僕たちの仕事は仮説でできている 白岩玄さんと話したこと
はじめに。
2014年7月5日(土)に宣伝会議のコピーライター養成講座で、 作家の白岩玄さんと対談する機会を頂きました。そこでの話がこれからの自分の仕事の、大切な指針になる気がして。まとめました。 だれかのなにかの気づきに繋がれば嬉しいです。
まず対談にあたり、白岩さんの対談記事を読みふける。
この糸井さんとの話は、2009年の話なのに新しい。
白岩玄さんの著書「R30の欲望スイッチ」を研究し、ここから話すテーマを決めていきました。
▼テーマ「僕たちの仕事は仮説でできている」
物語を書く仕事も、広告をつくる仕事も、こういったら伝わるかな、振り向いてもらえるかなと、仮説を立てて、気持ちをいちいち丁寧に想像していくことに尽きる。いい仮説からいい表現、そしてヒットが生まれるはず。
▼「R30の欲望スイッチ」を書こうと思ったのは?
ヒットから逆算してR30世代の欲望を浮き彫りにする本書。書くに至る経緯としては。ヒットするということに関心があった。「野ブタ。をプロデュース」がブレイクした時、松本人志さんまで言及。自分のノートに書いたことがここまで届くのか。という新鮮な驚きと興奮があった。
▼「ヒット」する感覚は涙が出そう。
「今でしょ!」が流行った時。番組、芸人、CM、色んな人に真似されていく。ラーメン屋で隣の親子が、なかなかご飯を食べない女の子に対し、親が「いつ食べるの?」といって「今でちょ!」と言って食べ始める女の子を見て、広告からここまで届くのかと涙が出そうになった。
▼時代の空気をひとつかみにしよう
僕は白岩さんの「時代の空気をひとつかみにする」力が凄いと思った。たとえばなぜ嵐がブレイクするのか?なぜ日本でアイドルが根強いのか?なぜFacebook,Twitterは流行るのか?そこに対する仮説をひとつかみに言葉にする力が凄まじい。(気になる方は本書で是非)
▼いまの時代の空気感について
他者とのやりとりの中で、「快」と「不快」の二軸ですべてを考えるようになっているのではないか、と白岩さん。不快と感じるものには完全にシャットダウンしてしまうような。目に見える物、その感覚ですべて判断するような空気感。
▼どんどんキャッチーな時代へ
どんどんキャッチーになっている、と僕。釣りタイトルの現象も。咀嚼する力が弱まっている。まとめサイト、キュレーションメディアが必要とされるのも、素材の調理(噛み砕く)をしてくれる人がいないと見られないから。時代の情報量は増えた。けれど、人間の思考量は落ちてるかも。
▼振り向いてもらうキーワード。
「純度の高さ」「熱量の大きさ」熱く語れる人をどれだけ増やせるか。自分自身がまず熱く夢や志を語れないといけない。体育会系の人間になれということではない。広めたい、好きなものをどれだけ深く思考し、伝えられるか。
▼「好き」を仕事にするために。
自分なりに検証する。仮説を立てる。なぜ好きか。似たものはないか。例えば歌をヒットさせたいなら、BUMP OF CHICKENの「天体観測」がなぜヒットしたか、自分なりに仮説を持つ。成功事例の「仮説」を応用する。
▼最近気になるコンテンツ。白岩さん「ファミレス」。
ファミリーレストラン。しかし今や、友達同士だったり、受験勉強だったり様々な用途で使われてるのが面白い。 どこかにご飯に行く時、ファミレス「が」いいとは、中々いわない、ファミレス「で」いいとは言う。
「が」と「で」の話。叙々苑「で」いいとは絶対に言わない。実は「が」より「で」の方が強いのではないか。(みんなのものになるためには)世の中で『◯◯「で」いい』と言われる状況にもっていくことが、すごく大切なんじゃないか。
▼最近気になるコンテンツ。僕は「サウナ」。
汗を流す価値。人に優しい世の中で、汗をかかなくなってきている。代謝をよくする。めぐりをよくする。それこそが何かを生み出す源泉なのではないか。汗をかいた量が、企画につながるかも?時代的に、圧倒的非効率が目立つという実感も。
▼「納得=安心+刺激」の方程式
白岩さんから型の紹介。「納得=安心+刺激」。例えばコカ・コーラ。好きな人(肯定)・嫌いな人(否定)・どっちでもいい人からの視点で考えてみる。どっちでもいい人の意見は「安心」になる。そこをベースに好きな人の意見「刺激」をうまく練りこむと「納得」の強度が増す。
(似ている「YESと3回言った後に、NOとは言えない」論)
▼コピーが上手くなるには2つしかない。
僕が師匠から教わった事。コピーが上手くなるには2つしかない。「素直になれ」「真面目に生きろ」。他者の視点を自分の中にいくつ持てるか。あの人ならどう考えるかを自分の中に持てるか。そのためには素直さが必要不可欠である。
そして真面目に生きること。今の世の中を自分なりに考えるかということ。例えば、集団的自衛権に対して何か思いを持てているか。もしくは何も考えてない自分に気づけているか。文章を書く、表現をすることは、「素直になる」そして「真面目に生きる」それに尽きる。
▼村上春樹さんの文章の書き方
村上春樹さんも似たようなことを言っている、と白岩さん。
▼「仮説」を応用する。その繰り返し。
最後に。白岩さんの根っこ(本質)を言葉にする姿勢に刺激を受ける。そこを探せるようになるときっとどんな仕事・企画・ビジネスにも活かせるんだろうなと。とにかく、むちゃくちゃ楽しくあっという間の90分でした。気になる事は自分なりの「仮説」を。そしてそれをどんどん応用する。実行する。その繰り返し。たくさん考えながら、書くしかない。
※2020年に追記※
今、読み返しても「なるほど!」と思う。忘れていたぶん新鮮だ。
白岩さんも書き続けている。僕も書き続けている。それがうれしい。
『コピーライターじゃなくても知っておきたい心をつかむ超言葉術』を書けたのも、こうして言葉との対話を続けてきたからだと思ってます。