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大学生にインタビューされました / サラリーマンとバンドの狭間で②

こんにちは。気合を入れてダウンジャケットを買ったものの、着ると暑すぎてほとんど出番がない石橋です。東京の冬にダウンはオーバースペックなのか…。まだ5回くらいしか着てないぞ……冬が終わってしまう…。

さて先週の続きになります。近畿大学 総合社会学部の金井啓子ゼミの水野智博さんによるインタビュー記事です。第一回目はこちら。

初回は結成からのバンドの成長にフォーカスを当てていただきました。ここからはバンドを組むことが社会人生活においてどういう効能があるか…を中心に紐解いてもらいます。レッツラゴン!

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二つの世界


石橋さんは、バンド活動とアートディレクターのどちらが欠けてもバランスが悪くなると語る。会社員という顔と、ミュージシャンという二つの顔をもち、複数のコミュニティに属するということ。それは実務的な面でも、精神的な面でも様々なメリットをもたらしているという。例えば、石橋さんは会社で優先的に音楽系の仕事を任されたり、反対にバンドではCDジャケットのデザインを任される、といったシナジーが生まれている。
特に石橋さんの会社は「好きな人にやらせる」という文化があり、学生時代ラグビー部に所属していたということから、ラグビーW杯関連の仕事に携わったこともあるという。また、社会人になってから身に着けた「段取り力」は、バンド活動に特に活きているそうで、現在、レーベル担当者兼マネージャーのような方は一応いるが、練習スケジュールやレコーディングの進行管理は、全てメンバーで行っているという。タスクを洗い出し、スケジュールを決め、優先順位をつけるといったことがスムーズなバンド運営に繋がっている。
また、複数のコミュニティに属することは精神的な安定をもたらすともいう。会社での人間関係や、仕事に悩んでいる時、バンド活動に救われることもあったり、反対に週末にライブで大きなミスをしたとしても、翌日からは「全く別の世界=社会人としての世界」が広がっていて、びしっと仕事をする。関わる世界が増える分、自分への評価、自分の顔も増えていく。

バンドで得たもの、失ったもの

しかし、こうした生活はメリットばかりではないとも、石橋さんは語る。社会人としての時間に加えて、バンド活動が入ってくることで、単純に睡眠時間が削られていく。ある時、仕事の忙しい時期とレコーディングの予定が重なったときは、レコーディングを終えた朝、そのまま仕事に行ったこともあるという。休みがないので、友人とも疎遠になる。家族との時間も当然減っていく。toconomaには子供がいるメンバーもいるが、毎週末にバンド活動で父親が家にいないことは、子供にとって良いとは限らない。パートナーの負担が増えたり、親族を頼る回数も増えている。こうした生活を送ることで、得るものも多かった分、失ってきたものも多かったと、石橋さんは分析する。その生活を送る上で、周囲の人の理解を得られているのか、と質問すると、幸い、今は好意的に受け取ってくれていると返ってきた。「バンド頑張って」と会社の人に声をかけてもらうこともあるらしい。しかし、石橋さんはこうした理解を得られたのは、ある程度バンド活動で結果が出たからだ、とも考えている。
バンド活動には時間とお金がいる。もし、現在も結果が出ておらず、ただお金が出ていき、小さなライブハウスで無人のフロアに向かって演奏するだけ、といった状況ならばどうなのか。もしかしたら、家族から許されないかもしれないし、生きがいとして認めてもらえないかもしれない。そのあたりは、今となってはわからないという。あくまで社会人として会社で責任をしっかり果たした上で、バンド活動をしているからこそ、理解を得られているのかもしれない。

「楽しむ」ことを忘れない

上述の通り、石橋さんの生活は楽ではない。バンドの活動日以外も、平日の深夜に新曲のタイトルの打ち合わせをすることもある。自らの活動を「割と本気めの部活」という石橋さん。その活動の様子を見てきたとあるクリエーティブディレクターは「toconomaはやせ我慢のバンド」と言う。石橋さんは我慢している自覚はあまりないと語るが、その生活は他人から見るとそれなりにハードにみえるそうだ。そうした活動で、最も大切にしていることは「楽しむ」こと。ここでの「楽しむ」とは、その「やせ我慢」や「苦労」も含めてである。

「言ってしまえば、toconomaが無くても生活は成り立つんですけど、社会で生きていくうえで…。バンドやってると楽しいよねって気持ちは…忘れないようにしたいなって思ってますね。ほんとに大変な時は大変なんですけどね…それも人生の味わいと思って。」

 当然、お金を取ってショ-をしている以上、しっかりとしたステージを見せたいという責任感がある。それと仕事を両立しようとなってくると、時間、体力的に当然苦しいときもある。しかし、そうした局面でも責任ばかり感じるのではなく、「なるべく遊んでやろう」という気持ちを忘れない。その結果、現在までバンドをやめようと思ったことは一度もないと語る。

「どうなんでしょうね。でも、ほんとに成り行きバンドだから。その場その場で右往左往です。もちろん曲はね、自分たちがいい!って思えるものをコンスタントに作り続けれたらと思うんですけど。」

  楽しい限りは続ける。楽しくなくなったらやめる。そして、各々の人生において、家族の時間や親の介護などを優先することで「バンドが一番じゃなくなる時」が来ても仕方がないと石橋さんは考えている。もともと、バンドの成り立ちとして、音楽で食べていくつもりで集まったわけでもなく、メンバーの目線やモチベーションも低いところから始まった。そして、今現在もバンドで天下を取りたいという欲があるわけでもない。今のところ、メンバー間のモチベーションのギャップもあまりないという。彼らの周りには、楽しんで本気で作った作品たちを聴いた人たちが自然に集まってくる。

別にメジャー行かなくてもいいなって(笑)

2014年。2ndアルバム『TENT』収録曲『relive』がヒットした。ちょうどその頃、メジャーレーベルからの「お誘い」があったという。しかし、彼らはそれを断る。

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いしばなし

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インストバンドtoconomaのギター石橋がお届けするよもやま話。バンドにまつわること、デザインのこと、コラムなど。SNSでは書ききれない…

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