人が環境に適応する動物なら、行きたい環境に飛び込めばいい。
ここ数年で人に教える場が飛躍的に増えた。
とても有難いことで、毎回相当な準備をして臨む。コピーを書くことは、言葉を企画すること。だから、コピーライターとして、言葉の見つけ方であったり、企画のつくり方であったりを話していく。なるべく体系立てて。明確に存在する「やり方」とともに。生まれもったセンスとか、親から受け継いだ才能とか、そんなの関係ないですよ、というのを強調しながら。
なぜならとても多いから。
講義後に「あの…」と声を掛けられる。
「僕にはコピーライターとか…ムリだと思うんです」とか「私には、そういうとくべつな文才とかなくて、ちょっと難しいかなって」そういう前提から入ってしまう人が多い。なんでだろう?と思う。「やればできる」派の自分としてはもどかしい。かく言う自分もかつてそうだったから一層もどかしい。
朱に交われば赤くなる、という言葉がある。
人は環境に適応する動物だと思う。良くも悪くも環境に染まっていく。中学3年から大学4年まで、アメリカンフットボールというスポーツをやっていた僕にとって、いわゆる「クリエーティブ」という世界とは本当に無縁で。映画や音楽が好きだなあ、というくらい。先輩たちも、商社や金融に行く人が多く、自分もそっち系に行くんだろうなと「なんとなく」思っていた。
「なんとなく」はかなり危ない。
というのは今の自分ならわかる。当時の自分が、「いちおう幅広く業界を見ておくか!」と視野を広げて本当に良かった。博報堂という広告会社の学生インターンに飛び込む。濃密な時間を過ごし、言葉やビジュアルを扱えるようになることで、物事の捉え方がこんなにも変わるのかと鮮烈な経験をする。課題フィードバックの時間に「君は、営業志望だよね、他の話をしよっか」とコピーライターの講師の方に切り出されたのは今では笑い話。
講演会という環境。
そこから、電通という会社に入社し、人事セクションに配属された僕は、とにかくいろんな研修や講演会に立会うことになる。名簿を管理し、椅子と机をセッティングし、後ろから研修を見守る。社内外のすごい人が繰り広げる、わくわくするトークの環境の隅っこにいた。「僕は何をやってるんだろか」と、もやもやしながらまた次の講演会のセッティングに向かう。「やってみたい…」という火種を感じながら。
無縁だと思ってた世界に縁を感じてしまったら飛び込めばいいのだ。飛び込み方はいろいろある。本でもいい、人に会いに行くでもいい、手っ取り早くスクールや養成講座的なものに通うのでもいい。週末になればイベントが山ほどある。こんなにも手を差し伸べられてる時代ってすごい。人が環境に適応する動物なら、行きたい環境に飛び込めばいい。
その後の僕は、コピー年鑑という広告の図鑑を読み漁り、養成講座に通いボコボコになり、社内のいくつもの研修に通い上げ、今に至る。人間に秘められた環境に適応する力は凄まじいと思うのだ。人につられて人は変わっていく。いくつもの環境に身を置く中で、飛び込む上で大切な3つのことにも気づく。
【新たな環境に飛び込む上で大切なこと】
・短期間で圧倒的な経験を積むこと。
・多くの人の企画個性に触れること。
・心の火が消えたらすぐに去ること。
まず、だらだらやっても仕方がない。短期間にぎゅっとやってみる。背伸びすると背は伸びる。そして、同じ課題に取り組む中で、顔の見えるあの人が、あんなやり方をしているすごいそうすれば良かったのかと刺激を受け、フィードバックし合い、自分では気づけない自分の「らしさ」を発見する。最後に、やる気が消えたら潔く去る。環境は選べる。そこだけじゃない。
だから冒頭に紹介した「ムリかも?」「難しいかも?」と言ってる人は、僕と会ってる時点で環境に飛び込んでる。だから後はやり切るだけだ。つべこべ言わずに、覚悟を決めて学びの環境に染まればいい。才能という言葉を言い訳にするな。とにかく染まれ。そして自分の色で染め返していけたらいい。
思い余って2015年に、自分自身で立ち上げた学びの場が「企画でメシを食っていく」という企画の学校です。半年、全12回。4年続けてきて気づくこともたくさん。そのことを伝えるイベントもやります。下北沢にて。
9/1(土)このイベントがまたひとつの環境になれたらと思う。阿部広太郎×くろやなぎてっぺい×ヤギワタル×折田拓哉 「企画でメシは食っていけそう?〜『企画でメシを食っていく2018』特別報告会」来れる人みんなで打上げもやります。
★大盛況で終了しました★ありがとうございました!
今、いわゆる「新たな環境=コミュニティー」が急増してるのって、みんなの「飛び込みたい欲」が急激に高まってるからなのだと思う。そのことはまた別の機会に書きたい。
足を伸ばそう。新しい環境に向かって。水が合わなければ次へ行けばいい。