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「音楽アーティストのサステナブル」とは

俺は今回、音楽という切り口から新しい挑戦をします。

このnoteは特に、ご自身でアーティスト活動をしている人、そしてアーティストを応援したいと強く思うリスナーの人たちに読んでもらえたら嬉しいです。とても大事なことだから。

「音楽ストリーミング市場での活動」の成熟

俺がnoteを真剣に書き始めるきっかけになったのは、6年前のこれ。

6年という歳月は、デジタル市場にとって全くの別時代。この頃は「DIYで音楽を世の中にリリースする」と言っても、方法が分からない人が沢山いたんじゃないかと思います。

数多に生まれたディストリビューター

アグリゲーターとかディストリビューターと呼ばれる、SpotifyやApple Music、インスタやTikTokに音源を配信してくれる会社もまだ、この当時は日本に数えるほどしかありませんでした。6年経った今、音源を配信代行してくれるディストリビューターは、俺が取引したことある会社だけで5社。もうすっかり定着しきり、各社様々な特色でアーティストを支援してくれる。

ちなみに、今のパートナーはソニーミュージックグループのThe Orchard Japan。チームの皆さんには、本当にいつもお世話になっています。


毎週リリースされる、膨大な楽曲

聞いた話なので正確な数は知らないけれど、音楽業界での口語的常識として、毎週世界では数万曲の新曲がリリースされているそう。

数万曲ですよ?音楽の市場規模、第2位と言われている日本はじゃあ、どんだけの割合を占めているんだって話で。

これだけの新曲が日々リリースされる中、「音楽だけの力で」チャンスを見出され、一気に活動の幅を広げていく機会に恵まれるアーティストって、どれだけの割合で存在しうるのでしょうか。

今、急激に知名度を上げているアーティストの特徴って

・TikTokなどのSNSでバズった
・(元々の実力と集客がしっかりした上で)フェスに出始めた
・(あんまりないけど)タイアップが決まってCMソングや主題歌などになる

という流れがほとんど。特にSNSで話題になったから、というトピックを、音楽の世界で活動しているとすごくすごーく聞きます。メジャーレーベルの新人開発のご担当社の方々も、6年前に比べてSNSをチェックしてDMを送る、という仕事内容が増えたんじゃないでしょうか。


つまり何が言いたいかというと、

6年前に無名の音楽家であったKOTARO SAITOが、
Spotifyやnoteを通じてたくさんのリスナーの方々に出会えるような
「純粋に音楽だけで知ってもらえるような出来事」は、
音楽ストリーミングの市場構造的に、
かなり困難なんじゃないかと言うこと。


悲しいことなんだけど、仕方ない。時代が経過し、ストリーミングで大手所属のアーティストや実績あるアーティストが参入してきたら、これから成長したいアーティストの参入障壁は高くなる。紹介してもらえる、優遇してもらえるであろう椅子の総量は、いつだって概ね一定なのだから。


だから、俺を含むインディー、
特にSNSがそんなに積極的にできないアーティストは、
根本的に活動方針を練り直さなければいけないと思ってる。


結局、アーティスト活動で一番きついのは


資金力なんじゃないかと俺は思います。
収益構造の変化で、初期投資が難しい時代になったから。


音楽ストリーミング市場で数万人のリスナーがいるくらいの知名度で、アーティスト活動単体で生計を立てられているアーティスト、一体どれくらいいるんだろう。

もちろん、俺の周りにいるアーティスト仲間にも、アーティスト活動を主収入源にして、豊かに生活しているであろう人もいます。正直、羨ましい。

正直いうと、俺は音楽活動の収益で生活しているとはいえ、作曲や音楽プロデュース、企業との取り組みでバランスを取っている身。leiftやKOTARO SAITOに懸ける時間や想い、そして生々しい話「投資」と思って妥協なく使う資金からしたら、笑ってしまうくらい赤字です。


アーティストって本来、物凄いことをやっている

「音楽活動」の中でも、「アーティスト活動」を続けている人たちは皆、評価の差、音楽的な実力差に関わらず、日々凄いことをやっている。

「自ら意志決定して発信、発言、完成」している行為自体が、
ある意味"社長業"みたいなもの。
自己資金でアーティスト活動していたら、なおさら。

実際活動し始めると当たり前になって、つい忘れがち。でも、

  1. 人格

  2. 他人にかける言葉の力

  3. 創作力・創造性

  4. 表現力(ライブも録音も全て含み)

  5. 発信力に対する社会的価値

を、全て自分自身でやっている人は、
その価値を金額換算してみてほしいです。
周囲で支える人たち、取引先、そしてリスナーの方々も是非。

アーティスト一人一人が自己分析し、創造性をえぐりながら曲を作り
葛藤しながら人前で自身の想いを語り、奏で、歌える能力。
何より、その作品やパフォーマンスを、公に発信すると「決断する能力」。


これらは社会的に極めて稀少な技能であり、
もっと高い「金銭的な」対価で取引されるべきなんです。


実際、表現をやってみると、めっちゃ分かる「凄み」

俺自身

  1. 音楽を活用する仕事

  2. 音楽をゼロから生み出す仕事

  3. 音楽を人前で表現する仕事

を、番号順に仕事として経験してきました。1と2は、業種の差こそあれど、本質的には社会経験を積んで多くの人が得られるスキルと本質的に変わらない実感があります。音楽を作ることさえも、他のクリエイティブと呼ばれるスキルの磨き方と通じるものがあると思っています。


でも、3の「音楽を人前で表現する仕事」だけは、
そんな簡単に他の業種で磨ける能力ではありません。
本当に。表現者はとんでもないことことをやっています。


一瞬、自分の話を。

俺は35歳を過ぎて歌を始めて、ライブを頻繁に行うようになりました。プロデュースや創作は、プロとして成熟し始めた部分もあると思っています。大きな地盤がある上で、更に深く広い視野を目指して知恵をしぼるフェーズに差し掛かっているつもり。

一方で、表現に関しては2年やってようやく、自分の声や歌が、うっすらと見つかり始めた実感程度(それでも早いと思うのは、教えてくれた人のディレクションと環境のおかげです。)

でも「ちょっと歌えただけじゃ、人の心を動かせる表現はできない」という厳しい現実を自分のライブで実感し、そして毎週金曜日のアロフト東京銀座での皆のライブをプロデュースが学びになっています。

素晴らしいパフォーマンス力を持った皆を紹介したい。


表現 = 途方もない「反復・反省を要する運動」


準備したことがステージに立った時に、
お客さんの熱気、逆に無関心さで真っ白に飛ぶ経験。
それさえ反省会で「準備不足だった」と痛感して撃沈する経験。
撃沈しながら「次はどうしたらもっと観る人が楽しいか」と、もがく経験。


人の心を動かせる人って、
この繰り返しを沢山した人だと、ライブを見ていると思うんです。

才能があるからできることではないんです。完全に、準備した数と失敗した数の「差」なんです。この気づきは、作曲家だけやっていた数年前には皆無でした。やらないと、凄さも難しさも分からない。

アイデアは、ある意味誰にでも産めるチャンスはある。まとめるため、伝えるための論理的思考は、社会人になると挑戦する人が多く、訓練する環境は多い。でも、その磨き上げたアイデアを実際に目の前の人に届ける力に自信がある人って、どれくらいいるでしょうか。

アーティストは、それら3つを自分でやっているんです。稀有な能力で、だからこそ本来、市場価値は高いものなんです。


ただし、アーティスト側にも問題があることも

俺は音楽という切り口で、アーティスト活動と社会人としての業務を行う1人の人間として、客観的にアーティスト主語で物事を考えています。

その大前提で、アーティスト側にも陥りやすい思考や行動はあると思います。それは


文句を言うなら、考えもせず、任せるな。

安易に「その仕事は向いてない」と言うな。


ということ。

成長戦略の立案、予算の交渉やスケジュールの管理など。これらはアーティストにとって「どうありたいか」「そのためにどうすればいいか」の象徴です。単純な創作と表現だけを追求するのは、自らが叶えたい表現を100%で出来ないリスクを容認することに等しい。

そのリスクを認識して、任せる相手を選んでいるはず。仮に文句が出てきた場合も、その種は自分で蒔いた種だったりしますよね。俺の周りでマネジメントがついたアーティスト仲間は、その自覚を持って活動しているから順調そうなんだろうな。

あくまで俺の価値観でモノを言うけれど、俺が知る成果を出せるアーティストは皆、正直で誠意があり、人格者としても素晴らしいです。俺が好きだと思う音楽をやっている人で、社会常識に欠ける人、見たことないです。


もし「その仕事は自分には向いてない」と表現や創作以外を切り捨てる思考の方がいたら、それって「普段、曲やステージでやってる反復と修繕を、やってないってだけのことだよ」と思います。一回しっかりやってみると、できることが多い。その上でどうしても1人じゃ叶わない部分を、他人に依頼することをお勧めします。



最初の結論:前提をもっと疑って良いんじゃないか

大きな投資が伴う挑戦をしたいとしたら。

  • 事務所に入れば、その道のプロが代わりにやってくれる?

  • 予算を出してくれて、良い作品が作れる?

勿論その側面は大いにあるだろうけれど、
今一度考えを巡らせてみてほしい。


そんな優秀なスタッフの方々と仕事したいなら、
自分の資金で、自分が本当にご一緒したい人に、依頼できないか?


と。

その可能性、本当にゼロなんですかね?
俺は、自分にとってそれは全然ゼロじゃないと思えてます。
アーティスト活動で、キャッシュフローが回れば叶うことですから。


・・・長い長い、前提が終わりました(笑)
ここからが、今回のnoteで俺が伝えたいことです。


なぜ今、アーティスト活動を続けるハードルが高いのか

実は答えは超絶シンプルで、さっきも言ったように「資金力」。
大体の場合、これに尽きます。

なぜ資金力が課題になるかというと、

・「売れるの定義」が、「薄利多売な"数量"」に依存しているから

だと俺は思っていて、既存の音楽ビジネスの根本が、

・原盤(音楽でいう、録音物の完成型)をコピーして低い単価で売る
・原盤一個を世界中で聴いて、広告費やサービス利用料を分配する

形だからだと俺は考えています。


売れる = 枚数・再生数という定義について


どうしてCDの値段は概ね一緒なのか?

聴いているのは「原盤」のコピー品だからです。
コピー品はコピー品としての値段しか付けられないから。

どうして、ストリーミングは月に定額で聴き放題なのか。

聴いているのは、納品された「1個の原盤」だからです。
容量の重い原盤データを軽めに変換して、強靭な通信網で
世界中で滞りなく聴けるようにしたからです。
音楽にお金を直接払わず、サービス利用料と広告費が部分的に、
音楽に支払われる仕組みです。


CDだろうが、アナログ盤のレコードだろうが、ストリーミングだろうが。収益の分配方法は違えど、根本的に一個の原盤を「無尽蔵に消費」していることに違いはありません。


つまり、どちらの方法とも、
沢山の人に買ったり再生してもらわないと、制作に投資できない。

ストリーミングが試聴の中心となったことで、1再生で得られる利益はCDなどの盤1枚の利益より桁違いに少なくなりました。アーティストが再生数で版を売るように利益を出すには、一気に多く再生してもらうか長い時間じっくり再生してもらうかの2つ。


前者を叶えられる保証がない場合、
活動初期に後者の形で投資を行うのは難しいんです。


・・・これまでの思考なら。


ストリーミングサービスは、チャンスを作る「広げる場」

SpotifyやApple Music、Amazon Musicなどのサービスは全て
「メディア」みたいな存在だと俺は思っています。

それらのプラットフォームは、
「稼ぐ場」ではなく「広げる場」だと考える。


しかし・・・ストリーミング発の大爆発チャンスが、減っている

市場がすっかり成熟したからです。

もう↓のような競合相手が少ない時代じゃないんです。

Spotifyは特に、大きく「プレイリスト」への舵を切った印象があります。

アーティストがリスナーと出会える場として、2018年当時ものすごくチャンスに恵まれていた「プレイリスト」。そのほとんどが今、リスナーの聴取傾向に合わせてレコメンドする「Personalized(パーソナライズド)」タイプに切り替わりました。僕がKOTARO SAITO名義でチルビート、ピアノソロが毎日世界中で聴いてもらえていた頃と比較すると、

プレイリストに掲載される曲数:増
プレイリスト1日あたりの再生数:大幅減

です。俺だけじゃなく、「プレイリストでの聴取に頼っていたアーティストは」、この現象を感じているはずです。

となると結局、プレイリストに頼らない「よりアクティブに曲を聴いてくれるリスナーとの出会い、絆作り」がテーマになる。

実際にある瞬間から、Spotifyが提供するアーティスト向け分析ツール「Spotify for Artists」では、「セグメント」という機能でアクティブリスナー(プレイリストなど「プログラムされた場"以外"」で曲を聴くリスナー)の数を表示するようになりました。

leiftの、今日現在のアクティブリスナーでいてくれている人の数

Spotifyは、アクティブに聴いてくれるリスナーに重点をおき、アクティブなオーディエンスになってもらうよう働きかけることが重要だと書いています。しかし残念ながら、

アクティブリスナーの方々が、どのエリアのどんな年齢の人たちか、
全く情報が開示されない。この情報だけじゃ、類推の範囲を超えない。

んです。だからSpotify内でよりリスナーの方々と繋がる策は講じきれず、結局Spotify外で出会ったリスナーの方々に「Spotify(もしくは他のプラットフォーム)で聴いてください」と「呼び込む」ことでしか、アクティブなリスナーは増えたりしないんです。

Spotifyだけを事例に挙げさせていただきましたが、これはSpotifyに限った話じゃありません。特定のサービスへの批判じゃないことを強調します。

ストリーミングが成熟し切った今、

音楽ストリーミング(= 動画や画像が中心のSNS以外)単体で
音楽を多くの人にアーティストを知ってもらうチャンスは、非常に狭き門。

です。


2024年 音楽ストリーミング市場への肌感

広げる、チャンスを掴むという点で、leiftとKOTARO SAITO両方で、ものすごーーーーく恩恵を受けてきた人間の1人であることも事実です。

Peel (feat. miida)リリース時のプレイリストカバー
Soda (feat. kim taehoon)とOrangette (feat. 安次嶺希和子)2作連続のプレイリストカバー

俺はチャンスをもらえている割に、
音楽をリリースすること以外の具体的なアクションが不充分。
次に繋げられていないなと、反省しています。

実際にチャンスをもらえている立場で思うのは、

ストリーミングだけで完結もしないし、キッカケにもなりにくい

ストリーミングを「広げる場」として考えるならば、


①広げる場(ストリーミング)

②曲の背景やアーティストの人となりを知ってもらえる場

③アーティストが好きな人たちが集う場


みたいな「好きになってもらうフロー」がイメージできます。


しかし、最近の音楽ストリーミング市場の動きを見ると、


①曲の背景やアーティストの人となりを知ってもらえる場

②アーティストが好きな人たちが集う場

③「ファンベース」を実績に、更に広がる場(ストリーミング)


に映っています。つまり、ゼロイチを産む場ではなく、イチを更に拡大していく場として、音楽ストリーミング市場が存在するように見えています。


ここで、最初と同じ問題にぶち当たる

アーティスト本人の資金力が、


①曲の背景やアーティストの人となりを知ってもらえる場

②アーティストが好きな人たちが集う場


を温めていく過程で、ものすごく大きな課題になります。
特に、すべての工程がDIYの場合は。


曲を作る。
曲を録音してミックスして仕上げる。
SNSを更新する。
MVなどの動画を作る。
ライブのブッキングの営業をする。
ライブのリハや練習を重ねる。
肉体の鍛錬、美容への投資。


普通の社会人の常識では考えられないくらい、アーティストはアーティストとして存続するための労務出資、実額での経費を必要とします。

悲しいけれど、初期段階のアーティスト活動単体で考えると、貧乏暇なしそのものです。音楽の仕事だけ切り取っても、他の仕事をしながらやらないと極めて成立しにくく、他の仕事をしていたら、アーティストとしての発信に時間などの障壁が出てくるものです。


でも俺は遂に、
この思考から抜け出す一歩を踏み出すことにしました!
どういう反応が待つかは正直怖いけど、
でも、やってみるべきだから挑戦します。


音楽家の「成長の仕方」をアップデートしたい

そもそも、音楽の世界で「売れる」「売れた」と言われると

ミリオンセラー!
1億回再生!
5万人動員!

など、

「同じ金額の売り上げ」を、何枚、何回、何人積み重ねるか

が指標になりがちです。


それ以外の「売れた」が存在しない。
結局「より多くの人を巻き込んだら生活できる」図式から
アーティストは解放されることがないんです。


だから、俺は「売れる」の別解を模索したいんです。今回、本当に素晴らしい縁とチャンスを授けてもらえました。


音楽の「定額制」からの解放

CDなどの盤もダウンロード販売も、概ね音楽を聴いてもらうための「商品の値段」は相場が決まっていました。俺は今回、

  • 楽曲を作るために投資した額に準じた「適正価格」を見直す

  • 「適正価格」の妥当性を「丁寧に伝える」

  • 納得いく人だけに買って聴いてもらう

という挑戦をすることにしました。


以降は、その作品や作品の発表方法について。

①通常新譜と異なる「コラボ版」を「限定販売」

まず、ストリーミングで聴ける新譜も、自分的に最高の1曲

つい先日、とても思い入れのあるシングル『Morning』をリリースしました。Spotifyをはじめ、各種ストリーミングサイトで聴いていただけます。本当なら、この曲1曲でnoteを書きたいくらい。でも、曲に全ての想いを込めて歌ったので、是非まずは『Morning』を聴いてほしい。


通常版は、自分の100%の想いを込めて作ったもの。一筆書きで、降りてきたとしか言いようがないメロディと歌詞に導かれ、何度もトラックを検証して余すことなく最高級な楽器やサウンドで仕上げた今作。

過去に「自分の歌が、声が嫌だ」と言っていた俺。今回の歌は、自分の表現がとても気に入っています。歌もまた変なリテイクを重ねすぎず、丁寧に、でもあっという間に録音が終わった作品でした。

だから、今回のnoteで書いている挑戦とは別に、本質的にアーティストとしてとても成長できた実感のある1曲を、多くの人に届けたい。そんな気持ちが、ものすごく強い1曲です。


通常新譜と全く違う、スペシャルコラボな1曲をNFTでリリース

そんな自分100%の「原曲」を、リスペクトしているアーティストに、全く別解釈してもらったら、どんな化学反応が起きるんだろう。

その好奇心を、
前アルバム『Citrus』のリード曲『Orangette』でコラボした
最強シンガーソングライター、
安次嶺 希和子(あしみね きわこ)さんとのコラボで
形にすることが実現しました。

leift 『Morning - 安次嶺希和子 Remix (No Limiter ver.)』

『Morning - 安次嶺希和子 Remix (No Limiter ver.)』は、ストリーミング配信を一切していません。かと言って、いわゆるCDやレコードなどの記録媒体でも販売していません。NFTを付与した「シリアルナンバー入り音源」として、「ドットミューラ」という配信ストアでのみ発売しました。

購入検討は、こちらで。

兼ねてから、NFTやブロックチェーンが為せる音楽の未来について、大いなる可能性と展望を見出してきました。その度に、日本でおそらく唯一であろう「音楽NFTマーケットプレイス」である「ドットミューラ」を紹介してきました。

俺がNFTと音楽の相性について信じている希望は以下のnoteで。

以前noteを書いた頃から進化して、「ドットミューラ」はスマホアプリでも音楽を購入、試聴できるようになりました。

この販売活動で俺は、決して「限定品だから高く買ってよ」みたいなことを言う気はないです。販売価格をサイトで見てもらったら分かりますが、はっきり言います。今までの音源価格とは桁違いに高額です。価格は、1個16,500円(消費税込)です。

でもその価格設定含め、なぜ俺が、いわゆる「フィジカル」「モノ」と呼ばれる記録媒体で楽曲を売らなかったのかにも起因する「未来」が、このリリースに込められています。


製品力に、冷静に値段をつけた

まず、僕が普段国内外のCM音楽のプロデュース・作編曲を引き受ける時の報酬(もちろん具体的な金額なんて言わないけど)、それらを続けてきたことで得た技術は、「1曲100〜250円で売るべきものではない」と自負します。

そして、安次嶺さんの歌声が持つ唯一無二の表現力は、俺がアロフト東京銀座でプロデュースするライブ、彼女の単独公演、先日のりんご音楽祭(残念ながら自分のライブと重なって行けなかったけど)などでも圧巻そのもの。ライブに立ち会った人、全員が息を呑んで、飲み込まれます。

言うまでもなく、これは音楽のプロとしてアーティストに対峙した際「1曲100〜250円で売るべきものではない」です。

更に、俺がleiftやKOTARO SAITOの創作活動で毎日使っている、Roland Jupiter-8、Juno-106、TR-808 & 909、Minimoog Voyager、Prophet-5、KORG KRONOS(初代)など・・・。挙げ出したらもっとある実機シンセの歴史的希少性と何よりもその倍音含む壮大なサウンド。断言するけれど、ソフトシンセとは全くの別世界です。

leiftの作業環境

極め付けに、マイク(今や手の届きにくいほど高額となったNeuman U87ai)、ヴィンテージのマイクプリアンプ・API312(基盤を使ったクローン)、今作で初導入したGui Martin氏によるFETコンプ「LA AUDIO CLASSIC COMPRESSOR(これめっちゃいい)」、極めて稀少かつ立体的なサウンドを産む70年代の名機イコライザー「SIEMENS ELA75-06b(バケモン)」、ソリッドで色付けなく使える「Dangerous Compressor」など・・・。

機材たちと、ファンの方々や仲間から頂いた大切な品々。

電源環境の構築含め、音に対して真摯に(楽しいからなんだけど)向き合ってきて生まれた今の制作状況は、食材や洋服の製造工程で言えば立派な「仕入れ」「備品投資」です。機材の総額を語る気はないけれど、やっぱりこれも「1曲100〜250円で売るべきものではない」です。絶対に。

そして、今の自分の歌声にだって、俺はちゃんと16,500円で販売する価値を感じられています。これだけ豊かな録音機材や楽器、ゲストに囲まれていても、『Morning』という曲の中心は俺の歌声であり、メロディであり、歌詞。今の俺は、ちゃんと自分の歌を信じられるんです。俺の歌に寄り添ってくれた安次嶺さんに、大感謝。


そう確信したからこそ、今回の作品は

誰でもアクセスできるストリーミングの場には置かず、
俺たちの創作者・表現者としての想いや懸けてきた愛情や時間、
そして技術にリスペクトを持ってくれる
「違いの分かるリスナーの方」にだけ

届けるべきだなって思えました。


仕上げ方も、通常のシングルとは違う

今回、(No Limiter ver.)と銘打って販売しています。

今回販売する作品は、各楽曲を横並びで試聴するCDショップやメディア、プレイリストに曲が並ぶストリーミングでの再生事情から解放された、

この1曲を聴くために最適化された作品で、
作者として最も理想的な立体感、
ライブで演奏した時に生まれる最高のダイナミックレンジで

仕上げています。具体的には、

・マスタリングをしない(=他の楽曲と音圧比較をしない)
・ミキシング作業完了時に聴いている「32bit Float / 96,000Hz」で販売

という試みです。他と比較しなくていいから、買ってくれたみんなは、自分の考える理想的な音響環境で、好きな音量で聴いてもらってOKということ。

音楽を作る工程で、最後に「音圧を稼ぐ」という言葉遣いの工程が加わります。それをマスタリングと呼ぶと物凄く語弊があるのだけど、音圧を試聴環境に最適な形に整えるのも、立派なマスタリングの仕事。

でも、今回は他の楽曲とも比較しないし、もしかしたら将来的にドットミューラで「俺が考える理想の試聴環境ごと」曲を売れる日が来るかもしれない。だから、マスタリングはしませんでした。


これからの未来にとっての「高級な音楽体験」

って、こういうことだと思ってます。

例えば、あくまで将来への妄想だけれど

俺ら作り手が作ったミックスを、
聴き手が自由にマスタリングエンジニアに仕上げてもらえる。

横並びで音楽を聴かない、
1曲や1アルバムに没頭する世界を複合的に作れる。

などなど。音楽に投じる金額が高額になればなるほど、現在の常識とは全く別の音楽の楽しみ方って、広がる可能性がとてもあるんです。

こんな未来は、買ってもらう観点において一個の原盤を無尽蔵にコピーしたりシェア・薄利多売型の音楽ビジネスに囚われ続けていたら、絶対に訪れない未来なんです。

「広げる(ストリーミング)ことより、深く聴くための音楽の究極」

そんなチャレンジの第一歩として、ストリーミングでは聴くことができない、特別な楽曲を用意させていただきました。


それ相応の金額をいただいていいと思ってます。
その音楽を聴きたいかは、みんな次第だから。
仕上がりには、勿論自信があります。


一方で、ただ単に音源を高く買ってくれというのは、
流石に第一歩として俺も乱暴すぎると思う。

だから、その「特別な音楽」を、
生で聴いてもらえる最高の環境を用意していただき、作りました。


②特別な音楽作品を、最高のフェスでコラボ

10月4日(金)に、とっても嬉しいニュースが発表になりました。

leift、初めてフェスに出演します!
Music Lane Festival Okinawa 2025です。

とっても可愛いキービジュアル

素敵な縁に恵まれ、出演することが決定しました。
最高の時間にできるよう、夏終わりから淡々と、
準備を進めています。

そんな中、leiftのゲストアーティストとして、
前年に出演した安次嶺希和子さんに客演いただくことになりました。
このショーケースで、『Morning - 安次嶺希和子 Remix 』を披露します。

ミュージックレーンと『Morning - 安次嶺希和子 Remix 』が重なることで、俺らが考える表現は完結します。俺たちの表現に、相応の価値を感じてくれる愛情あるリスナーの方がいたら、是非沖縄まで足を運んでほしい。「leiftさんのRemix、買いました!」ってもし話しかけてくれたら、俺本当に、めっちゃ嬉しいもん・・・。

ライブで音楽を表現するアーティストとしても、このライブまでに更なる進化を遂げて迎えることを約束します。遊びに来てください。


今回の挑戦の先に見据える「未来」

アーティストの成長プロセスの「進化」

音楽ストリーミング市場の変化を書いたところで


①曲の背景やアーティストの人となりを知ってもらえる場

②アーティストが好きな人たちが集う場

③「ファンベース」を実績に、更に広がる場(ストリーミング)


が現在だと所感を話しました。
俺は特に①に「アーティスト本人の資本力」が伴える環境を作りたいです。

①の方法として現在のメインストリームにあるのは、TikTokやインスタを中心としたショート動画SNS。動画を作り差を出し、アーティストとしての品性まで保つ。この知恵を絞ること、何より実行していくことは、本当に大変です。恥ずかしながら、俺は思ったようにできていません。

膨大な時間と労力を伴うその過程で、他の仕事や生計を立てる方法が見出せずに大変な思いをするアーティストだって沢山いるはず。

もしここで、極めて貴重で将来的に高い価値を持ち得る「価値ある音楽作品」を限定的に、高額で販売して買ってもらえたら。1万円の商品を、10人買えば10万円、50人買ってもらえたら50万円の売上になります。(実際には手数料が発生します)

その資金は、アーティストが活動初期に得られる貴重な軍資金になります。途方もない不安が和らぎ、前向きに表現だけに向き合える。堅実なアーティストは、収支の計算を行なってスタッフを雇用できるかもしれない。

こうなると必然的に、

アーティストとして目標を叶えるには自分で考え、
自分で予算を策定して実行する

という、起業家的な精神が必然的に身につきます。


事業としての初期費用が整えば、加速すべきタイミングに
アーティストの意志で積極的な投資が行えるようになるんです。
事務所やレーベルに、ジョイントベンチャーを持ちかけられるんです。


今回は端的に1万円で「音楽の値段を解放する意味」を説明しましたが、アーティストの意志次第で自由に価格設定をしてブランドとしての意味をつけられます。アーティストが、どんな人にどう曲を聴いてほしいかを意志表示できる。これはつまり、


アーティストが作品や表現に、より自由な投資を行える

という意味です。やりたい音楽、意志100%の音楽で「売り上げられる」も、立派な「売れてるアーティスト」像です。

資金を広く届けることに使うもよし、狭くより深く使うもよし。いずれにせよ、そのプロセスがアーティストを救い、より刺激的な音楽を産むための道に変わることは約束できます。

それは自分にとっても必要な、
アーティスト活動と完全並行でやりたい
「アーティストの未来作り」。

具体的なアクションに向けて、
水面下で準備を進めています。発表できるタイミングで、
またnoteを書こうかなと思っています。

挑戦することでしかアップデートは存在しないし、結果がどうであれ「挑戦したことで出会える新たな縁」はあると俺は思ってます。

俺が2018年にSpotifyキッカケで音楽業界関係者、リスナーの方に知ってもらえた時もそうでした。だから、今回も何か、課題意識を強く持った方に出会えるんじゃないかと信じています。


最後になりましたが、俺の要望や難しいであろうワガママに寄り添ってくれた、我が同志・ドットミューラの伴社長、ご縁をくれた山口哲一さん、挑戦の場をくれたMusic Lane Festival事務局の皆さん、そして今回の挑戦に力を貸してくれた、「きわちゃん」こと安次嶺希和子さんに、多大なる感謝を。


leift / KOTARO SAITO





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