たぶん偶然だけど、僕は必然だと思うことにした。
作詞の仕事がもっと好きになった。
夢中になってる。おもしろい!と心の底から思う。
大切なことはいつの間にかはじまってる。
きっかけをくれたのは、映像作家のエリザベス宮地さん。2年前くらいかな、「今こんな企画を考えてて」とか「この写真は超良いっす」とか。自転車で宮地さんの自宅によく通い、話していた。デジタルメディアのluteで宮地さんがショートドラマを監督することになる。
「主題歌の作詞、お願いしても良いですか?」と言われ、もちろんと即答していた。書いたことないのに。
これは今も強く思うけど、自分のことを信じてくれる人がいること、これほど幸せなことはないなと思う。どうするかなあ…と、夜の時間を抱えて、考え抜いた。後日、宮地さんとぽつぽつ語り合いながらたどり着いた喫茶店。企画書を読み上げていって、うんうんと頷きあった。すごく伝わったなと思えた時、ちょっと涙腺がゆるむ。あの時食べた濃いチーズケーキ、うまかったなあ。
そのドラマに出演もされている白波多カミンさんが作曲してくださって、送られてきたデモ。夜道に聞く。「傷ついて傷ついて私になっていく」というフレーズがサビになった。あの驚きと喜びは何回でも再生できる。
シンガーソングライターの向井太一さんとご一緒した時もそうだった。ロックバンド「クリープハイプ」の宣伝を、言葉を軸にサポートしていることから繋いでもらった縁。一緒に、かたちづくる共作詞の喜び。思いが掛け算されて確かな手応えを掴んでいく。
先日、向井太一さんのライブで曲を聞いた時、思わず手を振り挙げていた。ぐぐっと潜り込んで書いた言葉がみんなに届いていく。すごいな音楽は。本当にすごい。その感覚は、これまで百以上参加してきたライブともまた違って、愛おしくて、たまらなかった。
さらに共作詞をさせてもらった「空 feat. SALU」と「Blue」の2曲。それぞれに思いがある。こうして出来上がっていくんだ。
「ご紹介したい人がいるんです」以前、仕事でご一緒した方からご連絡いただき、お会いしたのが音楽プロデューサーのヤマモトショウさんだった。打合せが終わった後、デスクに戻り、ヤマモトさんがつくられてきた楽曲を聞いていく。次々と。
……すげぇ。
それからずっとリピートして聞いていた。
熱っぽくメールした記憶がある。その後、直接、会い行き、印刷した歌詞カードを見ながら「ここ良いっす!」「ここはどうして?」と止まらずに話していた。思い出してみて、前のめりすぎて恥ずかしい。
そんな話の中、ヤマモトさんから聞いたのが、音楽、とくに言葉、作詞を中心にしたつくる人が集まれる場をつくろうとしている構想だった。「いいっすね」と言いつつ、僕が入りたいくらいだなと内心思っていた。
その場の名前を相談してもらう。音楽で受け取ったうれしい気持ちは、僕の出来ることでちゃんと返したい。だから考えることに迷いはない。それに、生みの親、名付け親、育ての親、親はたくさんいた方がよく育つ。
大量生産・大量消費で、いくつものモノ、そして名前が生まれる最中、 これからの名付けは、そこに意志が込められてなければならない。 ヤマモトさんの、インタビューなど、 可能なかぎり読み漁る。 未来につながる大切なことは、本人も気づかぬうちに過去にさりげなく言ってたりする。発見した言葉をもとに考え、後日、企画書を持っていく。今年の5月のことだ。
その時の企画書の全容はいつかどこかで機会があったら。表紙と、何枚かのページを抜粋してここに。
ロゴスとは、言葉、言語、真理…のこと。哲学を学ばれていたヤマモトさんにぴったりだと思った。「しっくりきました」というヤマモトさんの言葉とともに、「ロゴススタジオ」ははじまった。
その後、6月末のことだ。
新世代歌謡グループ「はやぶさ」の新曲の作詞の相談を受ける。「実は一緒にやりたい人がいます」とヤマモトさんの話をして、そこからトントン拍子に話が進んでいき完成したのが8月にリリースされた「もう行かなくちゃ」という曲だった。
作詞:阿部広太郎 作曲・編曲:ヤマモトショウ
スタジオで立ち会う。言葉が音楽になっていく瞬間は感動する。
遥か遠く先まで続いている道に立たせてもらっているような感覚になる。なんでだろう? と考え続けて、そういうことかと気づく。これまで十年、コピーライターとして「書き言葉、話し言葉」を掘ってきた。そして今「歌う言葉」の入り口を見つけられて喜んでいるのかもしれないなと。
いつの間にかはじまってたことを、大切にするかどうか。
ここに至るまでの数々の出会い、本当のことを言うと、たぶん偶然なんだと思う。一生懸命なヤツがすぐ近くにいたから声を掛けてくれただけかもしれない。でも、おもいきりそっちに惹かれている僕は、必然だと思うことにした。天職って英語でcallingだし。呼ばれてる気がしてる、勝手に。
ロゴススタジオも、いよいよリアルな場がスタート。楽しみで仕方がない。ヤマモトさんのnoteでの連載が教科書的になっているロゴススタジオはこちらに。
音楽の仕事をしたい、歌詞を書きたい、と言っても、そんな簡単にチャンスがある訳ではない。当たり前のことすぎるけれど、これまで通り、出会いを大切にしながら、繋がりたいし、出来ることを贈っていきたい。
10年前に抱いた、広告の言葉、コピーを学ぶことが楽しくて仕方がなかった感覚。今、音楽の言葉、歌詞を学び、思いを巡らせることが楽しくて仕方がない。
もっと学びの場に繰り出そう。そして機会を見つけてつくり続けよう。