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やすたにありさ
2019年7月27日 19:54
昨年の夏に書いた掌編小説を加筆修正のうえ、再掲致します。主人公の2人はそれぞれにハンデやコンプレックスを持っていますが、彼らなりにコミュニケーションを駆使して、優しくも満たされた生活を送ってゆく物語です。「ちょっとの工夫で困難は回避できる」という言葉は私の小説のベースとなる考えであり、私自身が生きる上でのモットーでもあります。もし、いまあなたの目の前に救いようのない障害があったのなら、形
喜多ばぐじ 🔥(トッシー)
2019年7月1日 12:55
今作は、幸野つみさんが考えたお題小説企画に参加しています。お題は「ノート」で3人の方が各々作品を作りました。ぜひ読み比べてお楽しみください!<prologue>木立の間を、初夏の風が吹き抜けた。夕暮れの公園で過ごす放課後は、2人にとって特別な時間だった。「すまん。あれ、無くした」「え?どうして!?あれは大事なものなのに」「あんなものが無くてもどうってことねえよ」「そんなこ
山際響
2019年1月22日 23:25
首都圏近郊のニュータウンにその小さな大学はあった。大学の脇には東京へと続く線路と国道がそれぞれ一本だけ走っている。 十二月のある夕暮れ。五十歳になる大学教授の私は大学の図書館から一冊の本を借りた。それは私が生まれた年、つまり五十年前に書かれた本で、ポルトガルの若者がヒッチハイクをしながら国中を旅する、という内容だった。本のタイトルは、フーガと言った。それは、ポルトガル語で『逃避』を意味する。