戦う君の唄を…(メイケイエール)

メイケイエールがBCフィリー&メアスプリント(ダート1400)に出走した。
ダート走ったこともないのに、大丈夫なんだろうか。まず、そう考えた。でも芝だと1000Mらしい。スタート良くないし、ダートでも1400のほうがいいのかな、と思い直して、事前にいろいろな記事や動画を見ていた。

だが、見なきゃよかった。前年の当レースの動画はすごかった。
そのスピードと迫力に震え上がった私は、これはもしかしたら、終始ドベで、追走も満足にできないのでは、と思っていた。
だから、まず、結果を見て、やっぱあかんかったか、と思い、上がっていたレースの動画を見るのも恐かったが、思い切って見てみた。
結果、見てよかったと思う。メイケイエールは、たしかに負けたが、自分が思っていたような完敗ではなかった。

スタートで、メイケイエールは、隣の馬に行く手をふさがれ、出足がつかず、結果的に外を回す競馬になっていた。頭を上げていたようにも見えた。かかっていたのだろうか。ということは、まだ前進気勢があるということか。
足元が慣れないダート、少しの距離ロスも不利だったと思うが、外から位置を上げていっていた。
途中から下がっていったのはしょうがなかったと思う。慣れないダートでいつも以上に消耗があっただろう。でも、ちゃんと走り切った。残っていない足を使って、それほど差もつけずゴールした(馬群からけっこう離されての最下位というイメージを持っていた)
メイケイエールは現地では落ち着いていたようである。調子もよく、飼い葉食いもよかった。もしかしたら、と思わせられそうになったのも事実である。結果は最下位だったが、それは当然といえば当然かもしれない。そんな甘いもんじゃない。それに、たまたま、いろんな偶然が重なって良い順位だったとしたら、それはそれで、あれこれ言われて、もやっとしたかもしれない。実力通りの結果だ。堂々と胸を張って帰ってこれる。

思えば、3歳のころ、初めて見たあのかかり、暴走、にもかかわらず、重賞を勝ったり、G1で掲示板内に入ったり、その力に底知れないものを感じた。あそこからどんな馬に成長するのか、こっちは素人で、勝手に大きな期待をしてきたところはある。

本当は、大変だったのだろう。日本で競馬をするにあたって、最低限のことができていない馬だった。でも、なんとか、工夫をしてレースに出続けてきた。そして重賞に勝って、ちゃんと賞金を稼ぎ、内に宿した激しい本能を矯めながら、競走馬としての仕事を頑張ってきた。
今年のスプリンターズステークスでは、なんとか折り合うようになり、直線で接触があっても、あきらめず、ゴール前ではむしろ伸びていた。その頑張りがあったからの、今回のアメリカダートの挑戦だったのだろう。

暴走の代名詞のように言われ、気性難で扱いが難しいと言われていたメイケイエールは、ここにきてようやく、競走馬としての、本当のスタートに立ったように思う。
もう5歳、力も衰えてきたと一部では言われ、引退、の声も聞こえてくる今になって、やっとここに来た。

もしかして、これはこれですごいことかもしれない。
かつてのメイケイエールのように激しくかかったり、折り合いに問題があって、レースに苦戦している馬は、ちょこちょこ見かける。
その馬たちに、メイケイエールは、一つの道筋を作ったと言えるのではないか。
けっこう走るけど、ここまで折り合いが悪いと競走馬としては無理、の烙印を押されてきた馬も、ちょっと待てよ、あれだけひどかったメイケイエールがあそこまで頑張ってたな、もうちょっといろいろ試してみよう、となり、考えもしなかった馬が、競走馬として思わぬところから頭角を現してくるなんてことも、この先あるかもしれない。

もし、この先、メイケイエールがG1を獲れず引退となっても、これまでしてきた試行錯誤や無謀とも思える挑戦は、決して無駄ではない。データとなり、あるいは数字では表せない記憶となって、未来につながっていくと思う。そう思いたい。

ああ、でも、競馬の神様がもしいるのなら、どうか、メイケイエール、および、陣営、そして鞍上に、最後の最後に、とびきりのごほうびを授けてはくれないか、と、日々、善行に励んでいる今日この頃である。



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