけの夏の草取り。いろんな収穫を兼ねるのであまり負担に感じない。
雑木の山もあるので、そこから落ち葉を取ってきて畑に掛けると日よけ風よけ肥料にもなる。作物の支柱や塀の修理も竹や木を伐って使う。
昔は植林地の木の下にはミツマタを栽培して紙の材料を作っていたそうだ。
茶の木も日陰のほうが新芽が柔らかくおいしそう。
つくし、いたどり、菊芋、よもぎ、山帰来、ウド、畑わさび、フキ、など山菜。
榊やハランや南天など切花材料、椿、山茶花、桃、梅、柿、枇杷、山椒、ぐみ、、、
次から次にと百姓仕事が途切れない。
水田は難しそうなのであきらめて畑にした。
鹿がやってくる。できたのは里芋と生姜と紫蘇ぐらい、垣を作るのに翻弄されて開墾が進まなかった。
そこへもってきてここ2年は雪がどっさり降った。1夜で80cm積もった。これには驚き、ここが雪国だと認識した。が、豪雪ではなくて、峠一つで降雪地域となっている。
何日も家に籠って豆類を干して選別したり、保存食を作ったり。
雪が多いと土が柔らかくなって深く掘れるので高い畝が作れて作付けや収穫がしやすいとわかった。
とにかく遊びに事欠かない。田舎暮らしです。
農業では食べていけないからと言われるが、田舎の年金暮らしは健康にも懐にもよい。
もっと若ければたくさん作るとか加工品を作るとかして収入を増やせるように思う。大企業管理職になって邪魔者扱いされてるようなら田舎暮らし、いいですよ。