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朗読劇『カナリア~この想いを歌に乗せて~』番外編「ホワイトノート」脚本

はじめに

この作品は、2002年3月12日にザムザ阿佐ヶ谷で行われた、ネットラジオ「声優WAVE」のイベント「何かが発表!? スペシャル」にて上演された朗読劇の脚本で、美少女ゲーム『カナリア~この想いを歌に乗せて~』の外伝的な内容となっております。

外伝とは言っても、『カナリア』の登場人物は斎藤千和さん演じるコンシューマ版追加ヒロイン「星野麻衣」だけで、他の出演者の方々には「麻衣の中学時代の友人」を演じてもらう、という特殊な形式のスピンオフでした。
イベントの出演者に斎藤さんがいらっしゃったので『カナリア』に絡めた作品にすることになったのだと思います。
「改訂版」とあるのは、当初は演劇であることを想定して台詞やト書きを描いていたためで、第一稿完成後に朗読劇形式である旨を聞き、台詞や音響で状況がわかるよう改訂した、ということです。

ドリームキャスト版『カナリア』のパッケージ
後に発売されたPS2版

配役は、
星野麻衣:斎藤千和さん
逢坂聡美:水野愛日さん
智知慮理奈:釘宮理恵さん
久里浜ゆき:那須めぐみさん

脚本上の登場人物は5名ですが、実際の上演版では「柊木美恵子」という役が削られています。この日のイベントのゲストが清水愛さんだったので、当初のオーダがゲストも含めた5人を想定しての発注だったのだと思います。が、ゲストはあくまでゲスト、ということで4人に変更になったのでしょう。僕が書いたのは5人バージョンなのでここに掲載しているのは、実際の上演版とは違う完全版です。当時を思い出して楽しんでいただけましたら幸いです。

先日、『カナリア~この想いを歌に乗せて~』のOVAやドラマCDなどで主人公「八朔洋平」役を演じた松野太紀さんの訃報が報じられました。

カナリアの移植作業は、フリーのシナリオライタになって一番最初に請けたお仕事だったので、僕の美少女ゲームの「主人公キャラ」の基準は洋平だったと思います。松野さんのご冥福をお祈りいたします。

朗読劇『カナリア~この想いを歌に乗せて~』番外編「ホワイトノート」(改訂版)

作:たけうちこうた

【登場人物リスト】

星野麻衣(ほしのまい)……今年、琴平学園に入学したばかりの一年生。演劇部に所属している。明るく元気なのが取得だが、時にそれを凌駕するほどのおっちょこちょいぶりを見せることもある。あがり症を克服するため、目下、修行中の元気娘。大きなリボンが特徴的。
柊木美恵子(ひいらぎみえこ)……琴平学園一年生で、麻衣のクラスメイト。琴平学院(中学)時代からの友人でもある。登場人物の中では平均的な常識担当。性格的にボケかツッコミかと言われればツッコミ。
逢坂聡美(おうさかさとみ)……多度津学園一年生。麻衣や美恵子とは琴平学院時代からの友人。違う学校に進学したため、最近は会っていない。ショートカットで運動が得意だが、特定の部活動には所属していない。性格は、面倒見がよく豪快。手が早いのがタマにキズ。意外と良識派。
智知慮理奈(ちちりょりな)……琴平学院三年生で八朔絵理の同級生。麻衣たちの一年後輩にあたり、彼女たちによくなついている。超猫かぶりで、学内では大和撫子で通っておりもてはやされているが、実際はかなりハジけた性格。大雑把でトラブルメーカ。
久里浜ゆき(くりはまゆき)……いつのころからか琴平に住み着いたスーパーウェイトレス。年齢不詳(おそらく高校二年~三年くらい)。何事もそつなくこなす。ウェイトレスは仮の姿で、実際は某国のスパイではないかという噂もちらほら。

○琴平商店街のとある喫茶店にて

 麻衣が、シャープペン片手にノートとにらめっこしている。

麻衣「うーん。『急に……想い……こんな風に』……。ん、『気持ち』の方がいいかな……? はあ、作詞って思ったより難しいなぁ」
ゆき「お客様」
麻衣「ひゃあ! な、なんでしょう?」
ゆき「コーヒーのお代わりなど、いかがでしょう?」
麻衣「そ、そうですね。お願いしま……あ!」

 カップとグラスの当たる音。
 麻衣、コーヒーカップを誤って落としてしまう。

麻衣「カップが!」
ゆき「む!」

 シュっという空気を切るようなSE。

麻衣「あわわ、ウェイトレスさん、ごめんなさい! コーヒーカップ、落としちゃいました」
ゆき「ふふ。大丈夫ですよ」
麻衣「え? あ、あれ!? 割れてない!」
ゆき「間一髪拾いました」
麻衣「……そ、そうなんですか? すいません」
ゆき「では、替えのコーヒーをお持ちしますね」
麻衣「……お願い……します?」

 ゆき、立ち去る足音。

麻衣「おかしいなぁ……確かに割れたと思ったんだけどナ……? あっと、いけない! 作詞の続き、しなくっちゃ……」

 カランコロンと喫茶店の扉が開く音。
 聡美と理奈が、入って来る足音。

理奈「こんぴらふねふね、おいてにほかけてシュラシュシュシュ~♪」
ゆき「いらっしゃいませ~」
聡美「おい、理奈。お前さぁ、何でさっきからその歌ばっか、歌ってんの?」
理奈「えへへ…。今、クラスで流行ってるんですよ」
聡美「変なクラスだな…」
理奈「こんぴらふねふね、おいてにほかけてシュラシュシュシュ~♪」
聡美「しかも、さっきから同じところばっかり何度も何度も!」
理奈「だってぇ、そこしか知らないんだもん! はい、先輩も一緒に、こんぴらふねふね……」
聡美「ちょっと、黙ってろ」

 聡美、理奈をこづく。

理奈「きゃう……。ったいですよ~逢坂センパイ」

 麻衣は二人には気づいていない。

麻衣「ん~……、『私だって』……『驚いてるよ』と……」

 聡美、麻衣に気づく。

聡美「ん?」
理奈「どうしたんです?」
聡美「あれ、麻衣じゃないか? 星野麻衣」
理奈「きゃう~! 本当だ! 星野センパ~イ!」

 麻衣、二人に気づく。

麻衣「え?」

 理奈、麻衣に駆け寄っていく。

理奈「星野センパァイ、お久しぶりです~。先輩が進学しちゃってから、理奈、寂しくて寂しくて~!」
麻衣「り、理奈ちゃん?」
理奈「そうで~す。琴平学院、校内ナンバーワン美女の智知慮理奈で~っす! センパ~イ!」
麻衣「わ、わかった。わかったから、落ち着いて……」
聡美「何が美女だ」

 聡美、理奈をなぐる。

理奈「いた!!」
聡美「お前のどこをどう解釈したら美女になるんだ?」
理奈「ちゃんとガッコでは猫かぶってるもん!」
麻衣「あれ? 聡美ちゃん……」
聡美「よ、久しぶり!」
麻衣「ひさしぶり~!」
理奈「こう、ね、しゃなり、しゃなりと……」

 理奈、「しな」をつくり、おしとやか口調になる。

理奈「こんな感じでしゃべるんですよ。『あら、ホズミさん、また宿題やってこなかったんですの? では、私のノートを写すといいですわ』みないな感じ!」
聡美「そこ、いいか?」
麻衣「あ、うん」
理奈「って、聞いてないし!」

 聡美、麻衣の座っている席の正面に腰掛ける。椅子、SE。

理奈「無視しないでくださいよ~!」

 理奈、慌てて聡美の隣りに座る。椅子SE。

聡美「琴平学院卒業以来だな。どうだ、元気だったか?」
麻衣「元気だよ。どう、多度津学園の方は?」
聡美「ん~、まあまあかな。ところでさ、こんなとこで、何やってるの?」
麻衣「私? 友達待ってるんだ」
聡美「そうじゃなくて、そのノートに……、まあ、いいか。その待ってる友達って、私も知ってるヤツ?」
麻衣「あ、うん。美恵子だよ」
聡美「ああ、柊木か。あいつも琴平学園だっけ。あいつ元気?」
麻衣「うん」

 ゆきがテーブルの横へやってくる。

ゆき「おまたせしました。コーヒーです」
麻衣「わあ、ありがとうございます」
ゆき「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」
聡美「私は、あ~……、そうだな。アイスコーヒーにするわ。理奈は?」
理奈「えへへ、理奈はねぇ、しょ~ちゅ~!」
麻衣「へ?」
聡美「未成年が焼酎なんて頼むな! しかも、ここは喫茶店だぞ。焼酎なんてあるわけが……」
ゆき「かしこまりました」
麻衣・聡美「はぁ!?」
ゆき「アイスコーヒーと焼酎ですね。少々お待ちください」

 ゆき、立ち去るSE。

聡美「こ、こら、そこのウェイトレス、待て!」
ゆき「はい、何でしょう」
聡美「この店は、未成年に焼酎なんて出すのかよ? そもそも喫茶店に焼酎なんてあるのか?」
ゆき「何をおっしゃいます。注文したじゃないですか。注文されたものはちゃんとお出しするというのが、この店のモットーです。店長からの言いつけなのです。店長の言いつけは絶対です。何が何でもお出しします!」
麻衣「しょ、焼酎っていうのは、冗談ですよ。ねえ、理奈ちゃん?」
理奈「あう……」
ゆき「一度口にした注文は二度と撤回しないのが、真のお客様道。この店では、何人たりとも、その理をやぶること、かないません」
麻衣「真のお客様道……。奥が深い……」
理奈「感心しないでください~」
聡美「じゃあ、何か? 未成年に酒、飲めってのか?」
ゆき「何、バカなこと言ってるんですか? 飲んじゃ駄目に決まってるじゃないですか……」
聡美「バカだと?」

 聡美、席を立つ。ガタンというSE。
 麻衣、必死で聡美を抑える。

麻衣「さ、聡美ちゃん! こんなとこで暴れちゃダメだってば。ああ、すみません、ウェイトレスさん。すみません……」
聡美「でも、注文は覆せないんだろ!?」
理奈「あう~、理奈、アイスコーヒーが飲みたいです……」

 ゆき、冷静な様子で。

ゆき「かしこまりました。アイスコーヒー2つと焼酎ですね。少々、お待ちください」
麻衣「あ、あの……」

 ゆき、店の奥へ行ってしまう。
 唖然とする三人。

聡美「ご、強引な店員だな……」
麻衣「つわものだぁ……」
理奈「あうう……」
聡美「こら、泣くな。ウザいから……」
理奈「理奈、泣かないもん!!」

 聡美、麻衣のノートを見て

聡美「ところでさ、さっきから気になってたんだけどさ、そのノート、何?」
麻衣「え?」
聡美「それだよ、そのノート。さっきから何か書いてるじゃないか」
麻衣「え? あ、ああ、これね。え、えへへへへへ……何でもないの」
聡美「おいおい、顔が何でもなくないって言ってるぞ……」
理奈「落書き帳?」
麻衣「ううん、ち、違うよ……」
理奈「え~、じゃあ、何ですか?」
麻衣「な、何でもいいじゃない。そ、そういえば、昨日の『特攻勇者トライエース』の再放送、見た?」
聡美「ごまかすなよ」
理奈「しゃべってくれないと、中学時代の先輩の恥ずかしい十の秘密、言っちゃいますよ!」
聡美「秘密?」
理奈「えーとですね、星野センパイは、二年生のときぃ、当事陸上部だった一個ウエのセンパイにぃ……」
麻衣「あわわわわわ! 言っちゃダメ!」
理奈「じゃあ、そのノートは何なんですか?」
聡美「言っちゃえよ」
麻衣「う、うん。えーと……、笑わないでね。さ、作詞ノート……なの」
聡美「作詞ぃ? 麻衣、作詞なんてやってんの?」
麻衣「……まあね」
理奈「あー。そういえば、星野先輩のお姉さんって軽音楽部だったんですよネ!」
聡美「へえ。じゃあ、部活でバンドでもやってるとか?」
麻衣「そういうわけじゃないけど……」
聡美「じゃ、何してるんだよ」
麻衣「部活はね、演……」

 店の扉がものすごい勢いで開く。
 ドアベルが、カランカランと鳴る。
 三人、いっせいに入り口を注目。
 美恵子が派手な足音をたて入ってくる。足元がふらついている。

麻衣「美恵子?」
美恵子「う、うう……や、やられた……」

 片膝をつく美恵子。

美恵子「ふ、不覚……」

 そのまま倒れ込み、気絶。

麻衣「キャー、美恵子!」
聡美「おい、柊木……」

 美恵子に駆け寄る三人の足音SE。

美恵子「ううう……」
麻衣「しっかりして、美恵子!」
聡美「おい、柊木! 傷だらけじゃないか。誰にやられたんだ?」
麻衣「ダメ、意識がないよ!」
聡美「くそ! この手口はかなり喧嘩慣れしたヤツの仕業だ。プロか?」
麻衣「理奈ちゃん、きゅ、救急車」
理奈「はい!」

 理奈、店の公衆電話(下手側)に駆け寄ろうとする。
 下手より、ゆきが出てくる。

ゆき「いや、その必要はないでしょう」
理奈「あ……、ウェイトレスさん……」

 ゆき、美恵子に近づく。

ゆき「ちょっと失礼します」
聡美「おい、どうするつもりだ?」
ゆき「ご安心を。ちょっとした応急処置です」

 ゆき、美恵子の両肩に手をおく。そして、

ゆき「ごめん!」

 ゆき、美恵子の背中に刺激をあたえる。
 コキっというSE。
 気がつく美恵子。

美恵子「んん……」
聡美「あ、気がついた……」
麻衣「美恵子~。大丈夫~?」
ゆき「大丈夫ね、傷は浅い。命に別状はないですよ」
美恵子「す、すみません。ゆきさん……」
ゆき「ふふ、礼にはおよびませんわ。お客様は神様ですから」

 ゆき、そう言って一歩引いた場所へ待機する。

理奈「す、すご~い。忍者みたい!」
聡美「な、何なんだ。この店の店員は……」
麻衣「いったい、どうしたの? 美恵子」
聡美「誰にやられたんだ?」
美恵子「商店街を歩いていたら、変な弾き語りの女の人が歌い始めて……」
理奈「弾き語りの女の人?」
麻衣「あ、知ってる。最近、よく見かけるよね」
理奈「うん」
聡美「その弾き語りがどうしたんだ? 殺し屋か何かだったのか?」
美恵子「『私の歌、聴いたんだから、あり金全部置いていけ。命が惜しかったら今すぐ!』って言われて……」
聡美「おいおい、追いはぎかよ。ぶっそうな話だな……」
美恵子「でも、お金は死守したわ。命からがら逃げてきたの」
麻衣「ふう……、良かったねぇ」
聡美「そ、そういう問題なのか?」
理奈「命あっての物種ですもんね!」
美恵子「そうね」

 ゆき、美恵子に近づく。

ゆき「お客様、大丈夫なようでしたら、そろそろご注文を」
麻衣「ひょえー、こんなときでも注文をとるのを忘れないんだ……」
理奈「店員の鑑ですね……」
美恵子「じゃあ、……えーと……。う、うどんを」
聡美「おいおい、いくらなんでも、さすがに喫茶店にうどんはないだろう」
ゆき「かしこまりました」
聡美「あるのか!」

 ゆき、店内の公衆電話(下手)へ向かい、受話器を取りダイヤルをまわす。
 電話のコール音SE。

 プルルルルルル……プルルルルルル……。
 カチャ。

ゆき「あ、囲炉裏庵(いろりあん)さんですか? うどん一丁、ただちにお願いします」
麻衣「注文してるよ……」
理奈「すごいですね」

 ゆき、受話機を置く。
 SE、チン。

聡美「何でもありなのか、この店は……」
ゆき「……震えて待て」

 ゆき、店の奥へ戻っていく(下手へハケる)。
 しばらく呆然と見送る三人。

麻衣「あ………」

 沈黙。

聡美「なあ、あのウェイトレス、何者なんだ?」
美恵子「いや、私も詳しいことは……。遠くから来たとしか聞いてないし……」
麻衣「あ、あの……、えと……座ろうか……?」
美恵子「うん、そうだね……」
聡美「そうだな……」

 テーブルにつく4人。

麻衣「傷は大丈夫なの? 美恵子」
美恵子「うん、もう大丈夫。もともと致命傷じゃなかったし、ゆきさんの応急処置が的確だったから」
聡美「そりゃ良かった。柊木、久しぶりだな」
美恵子「久しぶり~。どうして聡美がここにいるの?」
聡美「偶然だよ。偶然、店に入ったら麻衣がいたんだ」
麻衣「そうなの」
理奈「そういえば、星野先輩と柊木先輩! 待ち合わせって言ってましたけど、2人でこれからどこかに行くんですか?」
麻衣「ああ、うん。カラオケでも行こうかなって思って」
理奈「あ、理奈も行きたい!」
美恵子「別に私たちは、かまわないよ」
理奈「わーい! 逢坂先輩も行きましょう」
聡美「え? 私も?」
理奈「行きましょう!」
聡美「あんまり歌とか得意じゃないんだけど……」
理奈「行きましょう行きましょう行きましょう行きましょう~!」
聡美「ったく、しょうがないな…」
美恵子「ところで、麻衣。作詞の方はもうできたの?」
麻衣「え? うん、だいたいね」
聡美「ああ、そういえば、さっき作詞がどーの言ってたな。何?」
美恵子「ああ、それはね……」
麻衣「わ、言っちゃダメ!」
美恵子「何でもネ……」
麻衣「わー、きゃー、わー!」
美恵子「軽音楽部のぉ、先輩にぃ、すっごくカッコイイ人がいるから、その人のために作詞してるんだって」
麻衣「あ~あ、言っちゃった……」
聡美「マジ?」
美恵子「マジ」
聡美「へ~、あの麻衣がねぇ」
麻衣「あのって何よぉ?」
聡美「『あの』は『あの』だよ」
美恵子「そうそう」
聡美「で? カッコイイの? その先輩」
美恵子「さあ~?」
聡美「見たことないのか?」
美恵子「見たことはあるけど、何ていうの? たで食う虫も好きずきっていうか……」
麻衣「ひどいなぁ……」
理奈「でもでも、好きな人のために作詞だなんて、ロマンチックですねぇ~」
聡美「どれどれ? ちょっとお姉さんにノートを見せてごらん!」

 聡美が、テーブルからノートを取り上げる音。

麻衣「わあ、見ちゃダメ!」
聡美「ふむふむ」
麻衣「う~~~~、ノート返して~~」
理奈「ふむふむ?」
麻衣「理奈ちゃんまで……。もう! まだ完成してないんだからぁ!」
聡美「……何だ。悪くないじゃん」
理奈「わあ、素敵ですぅ」
麻衣「え? そ、そうかな?」
聡美「麻衣の隠れた才能発見って感じ?」
麻衣「え? えぇ?」
聡美「ただのおっちょこちょいじゃなかったってワケだ」
麻衣「一言多いよ」
美恵子「確か、タイトルはもう決まってるんでしょ?」
聡美「ふーん、タイトル、何ていうんだ?」
麻衣「うう……あの……言わなきゃダメ?」
理奈「聞きたいです」
美恵子「教えてあげれば?」
麻衣「(ぼそっと)……ホワイトノート」
聡美「ん? 聞こえないよ」
麻衣「だからぁ…(ぼそっと)……ホワイトノート」
聡美「聞こえないって」
美恵子「演劇部なら演劇部らしく、はっきり言えば?」
理奈「え? 星野先輩、演劇部なの? 意外~」
美恵子「憧れの先輩がいるんだって」
理奈「役者志望なんですか」
麻衣「う、うん」
聡美「へえ~。あの麻衣が役者ねぇ」
麻衣「悪い?」
理奈「わ、悪くはないですけど……」
聡美「いや、いいんじゃないか? 私はイケると思うよ」
麻衣「ホント?」
聡美「嘘ついてどうすんだよ」
麻衣「そっか。そうだよね」
聡美「あくまで、私のフィーリングだけどね。公演とかあったら呼んでくれよ。応援するからさ」
麻衣「うん、頑張る」
聡美「で?」
麻衣「え?」
聡美「この詞のタイトルだよ。何ていうの?」

 麻衣、うれしそうに立ち上がって。

麻衣「えっとね、ホワイトノート!」

 EDテーマ『ホワイトノート』が流れる

FIN


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