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石や土を建築に使うきっかけ

石や土、木といった身近な素材に着目したのは、最初は、コストを下げるためだった。

建築は予算との戦いだ。
昔は、クライアントの要望や自分たちが挑戦したいことを図面に落としこみ、いざ見積もりを取ってみると、予算が大幅にオーバーしてしまうことも多かった。
今は予算管理の仕組みがあるので、予算のズレを誤差程度に抑えられるようになったが、当時はその調整に非常にエネルギーを費やしていた(その分、鍛えられた)。

2017年、福島にある磐梯山のふもとに完成した別荘、「one year project」では、コンクリートの代わりに、近くにゴロゴロしていた、160年前の会津磐梯山の噴火で飛んできた3、4トンクラスの石を基礎に使った。
敷地内に転がっていた石は無料なので、掛かったのは移動させるコストだけ。

そもそも基礎は、建物を基礎の重さで安定させる役割を担う。
3、4トンの大きな石をいくつか並べれば、基礎としては十分だった。
結果、建築コストを下げることができた。

2012年、福島県二本松市と福島市の山間に完成した「CAVE」という住宅プロジェクトでは、敷地に傾斜がついていたため、まず、土地を平らにする必要があった。

土地を平らにすると、大量の土が出る。残土処分だけで相当な費用がかかるので、その土を使って、約6000個の日干しレンガをつくると、建築コストを抑えることができた。
6000個ものレンガは、たくさんのDIY好きが集まって、ワークショップを開催してつくった。

コスト削減を通じて、身近な素材に興味が湧いたことがきっかけで、今では、多くの自然素材や環境について学ぶことができている。

先人は、遠くにある材料で建築をつくるのではなく、きっと、裏山や敷地内にある素材を使って、工夫を凝らし、建築と自然をつなげていたはずだ。

僕らはその哲学を継承し、それでいて、新しい建築をつくり続けようと思います。

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