自分のいちばんのお客さんは過去の自分だと思うから。
えらそうにしている大御所はさっさとどいてくれ。
気合だけは一丁前で、そんなことを思っていた。コピーライターとして働きはじめた、駆け出しの頃の話だ。
そして、その頃の自分と向き合う気持ちで学びの場をつくってる。
僕が好きでいつも聴いていて、そして、プロデュースを担当した映画「アイスと雨音」でも密に過ごした、アコギ ✕ ラップの二人組・MOROHAの「三文銭」という曲にこんなフレーズがある。
順番待ちにチャンスは来ない あぐらかく大御所はちゃっちゃと消えろ
みんなに向けて歌っていると思う曲よりも、自分に向けて歌っていると思える曲がいい曲なんだ、という話を聞いたことがある。
この「三文銭」はドンピシャだった。あの頃の自分の気持ちを、こんなにもわかってくれるなんて、そう思った。
2010年、24歳の頃。すこしでも力をつけたくて、コピーライター養成講座に通い、コテンパンに打ちのめされていた。そこでは毎回、課題の順位が発表される。どれだけ頑張っても、最終的に、真ん中くらいの順位で終わってしまった。講座後には打上げがある。流れで行ってはいたけれど、味のしないハイボールを飲みながら、悔しさでため息ばっかりついていた。
平日の夜や、土日さえも費やして、そしてあの頃は時に会社で朝を迎え、ある時はマンガ喫茶に行き…長い時間をかけているはずなのに、なのに、結果が出ない。
空回りをしている気がしてもどかしかった。著名な方が開いてる学びの場には行けるかぎり行ったように思う。
井の中の蛙が、井戸を出た時に感じる海の広さ。戸惑うことに素直になればいいのに、プライドは高いから手に負えない。はち切れそうな気持ちで、溺れないようにがんばってるやつがいるから、見つけてくれよ、たのむよ、と祈るような気持ちだった。
カチリと歯車が噛み合いはじめたのは、真っ直ぐになれてからだった。意味のない粗探しをやめて、嫉妬で目と耳をふさがずに、いいものはいいと認める。自分のことだけで、精一杯にならない。信じる人がいるなら、話を聞きにいく。ちゃんと影響を受けて、しなやかにしたたかに変えていく。
そして、目の前に人がいて、その人の力になりたいと思えたなら、その人になにができるかがすでに、生きた課題になる。そんな時に、学びの場で練習したことが、生きてくる。
迷いながら、戸惑いながら、ひたすら毎日進んできた経験が、今自分をここに連れてきている。
その席に、過去の自分がいないか探してしまう。連続講座「企画でメシを食っていく2019」と「言葉の企画2019」。自分の主宰する場で、前に居ながらそう思う。
ワークショップに、座学スタイルに、教える側にまわったら成長が止まる、なんて話をよく見聞きする。あれはたぶんウソだ。たしかに、一つのパッケージが完成していて、流しで話してる人がいるのなら終わってる。成長が止まってる。
教える、教わるの真剣勝負。時代の変化を感じながら、第一線を走りながら、なにかを伝えたい、そう思う人の放つ言葉からは刺激が生まれる。場にいる全員が熱を帯びる。その時間が好きで、5年もつづけてしまっている僕がいる。
過去の自分が、今の自分を見て、どうだ?
どいてくれと思うのか、この人から学びたいと思うのか。手を抜いてたらバレる。誰よりもシビアな目を自分が知っている。
「十年間毎日ずうっとやって、もしそれでモノにならなかったら、俺の首やるよ」
これは、思想家の吉本隆明さんの言葉。ほぼ日のサイトにある対話集から。
コピーライターをはじめて10年が経つ。10周年だ。振り返りたくなって、そしてその先を考えたくなってこのnoteを書きはじめた。
これから先10年のことを考えて、気が遠くもなる。けど、過去の自分がいるから、だいじょうぶだなと、書いていて思った。自分のいちばんのお客さんは過去の自分だと思うから。振り返って、いい報告をたくさんしたい。
「8月31日(土)夏祭りみたいですね」と言ってもらえてすこし笑ってしまった。1日ずっと、話しっぱなし。下北沢B&Bにて。特別報告会。10周年の今の僕の話(もちろんそれぞれ違う話をします)を聞いてもらえたらうれしいです。
※追記/大盛況で終了しました※
冒頭に紹介したMOROHAの「三文銭」の歌詞、そのつづきも好きだ。最後に紹介させてください。
あんたが来た道の長さや成して来た事を 「言葉の重み」だって言うんだったら 俺は行く道の長さや目標の高さを 「言葉の輝き」と呼んでやるから
言葉の輝きを放ちつづけたい。
どんなことも、おもしろがりながら。こんなもんじゃない、と思いながら。ここからだぞ、自分。
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