「森を増やさない」
環境問題の解決策として、「森を増やそう」という言葉を耳にする。
現在、地球上の約31%が森林で覆われているが、35〜40%に増やすことが理想とされる。
実現には、日本の面積の16〜35倍にあたる面積の森林を増やす必要があるという。
しかし、これが本当に最適な解決策だろうか。
なぜここで、「森を増やさない」という選択肢を考えるのか。
それは、森の面積を増やせばいいという単純な話ではないからだ。
重要なのは、「どこに、どのような森を、どれだけ増やすのか」なのだ。
仮に、地球全体が森で覆われたとする。
すると、草原や湿地、砂漠などが減って多様な生態系が失われてしまう。
森林以外の生態系も多くの生物に不可欠で、その消失は生態系全体に深刻な影響を及ぼす。
また、農地が失われることによる食料の問題などもある。
森林の増加が環境問題の解決策であることは確かだが、
無計画に森を増やすことを目指すのは危険だ。それでは真の解決にはならない。
多様な自然環境を守ることも、地球全体のバランスにおいては必要なのだ。
それでは、「増やすべき森」とは何か。
35%〜40%という目標を達成するには、適切な場所で適切な管理が求められる。
適切な場所とは、森林再生に必要な生態系が整っている場所や、土壌の回復が見込める場所のことだ。
「森を増やさない」とは、何もしないことではない。
むしろ、地球全体の環境バランスを見据えた上で、多様な生態系を守りつつ、
森を再生、保全するべき場所を見極める意識的な選択だ。
短期的な利益や簡単な解決策に飛びつかず、長期的な視点での環境保全が必要なのだ。
「森を増やさない」という一見逆説的な選択肢は、
多様な生態系を守りつつ、適切な方法で森を増やし、維持していくこと。
地球全体を見渡す視点を持った上で、自然との共生を目指すための重要な一歩である。