このひと月あまり、やっぱりメイケイエールのことを考えている

競馬を見始めて足かけ3年になる。
最近は競馬に詳しい人が周囲にいたことが判明、週1くらいで馬の話をするようになった。
私は馬券を買わない、あくまで推し馬メインで見る人だったのだが、その人は大きいレースでのみだが馬券を買う。なので、競馬に対する見方も私と違う。
あくまで、どの馬が来るか。その馬が決まってるときは、どの馬と合わせるか。
その指針になるのは、もちろん、距離や馬場の適性、血統、ほか、どこの馬(ノーザンとか)か、もあるが、ほかにも、日本人騎手から外国人騎手への乗り替わりとか、マイネル軍団の馬がいつもの騎手じゃなかったりとか、あとは、差し馬の上がりのタイムなども見ているそうである。
この前の宝塚記念でも、スルーセブンシーズを買っていたと聞いて、
「やっぱりドリームジャーニーの子だからですか。騎手は池添やし」
と聞いたら、
「いや、スルーセブンシーズ、前走で上がりが速かったから」
と返ってきた。イクイノックスとなにを組み合わせるかで迷っていたそうで
「ジャスティンパレスが来るとは思ってなかった。ジェンティルドンナやと思ってたからなあ」
配当は全然、だったそうである。

そういう話を折にふれてしていくと、これまであまり興味のなかった騎手のことをいろいろ知るようになった。
知るといっても、だれもが知っていることである。
そこで気になったのが、騎手は騎乗依頼が重なったときは、たいてい強いほうの馬に乗るということである。当たり前か。騎手も勝たなくては強い馬が回ってこないというし。強い馬に乗れなければ勝てないし、勝たなきゃ騎乗依頼も来ない。

ここで思い出したのが、メイケイエールにこれまで乗ってきた騎手のことである。
まず、圧勝したデビュー戦で乗っていた騎手はこのレース限り、二度とメイケイエールに乗っていない。レースで見る限りではあんなに速くて強かったのに。
そして、2戦目とファンタジーステークス、阪神ジュべナイルフィリーズ、チューリップ賞には別の騎手、そして、桜花賞はまた別の騎手が乗り、キーンランドで2戦目からの騎手が再び乗っている。
だが、この騎手も、次のスプリンターズステークスには乗っていない。凱旋門賞と重なったからである。スプリンターズステークスから乗っている騎手が、そこからずっとこのまえの安田記念に至るまで乗ってくれている。
つまり、2戦目から乗っていた騎手は、一度はキーンランドで戻ってくれたものの、二度と、メイケイエールには騎乗していないということになる。
もちろん、今乗ってくれている騎手がいるからというのはあると思う。
でも、もし、メイケイエールが本当に力があるなら、その騎手は、再び騎乗したのではないのか。

そういうことを考えたとき、ふと、あることに思い至った。
メイケイエールはこの先勝てない、とその騎手は思ったのではないか。
今、乗っている騎手も、折り合いさえつけばG1勝てる馬、と言ってくれてはいるが、インタビューで「折り合いはこの馬の永遠のテーマ」とも言っている。なんだか、完全に折り合うことはない、と言っているように聞こえるのは、私のひがみ根性のせいだろうか。

そうなってきて、すごく気になったのは、この前の安田記念である。
もちろん、いつも乗ってくれている、メイケイエールのファンからの信頼も厚いその騎手が乗った。
ただ、その騎手は、昨年、安田記念でべつの馬に乗って勝っている。
そして、今年、その馬が連覇をかけて、またこのレースに出ることになった。
このとき、この騎手は、本当は、強いほうの馬に乗りたかったのではないだろうか。今年、この騎手は、あまり調子がよくなさそうにも見えた。
なんとか、去年勝ったその馬で、もう一度勝ちたい、と思うのは、それは、騎手なら、だれでもそう思うのではないだろうか。
でも、メイケイエールが安田記念出走を決めた。ヴィクトリアマイルの出走をフレグモーネで回避したのが発端だった。あのあと、調子がよさそうだったので安田記念に出してみようとなったのだと思うが、そのとき、その騎手はどう思ったのだろうか。
メイケイエールに乗るのは、その騎手しかいない。去年一緒にレースを制した馬は、だれでも乗るだろうし、ぜひ乗りたい、と思うだろう。でも、メイケイエールに乗りたい、あんな難しい馬に乗りたいと思う騎手は、たぶん、いない。その騎手が乗ってくれないと、メイケイエールは、たとえ走れたとしても、もうレースに出られないかもしれない。

こんなことを思うのは、安田記念を前に掲示板を覗きに行ったとき、
メイケイエール、引退しろ
というコメントを見たからである。ほかにも、安田記念で、その騎手はきっと去年勝ったあの馬に乗りたかったはずだ、ということを書いている人も何人かいて、その騎手がかわいそう、ということだった。
これを見て、なるほど、と思った。
おそらく、その騎手のファンのコメントだろうと思う。
たぶん、その騎手も、もちろん表には出さないが、本心ではそう思ってるかもしれない。そう思うと、なんだか、申し訳ないような、悲しいような気持ちになった。

あの、チューリップ賞に乗った騎手が、もう乗らなくなったのも、この馬はだめだ、と思ったからだろう。その馬を結果的に押し付けられた感じになっている今の騎手は、この前の宝塚記念で、スルーセブンシーズに騎乗し2着に入線した。イクイノックスとは首差、本当に、心を奪われる騎乗だった。人を惹きつけるものをこの騎手は持っている、と思った。
そんな騎手が、メイケイエールに乗っていて、なかなかG1に勝てない。
馬のせいだと、メイケイエールの痛ファンの私でも思う。
もしかしたら、この騎手も、ほかの強い馬から騎乗依頼が来て、メイケイエールと出走が重なったら……そんなことになったらもうメイケイエールに乗ってくれる騎手はいないかもしれない。

そんなふうに鬱々としていたら、突然、メイケイエールからお中元が届くよ、という通知が来た(30人限定)
馬からお中元……そんな突拍子もない情報に、ツイッターでは大盛り上がり、私もなんだかわくわくしてきた。
そうか。メイケイエールには、突然、ぶっ飛び企画をぶち上げてくれるオーナーがいる。
メイケイエールが走りたくても、乗ってくれる騎手がいなくなったら、もうレースに出られない、なんてくよくよしなくても、このオーナーなら、香港スプリントで乗ってくれた騎手を呼んじゃったりもするかもしれない。は?なにを考えてるの、世界一の騎手ですよ、とみんなが思うかもしれないけど、だって、メイケイエールからお中元を届けよう、などと考える方だもの。それぐらい、やっちゃってくれるかもしれない。

そんなやくたいもないことを考えてる間に、さっきの鬱々はきれいさっぱり消えていた。

もう、G1がどうとか、騎手がどうとかは考えないでおこう。
メイケイエール、走っているあいだも、引退しても、その動向がわかるあいだは、ずっと応援しているよ。




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