八組家の一族

文化祭用に書いた脚本です。
思いっきり犬神家の一族のパロディです。
採用されませんでした。



【登場人物】
 金田八耕助
 佐清《すけきよ》・謎の生徒
 佐武《すけたけ》
 佐智《すけとも》
 静馬《しずま》・佐清?
 松子
 竹子
 梅子
 先生
 水泳部員
 八組の生徒たち

勢力図

○和室・中
   遺言書を持つ先生。
   先生、手紙を読み上げる
先生「今から、前校長である天野誠氏の遺言を読み上げます」
   先生の周りに座る八組の生徒。
遺言書「ひとつ、北野高校の全財産ならびに六稜魂を意味する北野高校の三種の宝、断郊、縄跳び、水泳は、八組で最も賢い者に実施の権限が与えられるものとす。ひとつ、最も賢い者とは、次の定期試験で総合点が最高であった者である。ひとつ、その者は運動が得意な者であるとす。雲外、蒼天」

○タイトル「八組家の一族」

○和室・中
   ざわめく八組の生徒たち。
金田八「今この中で誰が一番賢い?」
   テロップ「金田八耕助《きんだはちこうすけ》」
梅子「佐武くんよ」
   テロップ「梅子《うめこ》」
佐武「いやあ……」
   テロップ「佐武《すけたけ》」
竹子「佐智くんは?」
   テロップ「竹子《たけこ》」
佐智「どうも」
   テロップ「佐智《すけとも》」
松子「佐清だわ」
   テロップ「松子《まつこ》」
   静かになる和室。
   皆一斉に佐清?を見る。
   不気味なマスクを被った佐清?。
佐清?「……」
   テロップ「佐清《すけきよ》」
金田八「静馬くんが生きてたらな……」
   ×    ×    ×
   インサート、静馬の写真。
   テロップ「静馬《しずま》」
   インサート、事故の写真。
N「佐清と静馬は海外留学から帰る途中、事故に巻き込まれてしまった。佐清は顔に重い傷を負い、静馬は亡くなってしまった」
   ×    ×    ×
松子「静馬くんはダメ、彼は体育ができない。その点佐清はスポーツ万能よ」
竹子「彼は本当に佐清くんなの?」
梅子「彼はラジオ体操第二が得意だったわ」
佐武「だったら証明してみせてよ」
松子「彼は今留学から帰ってきたばっかりで疲れてるの。彼は佐清よ。私にはわかるの」
   松子、佐清と手を繋いで部屋を出ていく。
金田八「怪しいねぇ……」

○校門(朝)(日替わり)
   登校する生徒。
   響くチャイム。

○八組・中
   テスト勉強に励む生徒たち。
   金田八の電話が鳴る。
   金田八、電話に出る
金田八「えぇっ!」

○淀川河川敷
   断郊競走の姿で死んでいる佐武。

○和室・中
   号泣する竹子。
竹子「誰が殺したの!」
佐智「怪しいのは佐清だね」
梅子「あなたが佐清だっていう証明をしてよ」
松子「舐めてるの? 佐清、ほっときましょう」
   佐清?、立ち上がって完璧なラジオ体操第二を行う。
金田八「偽物ではないのか……」

○八組・中
   一人座って考える金田八。
金田八「みんなアリバイはある。誰が殺したんだ……?」
   外から佐清?の声。
佐清?(声)「うぅっ!」  
   教室を飛び出す金田八。

○三年生前廊下
   殴られてうずくまる佐清?。
   逃げる、顔をタオルで隠した謎の生徒。
金田八「おい待て!」
   追いかける金田八。

○校門
   金田八、左右を見渡して
金田八「どこに消えた……?」

○職員室・前
   周りに人がいないか確認する佐智。
   佐智、こっそり忍び込もうとする。
謎の生徒「何をしている!」
佐智「な、なにも」
謎の生徒「お前、試験問題を盗もうとしたな」
佐智「うおぉー!」
   佐智、謎の生徒に殴りかかる。
   謎の生徒と佐智の乱闘。
   佐智、謎の生徒にみぞおちを殴られ失神する。
   謎の生徒、どこかへ佐智を連れて行く。

○ピロティ(日替わり)
   生徒でごった返すピロティ。
金田八「どいてどいて」
   金田八、人混みをかき分ける。
   真ん中には体に縄跳びを巻き付けられ死んでいる佐智。
金田八「断郊ときて今度は縄跳びですか」

○和室・中
   集まる生徒。
梅子「呪いよ!」
竹子「静馬くんの呪いだわ」
金田八「どういうことだ?」
松子「静馬くんはね……」

○(回想)ピロティ
静馬「ラジオ体操がどうしてもできないんだ。コツを教えてくれないか?」
松子「イヤよ」
竹子「なんでそんなこともできないの?」
梅子「北野高校生としての恥だわ。北野の名を汚さないでよ」
   静馬、泣き出す。
   静馬、憎しみのこもった声で
静馬「断郊、縄跳び、水泳で北野高校に復讐してやる」
             (回想終わり)

○元の和室・中
金田八「そんな、呪いだなんて非科学的な」
梅子「でも佐武くんも佐智くんも、静馬くんの言葉通り亡くなってるわ」
佐清?「……」

○八組・中
   松子と佐清?が座っている。
松子「勉強頑張って」
   黙って勉強に励む佐清?。
松子「佐清、私怖い。守ってね」
   佐清にしがみつく松子。
   シャーペンを置く佐清?。
   佐清?、不気味に笑い出す。
佐清「『佐清くん』だって?」
   佐清?、大笑いする。
松子「あ、あなたは、誰?」
   マスクを脱ぎ捨てる佐清?。
静馬「俺? 俺は佐清じゃない。静馬だよ」
   露わになる静馬の顔。
静馬「俺は佐清に代わってこの北野高校を乗っ取ろうとしたのさ」
   松子、驚きで言葉が出ない。
静馬「バカだな佐清と間違えるなんて……」
   松子、そばにあった体育の白靴で静馬の後頭部を殴る。
   倒れる静馬。

○プール(朝)(日替わり)
   登校してきた水泳部員。
部員「え……」
   水面から足が2本突き出ている。

○プールサイド
   集まる生徒。
   陰から見ている謎の生徒。
   引き上げられた死体。
   顔には布が被せられている。
金田八「やはり水泳、か」
   顔を見る金田八。
金田八「し、静馬くん?」
   金田八、何かに気がつく。
金田八「もしかして、もしかして……」
   金田八、ふと気配を感じて振り向く。
   謎の生徒は消えて、誰もいない

○和室・中
   八組の生徒が集まっている。
   遅れて金田八が入ってくる。
金田八「皆さんお集まりいただきありがとうございます」
竹子「いきなり集まれ、って一体どういうことなの?」
金田八「分かったんですよ、この恐るべき事件の真相が。皆さん、全ては偶然の集積でした」
一同「えぇっ?」
金田八「まずはこの方に入ってきてもらいましょう」
   俯いて部屋に入ってくる佐清。

○(回想)プール前通路
   金田八、プールサイドから走ってくる。
   謎の生徒、それを見て少し逃げる。
金田八「佐清くん」
   立ち止まり、顔を隠しているタオルを取る謎の生徒。
   金田八の方を振り返り、顔が露わになる佐清。
             (回想終わり)

○元の和室・中
松子「佐清くん!」
   驚く一同。
佐清「僕が静馬を脅して、二人を殺させたんです。犯人は、僕です」
金田八「いいや君は殺してない」
佐清「いいや僕だ」
金田八「違う。あなたは、静馬に脅された。ある人を守るために」
佐清「違うんだ、僕が殺した」
金田八「ある人。それは……」
松子「私よ」
   一同、松子を一斉に見る。
松子「殺したのは私」
佐清「松子。嘘だと言うんだ」
松子「私が佐武も佐智も静馬も殺したの」
竹子「なんのために?」
松子「そりゃ佐清くんのためよ。佐清くんが北野を受け継ぐため」
佐清「松子……」
金田八「この事件は非常に難解でした。解決するには、謎をひとつひとつ紐解いて行く必要があります」
   ×    ×    ×
   インサート、事故の写真。
金田八(声)「留学生の事故は、佐清くんの過失なのでしょう。だからこそ佐清君は学校に行かなくなり、デマが広がった。こうして静馬くんは彼になりすますことができた」
   ×    ×    ×
○(回想)ピロティ(夕方)
金田八(声)「しかし、それに佐清くんは気付いて話し合いの場を設けた」
   ピロティで話し合う佐清と静馬。
金田八(声)「その時、偶然彼らは見てしまった。松子さんが佐武くんを殺す瞬間を」
   松子、佐智を包丁で刺す。
金田八(声)「そして静馬くんは佐清くんに持ちかけた」
静馬「松子さんのことは黙っておいてやるから、俺のいうことを聞け」

○(回想)淀川河川敷(夕方)
   佐武の死体を断郊の格好で遺棄した佐清。

○(回想)廊下
   マスクを被る佐清。

○(回想)和室・中
   佐清、ラジオ体操第二を披露する。

○(回想)教室・中(夕方)
   佐智、気絶から覚めて起き上がる。
   忍び寄る松子。
   松子、佐智の首を縄跳びで絞める
佐智「うぅ」
   佐智、倒れる。

○(回想)ピロティ(夕方)
   縄跳びを佐智の体に巻き付ける佐清。
   静馬、それを見ながら
静馬「北野高校の体育は、これでもうお終いだ」

○(回想)教室・中
   静馬の後頭部を靴で殴る松子。
   倒れる静馬。
   何度も静馬を殴る松子。
   松子、逃げる。

○(回想)教室・中(夕方)
   佐清、静馬を発見する。

○(回想)プール(夕方)
   佐清、静馬の死体をプールに投げ込む。
             (回想終わり)

○元の和室・中
金田八「そう、この事件は役割が知らず知らずのうちに分担されていたのです」
佐清「僕が悪いんだ」
松子「いいえ、悪いのは私よ」
金田八「殺した死体が消えて、それが別の場所で発見されるなんて。松子さん、さぞかし驚いたでしょうね」
   松子、隙を見て毒薬を飲む。
金田八「毒だっ!」
   倒れる松子。
松子「すけ、きよ……」
   松子、息を引き取る。
金田八「くそっ。天野誠が残していった、六稜魂の呪縛……」
   金田八、頭を掻きながら部屋を出て行く。

○タイトル「八組家の一族」

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