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BtoBのSNS運用を成功させるためのアカウント設計について考えてみた

はじめに

前に会社の上司から
"コンテンツ"という表現は定義を明示してから使いなさい」
と指摘を受けたことがあります。あまりにも抽象的だからです。

"コンテンツ"という言葉は本当に便利ですよね。。
思い返せば僕も連発していたことがあったような気がします(笑)

その時からマーケティングの営業活動で抽象的な言葉を使うときは、
何を指しているのか相手と共通認識を持つように気を付けています。

そのうえで、僕はnoteを書いてる最中
"SNS運用"も同じ抽象度の高い表現であることに改めて気が付きました。

なので今回のような抽象度の高いテーマは
できるだけ分解して具体的に書いていくよう心掛けていくつもりです。

このnoteは「SNS運用における"定義"や"設計"の大切さ」
感じるようになる記事です。

SNSはどのように使われている?


最近では「仕事用」「プライベート用」「閲覧用」「発信用」など、
複数のアカウントを持っている方が多い傾向にありますよね。
(経営者やインフルエンサー関連の方は除く)

実は僕もSNSアカウントを発行した当初は各媒体1アカウントしか持っていませんでしたが、今では用途別で複数のアカウントを持っています。

肌感では僕の周囲の人間も複数のSNSアカウントを持ち始めている印象なので、果たして本当にそうなのか?実際に世の中のSNS利用ユーザーの傾向を調べてみました。

ナイル株式会社の調査では、現代のTwitterアカウントを以下の種類に分類できることを発表してます。

「リア垢」:リアルでの知人・友人との交流
「身内垢/裏垢」:ごく親しい人たちのみと交流
「仕事垢」:仕事の関係者との交流
「ネト垢」:本名を明かさず、ネット上でのみ交流
「趣味垢」:趣味嗜好が似ている人だけをフォロー
「情報垢」:情報を収集する目的
「ROM垢」:自分ではつぶやかず、見る専門
「RT垢」:リツイートすることだけが目的

出典:https://www.nomura.co.jp/el_borde/real80s/0045/

持っているTwitterアカウントの種類を教えてください(複数回答)

出典:ナイル株式会社(アプリ紹介サービス「Appliv」調べ)※10代~60代の男女1,328人を対象にしたインターネット調査。2019年6月5日~6月11日に実施。

このようにSNS上のアカウントが利用目的によって細分化されることで、SNS上における統計の精度も上がっていくことは予想できます。

しかし、いかんせん現代の分析ツールではそこまで細かい粒度で分析できるツールはまだ表れていません。

個人的には興味関心のセグメント抽出と合わせて、「CV垢」かどうかを判別できるようにもなってほしい限りです。。

これからの未来でSNSをうまく活用したい企業は、
SNSアカウント設計の段階でどのアカウント属性をターゲットに絞っていくべきかをより考慮しなければならなくなると思います。

企業にとってSNSとはなにか考える


企業にとってSNS運用はひとことでいうと “ブランディング“ だと提唱する
マーケティング担当の方が多いかと思います。

実際僕がお話していたマーケティングの担当者の方もSNS運用をブランディングと捉えている方が多かったのですが、「なるほど、SNSはブランディングか~」と納得することはできませんでした。

しかも、様々なセミナーや本でも結局大事なのは “誰” に対して “どんな“ 
ブランディングを作り上げるか!にたどり着く話が多く…
これは本質なのか?と、ずっともやもやしていました。

そんなこんなで今のSNSに対して核心を突く表現を考えていた毎日ですが、
最近ようやく納得がいく考え方がわかってきました。それは、、

「SNSはコンテンツの1ピースにしか過ぎない」

ここでいう「コンテンツ」とは冒頭でも記載した通り抽象的な言葉ですが、
ここではHP、LP、SNSなど、企業が持っているものすべてを表してます。

少し尖りすぎている発言に見えますが、、、
僕が思うにSNSはあくまで媒体であり販促手法なだけなのであって、
SNSをやれば売れるというわけではないということです。

SNSの活用方法として正しいのは
自社サイト・LP・サービスなどのコンテンツの品質も担保したうえで、
SNS運用でインターネットの外回り営業をかけにいく
イメージになります。

BtoCとBtoBのSNS運用を比較する


僕は過去にSNS運用代行を経験したことがありますが、
伸び悩む企業の大体は「運用の可視化」ができていない状態でした。

自社のブランドイメージとSNSのコンセプトが不一致していたり
ファンが求める情報を継続的に発信できていないことが多かったので、
SNSアカウント運用のマニュアルを作成するよう提案していました。

BtoCのSNS運用の場合は、ターゲットとなるペルソナが決まり次第
定期投稿を始めるケースが多く、結果次第で設計を修正しながら
勝ちパターンをいち早く見つけることが大切でした。

ところがBtoBのSNS運用では力の入れどころが少々変わります。
それは、アカウント設計にあたる部分です。

BtoBの場合はエンドユーザーが1.2段階先に存在するため、
ターゲット選定から複雑な仮説が必要になる
からです。

BtoCであればアカウント作成後のPECTサイクルのスピードが重要でしたが、
BtoBはより細かい設計を行い運用に入らないと全く成果が繋がらないと考えています。

PECTサイクルとは…
P : Profile. (フォローしてもらうためのプロフィール設計・改善)
E : Engagement. (フォロワーのナーチャリングでファン化をさせる)
C : Collection.(投稿の保存によりFF外の発見タブや検索にも表示させる)
T : Traffic line.(投稿を見た人をプロフィールへ誘導する)

石川侑輝(2022) プロ目線のインスタ運用法

SNS設計のジャーニーマップを作成すると以下のイメージになります。

図1

BtoBにあってBtoCにない項目は黄色で囲っている
"同業調査"、"カスタマージャーニー作成"、"テンプレ作成"です。
特に"同業調査"、"カスタマージャーニー作成"は重要になります。

前述にもある通り、BtoBはエンドユーザーに辿り着くまでの
マーケティングファネルが煩雑なため、
的が外れた仮説は全く成果に繋がらない可能性が高くなります。

そのため、より設計部分を細かく可視化していく必要があります。
設計の話に触れずにSNS運用を提案してくる業者には注意が必要ですw

ケーススタディ

なんだかんだイメージを持つには見てもらった方が早いので
実際にアカウント設計のケーススタディをしてみました!

今回はBtoBでも代表的な求人会社を例にしています。
例えばこんな企業 ↓

・アルバイトの求人サービス
・エリアは神奈川県
・ターゲットは学生や主婦
・SNSアカウントからの流入を増やしたい

上記の場合、Instagramのアカウント設計は以下の図になります

図2

図2の①~⑥については以下詳細となります。

①同業調査

自社サービスの立ち位置を可視化することで、
客観的に他社との比較や今後の方針検討ができるようになります。
その際は縦軸と横軸の表を用いて各サービスを配置していきます。

今回は縦軸を「高時給:低時給」横軸を「難易度高:難易度低」で
ポジションを可視化しています。

図2の①を見ると自社サービスは若干難易度が高い求人が多いが、
その分時給が良い求人が多い特徴があることが分かったため、
次からのアクションを失敗することはなくなります。

②ターゲット選定

メインターゲットとなるペルソナシートを作成します。
ターゲットの属性だけでなく、興味関心から性格や思考まで、
特定の人物の購買行動をイメージできるようになります

とはいえ最初は0から設計していくのは難しいので、
競合サービスからロールモデルとなるアカウントを見つけることで
ターゲット選定から投稿の仕方までを参考にして運用しやすくなります

ケーススタディの場合は人材業界のBtoB領域なので以下例になります。

名前:大松恭生
年齢:32
性別:男
家族構成:4人家族の次男で育ち、現在は妻1.子1 の3人家族
業界:運送業界
役職:課長(人事)
入社歴:5年
業務内容:運行管理など配車を組む仕事と採用関係全般
KPI・KGI:2024年問題に向けた配車の整理と人員確保
趣味嗜好:体を鍛える事が好き。腰を痛めてしまってからは軽く続けている。意外とファッションにはこだわりがある。
容姿:童顔で若く見られるのでなめられがち。

③カスタマージャーニー作成

SNS上におけるマーケティングファネルを提示したうえで
ファネル毎に現在の数値を可視化していきます。
例えばInstagramのプロフィールに訪れたユーザーが、
どれだけフォローしたかの割合を確認するには以下式になります。

フォロワー増加数 ÷ プロフィールアクセス数 = フォロワー転換率

※Instagramのフォロワーの増加数とプロフィールアクセス数はインサイトで確認が可能です

ドライバー策定が済んだら初めてカスタマーの心情を仮定し、現状と理想のタッチ施策を考えていきます。
そうすることで数値として浮き彫りになった課題に対する施策を打つことになるので、見当違いの取り組みで終わる可能性を下げることができます。

④プロフィール設定

プロフィールはSNS運用においても重要なポイントの一つとなります。
HPでいうファーストビューにあたる位置になりますので、
ユーザーには一目で以下の3つを視覚的に認識させる必要があります。

「自分はどんな人物なのか」
「誰に対するアカウントなのか」
「何を発信しているアカウントなのか」

基本的なプロフィールの軸が決まれば、あとはターゲットに合わせて発信者のキャラクターを決めればユーザーの違和感はなくなります。

⑤テンプレ作成

Instagramの場合は、投稿内容の統一性が必要になります!
もしも見た目や内容に統一性がない投稿を続けてしまうと、
せっかく興味が沸いたユーザーがアカウントホームに訪れても
他の投稿を見ることでイメージの乖離が出てしまうと
フォローせずに離脱してしまう可能性がありますよね。。

もしある程度クリエイティブのテンプレートがあれば
一貫性のあるアカウントのブランディング構築になるうえ、
定期投稿においては業務工数の削減にもつながるため
テンプレート作成は重要な項目の1つと言えます!

今回の場合、1枚目と最後に載せる画像だけ固定にして、
あとは比較的自由な画像を差し込む形をとる方向性で考えてみました。
表紙となる画像はターゲットに合わせてキャラクターを変更し、
テキストの内容は随時変更する形とします。

⑥初回投稿~定期投稿

ある程度方向性が決まれば、
あとは定期的にネタを考えていく作業とフォロワーとの交流が必要です!

よくあるのが"投稿するだけ"で終わってしまうアカウントです…。
フォロワーが1000人にも満たないうちは、
SNS上で同じ類のアカウントと交流を図り他社やユーザーと
つながる取り組みを実施するのが必須といっていい程大切です。
SNSの世界でもアウトバウンド営業は大事ということです。

今回の求人会社の特徴としては「BtoBtoC」かつ「BtoCtoB」でもあるため、
一定数以上のフォロワー数を確保した1つのプラットフォームを武器としてアプローチしていく流れになるかと思います。

ケーススタディは以上となります。
このように、BtoBのSNS運用ではアカウント設計だけでも
これだけの工数をかけていく必要があります。

まとめ

正直「アカウント設計ってそこまでやる必要ある…?」と思いますよね。。

確かに今までの市場やBtoCならなんとかなるかもしれませんが、
BtoBのSNS運用に限ってはいかに準備~運用を可視化し、
PECTサイクルをスムーズに回すことがポイントになります。
なぜなら組織の意思決定にはいくつもの壁があるからです。

そして今後はSNSのみの力だけではどうにもならない事も認識しておかなければなりません。
SNS、HP、ブログ、対人コミュニケーションを組み合わせた営業活動が、
次世代で成功する営業の秘訣かと僕は思います!

最近より一層、機械化・AI化が進んでいるけど
情報量が20年前の6000倍以上にも及ぶそうです。(今はもっと多いかも)
全部AIに任せれば統計を鑑みてなんとかしてくれるのではないか?と
個人的に思うことも要所要所であります。

ですが、最後に意思決定をするのは機械ではなく人です。

世間一般的に見てまだ人間がAIに勝る点といえば、
人の感情を読み取り、仮説を立てる力だと僕は思っています。

複雑なマーケティングファネルを可視化し、勝ちパターンを見つけていくことができるのはまだ人間しかいないはずなんです。

そして、
なぜか最後は徐々に熱い文章になってしまって自分でも驚いてます…(笑)

とりあえず、BtoBのSNS運用のような複雑な購買プロセスがある施策では
"定義"や"設計"を特に大切にしていくべき
だという気持ちを
今後も忘れずにいたいと思います。

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