黒田総裁発言、切り取り報道がひどすぎる
黒田総裁、結局謝罪したんですね。
かなり対応が早かったです。
この手の感情を煽りにくる報道は、発言の一部を切り取って曲解するパターンが非常に多いのですよ。
マスコミ報道のみで脊髄反射するのは危険です。
僕は全文を確認してからコメントしようと思っていたので、すぐには取り上げませんでした。
日銀のサイトに発言全文の1次ソースがあったので確認してみましたよ。
結論としては、今回もマスコミによる悪意たっぷりの切り取り報道ですわ。
発言全文のPDFへのリンクは以下です。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220606a1.pdf
今回注目された発言は、P9-10です。
ぜひ全文をご覧いただきたいですが、一応該当部分の引用も載せときます。
黒田総裁が引用したサーベイにおける、アンケート集計結果の図表です。
日本は昨年8月に比べ、今年4月は「値上げされてもその店で買う」の回答が欧米並みになっています。
件のコメントの前後の文脈を含めた黒田総裁発言の主旨は、僕の理解では以下の通りに整理できます。
①東大教授の行ったアンケート調査によると、「値段が上がったら他店に移る」との回答が、昨年8月の調査より大きく減少。「値上げを受け容れ、その店でそのまま買う」との回答が、欧米のように半数以上を占めるようになっている。
②コロナ禍における行動制限下では家計において「強制貯蓄」が蓄積した。
③ ①②を踏まえると、日本経済全体では、家計の値上げ許容度の改善に繋がっている可能性がある。
④強制貯蓄の存在等により、日本の家計が値上げを受け容れている間に、良好なマクロ経済環境を出来るだけ維持し、これを来年度以降のベースアップを含めた賃金の本格上昇にいかに繋げていけるかが当面のポイントである。
今回の黒田総裁の発言は、東大教授の調査結果を参考とした仮説と、それを踏まえた今後の戦略を説明した、というのがその主旨です。
しかし多くのマスコミは、上記要約の③の部分しか報道しませんでした。(もしくは、③部分だけ非常に強調して報道した。)
この切り取り報道は異常です。
印象操作の意図があったといわれても仕方ありませんよ。
印象操作の意図が無かったとしたなら、マスコミ記者にはこのようなマクロ経済の内容とそれに対する専門家の解説を、正しく理解し報じる能力が無いということになります。
まぁ黒田総裁側にも、「日銀総裁」という立場で行うコミュニケーションとしてはやや不用意な物言いであった、くらいの落ち度はあるかもしれませんがね。
でも、「正しく報じてくれない」ことを前提としたコミュニケーションを常に要求されるのは、やはり理不尽でしょう。なんの罰ゲームだっていう。
いずれにせよ、マスコミには「ファクト」を報道する能力が欠如していることが改めて分かりましたわ。
日本全体の、統計の話をしている人に対して、「私は値上げを受け入れていない。」とか、「あなたはスーパーで買い物するんですか。」とか、、、
もう会話が成立しませんね。
「値上げを受け入れる」と答える人の割合が過半数まで上がったという現象の話をしているのに、「受け入れない」と答えた側の人の感情の話を持ち出して批判した気になっているんですから、科学的な思考は到底期待できませんわ。
マスコミがこの体たらくですから、ニュースの受け取り手も、十分注意して情報を取り扱う必要がありますよ。
ちなみに高橋洋一氏によれば、この黒田総裁の発言の本当の問題点は、「民間家計の強制貯蓄が需要を生み出すので政府による財政出動が不要」、というロジックにあるとのこと。
なるほど、、、そういう考え方はありませんでしたわ。
まだまだ勉強不足を思い知ります。。
最近はこうした各業界の専門家がこぞって情報発信してくれるのでありがたいですね。
ていうか高橋洋一氏のアウトプット量やばいんだけどどうなってんのw
いずれにせよ、このように感情を刺激するようなネタを目にしたときは、
まず「切り取り」を疑い、
⇒いったん意見・印象を持つことを保留し、
⇒1次ソースで発言全文・文脈を確認する。
という基本動作を徹底する必要があります。
情報の取り扱いには注意しましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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