【データで見るNBA】グレイディー・ディック(Gradey Dick)ってどんな選手?
はじめに
トロントラプターズの2年目選手、グレイディー・ディックの名前を聞いたことがあるでしょうか?
最近ラプターズファン以外からも「ディックってこんないい選手だったの!?」という話を耳にするようになりました。
(NBA YouTuberユニットのSTARTING 5IVEでも何度か話題に上がってましたね)
皆さんはグレイディー・ディックに対してどんなイメージを持っているでしょうか?
ピュアな3Pシューターでしょうか?
ドラフトで派手な衣装を着てたヤバイやつ?
下世話な写真を撮っちゃうお茶目ボーイ?
今回は、ディックがどんな選手なのか?
特に最近は”成長している”という文脈で話題に出ることが多いので、「どんな成長をしているのか?」という観点で紹介していきたいと思います。
ディックの基本情報
Gradey Dick
身長198cm体重91kgのSG
2023年ドラフト1巡目13位指名
カンザス大出身
2003年生まれの、現在21歳
ドラフト時の評価
外角シュート能力と多様な得点スキル。特に3ポイントシュート成功率が40.3%と高く、2ポイントシュートも約49%の確率で成功させている点が高く評価されていました。また、サイズと運動能力を活かし、シューティングガードからスモールフォワードまで柔軟に対応できる点が高く評価されていました。
去年のディックはどうだった?
ルーキーシーズンのグレイディー・ディックは、シーズンの前半と後半で大きく評価が変わった選手でした。
シーズン序盤はとにかくシュートが不調で、一度はGリーグ送りになり、特別メニューが組まれるなどしていました。
ただ、シーズン後半に持ち直し、さらにラプターズがOG・アヌノビーやパスカル・シアカムを放出して完全に再建モードに入ったこともあり、プレータイムを勝ち取っていきました。
去年もシーズンの中で成長が見られましたが、今年はそこからさらに成長しています。
とはいえ、チーム状況も先に述べた通り去年と今年ではいろいろと違いますので、今回は本人のスキルにフォーカスして成長度合いを見ていきたいと思います。
その中で、グレイディー・ディックという選手がどんな選手なのかも見えてくるはずです。
今年の成長
ショットエリアの拡大
今年のディックの活躍を見ていて特に感じるのは、得点バリエーションの増加です。
去年は、特に初めのころなど、スポットアップが主な得点パターンでした。
リム周りとコーナーか、右斜めの3Pラインに得点した位置が集中して、トランディションで頑張るかスポットアップすることが主な仕事であったことが分かります。
それが、今年のFGMヒートマップを見てみると
相変わらず若干右に寄ってはいますが、昨年と比べるとかなり満遍なくショートを決めていることが分かります。
「まだゲーム数が少ないんだし、たまたまシュートが入ったエリアが偏っただけじゃない?」というもっともな指摘にお答えするため、アテンプトでも見てみます。
コーナー付近でのアテンプトが減り、代わりにミドルレンジのアテンプトが増えていることが分かります。
これはヒートマップのイメージだけでなく、集計データでも比較してみます。
全体のシュートアテンプトのうちコーナー3の占める割合が、去年は22%あったのに対して今年は11%しかありません。
かなり役割が変わっていることが分かります。
では、役割が変わったのは分かりましたが、「成長した成長した」と騒がれているからには、その役割に見合った活躍ができているのでしょうか?
プレイタイプ別の成長
スポットアップ以外にも役割を求められているのであれば、プレイタイプ別の成績を見て、どこまでやれているのかを見てみましょう。
プレイタイプ別の期待値で見ると、そもそも去年はスポットアップはNBA.comの選手別の集計対象に乗るほどの成績を収めてませんでした。
それ以外も、去年は得点期待値がリーグの上位に入るようなものは無く、”そこそこ3Pの入るサイズのあるシューター”というだけでした。
それが、今年はスポットアップでは全体の82.8パーセンタイルに入るエリートな数字。
オフスクリーンでも平均以上の期待値を出しています。
トランディションとカッティングについては、去年よりも期待値が下がってしまっています。
カッティングが良いという評価も聞くので、これはちょっと意外な結果です。
とはいえ、プレイタイプ別の結果を見ると、どのプレイタイプでも試合当たりのポゼッション数は増えていて、かつ期待値も全体的に向上しているので、役割の増加に対してそれなりにオールマイティーに成果を出している、と言えそうです。
せっかくなので、さらに細かく見てみましょう。
シュート種類別の成長
まずシュート種類別にどんなシュートを打っているのかを見てみると
ジャンプショートが主体なのはシューターとして当然ですね。
ジャンプシュートの中身をもう少し細かく見てみましょう。
これは試合当たりのデータですが、ここでもアテンプトがどんなシュート種類でも増加しています。
アタックのパターンが増えています。
特に注目すべきはプルアップシュートの増加でしょう。
アテンプトも確率も大幅に向上しています。
ちなみにシーズン合計値で見ると、昨年が53アテンプトで今年がすでに44アテンプトしているので、その増加率がどの程度かはわかっていただけるでしょう
これは、キャッチ&シュートが主体だったところから、セルフクリエイトする機会が増えている、ということが言えそうです。
また、まだサンプル数は少ないですが、ドライブからのフローターシュートの割合もアテンプト数も増えており、これもセルフクリエイトの機会が増え、積極的にアタックしている中でスキルを磨いている証拠かと思います。
まとめ
ディックはドラフト前からシュート力があり、身長と運動能力を活かした幅広いプレーにも期待されていた選手でしたが、去年はその期待通りの活躍ができているとは言えない状況でした。
それが、今年は期待に近い幅広い活躍を見せてきています。
このまま再建中のラプターズで
そこまで役割を固定化されずに経験値を積むことができれは、”アグレッシブなシューター”ではなく”オールラウンドなスコアラー”として成長できる可能性もあるのではないかと思います。
今回はオフェンスについてまとめるだけで相当な長さになってしまったのですが、ディフェンスもサボらずハッスルできる魅力的な選手です。
ぜひ、ラプターズファンも、ラプターズファンでない人も、グレイディー・ディックに注目してみてください。
(2024/11/29時点では怪我で離脱中なので、早く良くなって復帰してくれることを願っています。)
では、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
また次の分析でお会いしましょう。
We The North!
この記事で参照しているスタッツは、すべてnba.comのstatsページを参照しています。
https://www.nba.com/stats/player/1641711