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父になっていく

その実感は少しずつ少しずつ。徐々に徐々に。

このコロナ禍で面会も、立ち会いもできなくて、妻と病院に行き、一人で帰り、部屋でぽつんと、祈るようにメッセージを送って。後はスマホに連絡があるのをじっと見ていた。

「うまれたよ!」

こみあげるような、胸がぐるぐるするような感動があった。

はじめて会った時。おそるおそる抱きかかえた時。

ちいさいなあ、すごいなあって。

父になったんだ。
父親になったんだ。

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会社への連絡。役所への手続き。お湯を沸かす。ミルクをつくる。おむつを交換する。洗い物をする。洗濯機をまわす。体を動かすことで、ふわふわした実感が地に足をつけていく。

表情は豊かすぎるくらいに変わる。フィルムカメラでたくさん撮りたい。今を残しておきたい。すやすや眠る横顔を見て思う。

あっちこっちに戸惑い、振り回されながら一緒に幸せになっていきたい。

約10年前、先に父になった親友が連絡をくれた。

「いろいろはじまるね、大変で最高の日々が!」

がんばるぞー!(そして、たのしむぞ)

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阿部広太郎
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